
今日の午後は都内某所でスーパー耐久レースに関する会議の日。
4時間以上にわたってシリーズ活性化に向けて活発な意見交換が行なわれ、大変有意義な会議となった印象です。
その中で、モータースポーツにおける環境問題への対応という話題についての意見交換も行なわれました。
今やモータースポーツは環境問題に無頓着でいられる状況にはなく、欧州では既にディーゼルエンジンやバイオマスフューエルといった燃料の使用や、レーシングマシンへの触媒装着も当たり前になってきました。
それに対して日本は遅れている部分が多く、ようやく「
十勝24時間レース」においてバイオマスフューエルを使ったガソリンやディーゼルエンジンのレーシングカーが走行したり、ハイブリッドカーが実戦投入されて好成績をおさめたりしています。
他に同様のケースは国内では「
もてぎEnjoy耐久レース」に見られる程度です。
期せずしてこの日、
日産自動車が次のようなプレスリリースを発表しました。
●日産自動車、バイオ燃料普及を目指す「とかちE10実証プロジェクト」に参加
大型SUV「
ムラーノ」をベースとして、日本で初めてE10対応車として国土交通大臣の認定を受けた車両を用いて、
北海道・
帯広市の「
財団法人十勝圏振興機構」が
環境省から受託して進めている「とかちE10実証プロジェクト」に参加するというものです。
近年話題になっているバイオ燃料。既に先進地であるブラジルを筆頭に、北米や欧州はもちろん、アジア各国でも本格導入に向けての取り組みや法律などの整備が進んでいます。
こうした動きに対して穀物市場の高騰といった問題点も見えてきてはいますが、その件については別の機会に考えることにして、バイオ燃料そのものについて考察してみたいと思います。
バイオ燃料はガソリン代替と軽油代替に大別されますが、ガソリン代替燃料についてはふたつの方式が注目されています。
ガソリンに対してバイオエタノールをどう混合するかという点によるのですが、ひとつは「直接混合方式」と呼ばれるものです。
これはその名の通り、ガソリンに対して農作物や建築廃材などに由来するバイオエタノールを混ぜるもの。現状は3%までが日本では認められていますが、
日産自動車が発表したE10とは10%の混合率としたもので、スウェーデンやポーランドといった欧州圏のみならず、中国、タイなどアジアでも実用化や検証実験が進められています。
3%のE3や5%のE5については、インドネシアやフィリピン、インドで同様に実用化に向けた取り組みが行なわれています。
この方式がもっとも浸透しているのはブラジル。
より混合比の高いE20~E25が全国に普及している上、E100すなわち100%エタノールという燃料でも走る自動車を日本の自動車メーカーなどが販売開始しており、急速に普及が進んでいます。
対して「ETBE方式」と呼ばれるのが、エタノールとイソブデンによって造られる"エチルターシャルブチルエーテル"をガソリンに混合する方式。
ドイツ、フランス、スペインなどが主流で、日本でも既に首都圏など一部のガソリンスタンドで販売がスタートしています。
ここで厄介なのは、果たしてどちらの方式がベストなのかということ。
双方の特徴を見ると、直接混合方式はガソリンとエタノールを混ぜるだけという単純なものなので、手間やコスト、生産施設といった面での優位性が考えられます。また生産効率的にも量産に向いていると言えるでしょう。
ただし、末端の販売拠点となるガソリンスタンド施設においては水が混入しないように施設面の対策を施す必要があると言われています。
ETBE方式は現在全国にある既存のガソリンスタンドに何の改修を行なわなくても販売出来るというメリットがあります。
しかし、一度ETBEという化学物質を精製する必要がある為、大量生産には相当の新規設備が必要であり、生産性が高いとは言えない面があるでしょう。
またある実験では負荷に応じてホルムアルデヒドやアクロレインといった毒性物質が増加するという結果も出されており、気がかりなところです。
いずれにしても、この件は国家のエネルギー政策として将来を見据えた取り組みが必要。
ガソリン価格が高騰している昨今はどうしても販売価格はどちらが安いのか、といった点に注目されがちですが、インフラ整備や将来的な供給体制の確立といった課題をきちんとクリアしていける方式を選択する必要が急務であるのが現状です。
ところが、どうにもおかしな雲行きが見え隠れしています。
環境省などは直接混合方式を有力視しているようですが、この方式に対して
石油連盟が猛反対しているのです。
その理由は色々あるようですが、どうにも既得権益の保護といった理由も見え隠れしています。
さらに官庁と業界団体の対立構図のみならず、
環境省に
農林水産省、
経済産業省といった官庁同士の主導権・利権争いも危惧されるところ。
幸いに今回の「とかちE10実証プロジェクト」は三省庁の合同で進んでいるようで、一層の前進に期待したいところ。
こうなるとこの先、直接混合方式による混合比の向上が実現普及することによるガソリンの販売減を恐れた石油業界が、政治家を巻き込んだ利権保護に走ることも危惧されてきます。
互いの方式について中立的に徹底した実験や研究を重ね、早急にエネルギー政策として方針を固めての普及推進を図ることが求められます。
なお余談ですが石油業界といえば、こんなニュースもありました。
●ENEOS「TOYOTA Team LeMans(ルマン)」へのスポンサード決定!!
業界最大手の
新日本石油(ENEOS)が
SUPER GTを戦うチームにフルカラースポンサーをするという記事。
過去、石油会社がレースのスポンサードとしていた実績はありますが、近年は途絶えていたので久しぶりの復活という感じです。
モータースポーツに関係する者としては喜ぶべきニュースなのでしょうが・・・、昨今のガソリン販売価格高騰を鑑みると、なんとも釈然としない気分にもなるものです。
Posted at 2008/02/08 09:52:56 | |
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