
相も変わらず国会では揮発油税の暫定税率について与野党が攻防を繰りひろげています。
遂には全国各地の自治体で首長が暫定税率の維持を声高に叫び始め、中には半強制と受け止められるであろう維持賛成の署名を職員にさせるところも出てきたようです。
対して野党側はわざわざ与党で道路族と言われる議員の地元にある山間部の道路を視察してのパフォーマンスを展開。
いずれも暫定税率制度の恒久化という政治が続けてきた矛盾を反省するでなく、道路整備という国土開発維持の将来像を議論するでなく、来るべき選挙に向けての人気取り合戦に終始しているという印象で、なんとも馬鹿馬鹿しくなってしまいます。
今回、このブログでは道路について「作るか作らないか」という視点ではない角度から見てみたいと思います。
そもそも道路とは何のために作り、維持されるのでしょう。
町と町、人と人を結ぶネットワークは、市町村という単位から始まり、県単位、地方単位、そして最終的には国家全体としてのものであるわけで、ネットワークが充実かつ細かく存在していることは国家として大きな意義のあることです。
いくらインターネットが発達して情報伝達が速くなっても、人や物は"ドラえもん"の「どこでもドア」を使うように瞬時に移動することは出来ません。
道路整備によって地方と都市の現実的かつ時間的な"距離"が縮まることは、双方に大きなメリットとデメリットをもたらします。
文化交流や経済交流による活性化というメリット。具体的には地方への企業誘致促進や、地域の発展均衡化、生活の利便性向上など。
対して"ストロー効果"といわれる、地方の人口減少加速や地元経済の衰退などもデメリットとして生じる可能性はあります。
しかし、デメリットを減らしてメリットを如何に最大限享受できるかは地方や地域にとってひとつの"腕の見せ所"。
逆に道路が無ければ、何の変化もなく時間だけが過ぎているということになり兼ねません。
こうしたメリット・デメリットを踏まえた上で、現実的には国も地方も財政状況が非常に厳しいわけですから、効率的かつ最大限に効果を発揮するような道路建設、また絶対的に生活上必要とされる道路がない地域の基盤整備を優先して洗い出し、地域利権などを除外した優先順位を明確にしての政策遂行が求められます。
与党と官僚は、この先10年間で実に道路特定財源を59兆円使う「道路中期計画」を打ち出していますが、既に国会の論戦でこの計画の根拠については綻びも見え始めています。
以前のブログにも記したように、私自身が全国を車で走ってきている感想としては、全国にはまだ道路を必要とする地域が少なからずあるという印象を持っています。
一方で無駄な道路建設が続けられている地域も、これまた多く目にしてきています。
道路建設の大きな理由として与党や官僚は「救急体制の確保」を挙げています。道路整備が遅れている地域は救急体制に影響があるので不公平である、と。
それは確かに事実だと思います。私が実際に走り、見てきた地域にも、急病や事故などで救急車を呼んでも、道路整備が進んでいないために来るまでに相当の時間を要すると思われるようなところが多々ありました。
しかし。
道路だけを作ったとして、そこを走る救急車や乗り込む救急救命士、そして収容する病院は果たして充分に確保されているのでしょうか。
救急・消防は各市町村や自治体の広域連合(消防組合など)を基本単位としています。そして運営予算は原則的に各自治体の負担。車両導入にあたっては一定の基準を満たせば国からの補助を受けられますが、救急車や消防車は高価であるために更新すらままならないという地域が多数存在しています。
財政再建団体となった
夕張市では長年使ってきた救急車の更新が出来ず、出動中にトラブルで動けなくなるという事態も発生。今では
札幌市から訓練用に使っていた車両の無償貸与を受けて急場を凌いでいるという状態です。
特に救急車は救急救命士制度発足に伴って高規格救急車がスタンダードなものになりつつありますが、一時はその価格が余りにも高騰してしまいました。
今ではその反省から、機能を確保した上でできる限りのコストダウンを図り、新規導入や更新をしやすいようにメーカーや関係官庁などが対策を進めています。
結果、なんとか救急車と救急救命士を現状の全国平均レベルに出来たとしても、今度は地域医療の過疎化や医師不足によって受け入れてくれる病院が見つからないという深刻な事態が全国各地で発生しています。
いくら道路が整備されても救急車すら充分な配備を出来ない地域。
道路が整備されて救急車も配備できたものの、地域医療が崩壊してしまった地域。
後者の場合「道路が出来て都市部とつながったお蔭で救急医療体制を維持出来るでしょう」なんてことを能天気な国会議員は言うかもしれませんが・・・。
皆さんがお住まいの地域、道路は足りていますか?そして、そこを走るべき救急車の数や、走って向かうべき病院・医師は充分にあるのでしょうか?
サイレンを鳴らしてやってきた救急車が被救助者を車内に収容してもなかなか発進しなかったり、何度も同じ場所を行き来していたり、しまいには路肩に停止してしまったり。
その時、車内では一体何が起こっていると思われますか・・・。
Posted at 2008/02/08 17:56:29 | |
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