
昨年くらいから、全国の各警察本部が「夜間走行ではライトは上向きが基本」ということを強くドライバーに訴求するようになっています。
全国の半数近い警察本部が公に運動を展開しているようで、「夜間は上向き(ハイビーム)が基本で、状況に応じて減光(ロービームへの切り換え)などをしなければならない」という道路交通法第52条の条文を引き合いに出していたりします。
該当条文が最終改正を受けたタイミングは確認出来ていませんが、現在の道路交通法が出来たのは1960(昭和35)年と、今から半世紀近くも前のことです。
当時の通産省が国民車構想を企画し、スバル360やトヨタパブリカなどが世に出てきた時代。自動車が大衆に普及を始めた当時の法律であるということです。
もちろん自動車の運転や交通体系の秩序については大きく変わることはありませんから法律そのものに異議を申し立てるつもりはありません。
ただ、日進月歩で技術革新が続く自動車の世界、既に法規が時代に取り残されてしまっている部分も無きにしも非ずではないかと思います。
今回のヘッドライトについても少し考えてみました。
実際のところ、都市部では常にロービームで走るのが当たり前ですし、地方では暗い郊外の道ではハイビームで走り、対向車が来たらロービームに切り換えるというスタイルは全国共通のものであると思います。
では今から20年くらい前まで遡ってみて、今回のように全国的に問題視されるほど夜間の交通事故要因として"ライト下向きのままの車"が存在していたのでしょうか?
個人的な印象ですが、今のような状況になった最大の原因は「ライトの切り替えをしないドライバーが増えている」ことにあると思います。
では、何故"ハイ/ロー切り替え"をしないドライバーが増えたのか?ほぼ全ての車がステアリングコラムから生えるレバー操作で切り替えるのは昔も今も同じです。
そんなにレバー操作を面倒に思う人が増えたのか?いえいえ、そんなことはないでしょう。
私の個人的な考えを記してみます。
それは「ハイビームに切り替える必要性がないと勘違いするドライバーが増えてしまった」というものであり、もっと言えば「ディスチャージヘッドライトとプロジェクターヘッドライトが普及した」ことに大きな原因があると思っています。
初めてディスチャージヘッドライトを装着した車を運転したときのことを思い出してみてください。その明るさに驚き、普通のハロゲンヘッドライト車に戻ったときに「なんと暗いのだろうか!」と思いませんでしたか?
現在では大衆車クラスにも普及が進むディスチャージヘッドライト。それは基本的にロービームのみに備わり、ハイビーム側は旧来のハロゲンヘッドライトが装着されています。
そのためハイビームを点灯しても、以前のロー/ハイともにハロゲンライトだった車に比べると明るさが大幅に増えたように感じにくくなっているのではないでしょうか。
それこそ周囲に全く光源がないような山奥で、かつ月明かりも出ていなければ誰もがおのずからハイビームを使用するでしょうが、ちょっと郊外の道などでは多少の外的な光がありますから、ディスチャージのロービームだけで充分に明るいと勘違いしてしまうドライバーが増えているように思うのです。
さらにディスチャージと組み合わせられることが多いプロジェクターライトの普及が夜間事故の増加に意外な要因となっていると考えます。
掲載した写真をご覧ください。これは
日産フーガでディスチャージ式のロービームを点灯している状態ですが、光の上端に明確な"切れ目"が存在しており、ディスチャージの光は上方向に全く漏れていないことがわかります。
乗用車では日産テラノやシルビア、1990年頃から普及が始まったプロジェクターヘッドライト。
そのメリットは上方向への"光の漏れ"をカットできることで、対向車への眩惑を防止することが出来るというものです。
私自身、最初に購入した車であるS13型・日産シルビアに装着していましたが、確かにトンネルなどで見ると壁面にあたっている光の領域は明確に境界線があり、上方向には全く光があたっていないような状態でした。
感覚的にも光量の多さを感じさせる「ディスチャージヘッドライト」と、上方向への光がシャットアウトされている「プロジェクターヘッドライト」。
ディスチャージ式は眩しさも感じる明るさゆえ、プロジェクター式との組み合わせは推奨されるべきものでしょう。
しかし、これによって夜間ロービームでの郊外走行などでは、歩いている人や自転車の発見が遅くなる可能性があります。
特に自転車の後部や衣服などに装着する反射材などは、その取り付け高さにとっては効果が相当に落ちてしまう可能性もあります。
ひとつの対策として、徒歩や自転車で夜間移動する人は、膝の高さくらいに反射材を装着するようにしてはどうでしょうか。
そしてもっとも大切な対策は、ドライバーが必要に応じてヘッドライトのロー/ハイを積極的に切り替えることにほかなりません。
そのためにも法律論に縛られたかのようなお役所的な発想でのキャンペーンを警察は展開するのではなく、ドライバーも誰もが納得できるようなアピールを実施すべきです。
「夜間のヘッドライトは上向きが基本です!」では、現実に車を運転している誰もが"ちょっとおかしいのでは?"と思うでしょう。
今回の件は、「夜間は必要に応じてヘッドライトの下向き/上向きを切り替えましょう!」と強く言えば良いだけのことだったように思います。
Posted at 2008/03/03 03:22:09 | |
トラックバック(0) |
自動車全般 | 日記