■インテリア
ベーシックなコンパクトカーゆえに豪華さとは無縁ですが、センスよくまとめられたインテリア。
インパネにはボディカラーのパネルをあしらいますが、ステアリングやエアコン操作パネルはボディカラー問わず白色が基本。
ということで白いボディの場合は明るいインテリアが生まれることになります。
運転席正面に据えられた一眼メーターは同軸上で速度とエンジン回転を表示、燃料残量や水温はデジタルバーグラフ表示となっています。
そして中央部にはギアポジションや時計、燃費情報などが表示されるマルチインフォメーションディスプレイを装備。
実際には少々ゴチャゴチャした感じで見やすさとしては及第点以下(特に速度計と回転計)なのですが、二代目フィアット500の雰囲気を上手く再現したインテリアの居心地は決して悪くありません。
インパネ中央は上段にオーディオ、中段にステアリングアシストモード切替(1,200ccエンジン車)/ハザード/フォグランプの各スイッチ、そして下段にエアコン操作パネルというベーシックな配置。
ただしラテンの車らしいのはパワーウィンドゥスイッチで、セレクターレバー上の左右に備わり、ドアにはスイッチが装着されません。
運転席側はワンタッチ機能も有して実用的、ここに配することでスイッチの個数を減らせるなどのメリットもあり、イタリアやフランス車ではこうしたレイアウトが珍しくありません。
■ポケッテリア
イタリア車は大小問わず、室内の収納については無頓着な傾向が強いかもしれません。
例えば筆者の経験ではマセラティあたりですと、立派なダンパー付きのセンターコンソールボックスが備わっていたので開いてみると、タバコ一箱がやっとというレベルの収納容量だった、などということもありました。
FIAT 500の運転席まわりにおける収納スペースも必要最小限という印象。
カップホルダーは4つがセンターコンソールに備わりますが、それ以外では助手席前のオープンタイプのトレーと、センターコンソール前端の収納トレーが主なスペースとなります。あとは左右ドアポケットとシートバックポケットという感じでしょうか。
もちろん実際にはこの他にも多くの収納が用意されています。助手席前のトレー内側には下開きのグローブボックスが隠されていますが、日本の一般的な車検証キットを収納できるサイズではありません。
写真はインパネ中央の運転席側に備わるコンソールボックス。位置的には利便性が高いのですが、薄めで奥の深いボックスゆえに入れられるものが限られますし、下手に小さな物を入れると取り出すのに苦労しそうです。
このように辛口評価になってしまいますが、ポケッテリアについては日本車の"お家芸"とも言える領域で、イタリアの場合は細部に及ぶ"おもてなし"よりもインテリアの雰囲気を守ることに重きを置いたと見るべきでしょう。
車の中には色々なものが置いてありますが、本当に必要なものだけを抽出すると、FIAT 500の収納スペースで充分におさまる範囲という方が多いのかもしれません。
■ラゲッジスペース
全長の短いFIAT 500ですが、ラゲッジスペースも考え方によっては充分と思える容量を確保しています。
リアシートを使用した状態では奥行き540mm程度、傾斜したリアゲートの影響で決して大量の荷物を積載することは出来ません。しかしちょっとした買い物程度は充分に呑み込みますし、小さなボディゆえにリアゲートからリアシートへのアクセスが良いので、リアシートが"物置き場"として重宝することになるでしょう。
2人でちょっとした長旅に出るとしたら、リアシートを畳めばなかなか侮りがたい空間が広がります。フロアには少々大きな段差は出来てしまいますが、スーツケースなどの旅行アイテムも問題なく積載することが出来るでしょう。
■サマリー
3日間で約1000kmをともにしたFIAT 500。本来は得意としなさそうな高速道路&ワインディング路主体の長距離移動では、かえってFIAT 500の真の力を見せつけられる結果となりました。
小さい排気量のエンジンながらも侮れない動力性能。デュアロジックも貢献するキビキビした走りを楽しめるキャラクター。小ささを感じさせない存在感とロングツーリングでの快適性は、シートやインテリアの出来ばえが良いことも実証してくれました。
都市部では小さい車体が軽快なシティトランスポーターとして機能。デュアロジックの自動変速モードがややマナーに欠ける点と、短いホイールベースゆえに首都高速道路などで段差が連続するケースでは乗り心地に難点もありましたが、これらをカバーして余りある魅力にあふれた一台であると結論づけられます。
もっとも実用車ですから自動車雑誌などにあるように「楽しいから、買い!」などという無責任なことを言うつもりは毛頭ありません。
私自身、デュアロジックの信頼性については確証を得ている訳ではないので、まずはこのスタイルが気に入った上で、比較的近く(最低100km圏内、出来れば50km圏内)に正規販売会社が存在していれば購入をお薦めしたいと思います。
ところで2008年7月末現在で日本には1200ccエンジンの「Lounge」(225万円)、1400ccエンジンの「Pop」(222万円)と「Lounge」(250万円)という3つのバリエーションが設定されています(価格は消費税含)。
購入アドバイスとしては私は1400ccエンジン車に乗ったことがないので少々無責任になるかもしれませんが、1200ccエンジンで充分であろうと予想します。
その上で首都高速やバイパスなど合流加速を必要としたり、勾配のきつい道を頻繁に走る機会があるという使用環境であれば1400ccエンジンの方がベターかと思います。
この点については、出来ればディーラーで両方のエンジンを試乗出来るような環境を整えてくれることに期待します。
次に1400ccエンジンには「Lounge」と「Pop」が設定されていますが、装備の差としてはベーシックな「Pop」でも充分満足出来ると思います。ただし、ガラスルーフ(サンシェード付)に魅力を感じるのであれば文句無しで「Lounge」に決まり、です。
ちなみに今回の燃費を報告すると、約1000kmを走って17.5km/Liter(満タン法)。高速道路を法定速度レベルで巡航、あとはワインディングロードで高回転を多用したりというシチュエーションの割りには2名乗車+荷物積載+エアコン使用という条件下であるにも関わらず良い数値をマークしたと思います。
最後に今回のテストカーについて。実は今回の車両はレンタカーなのですが、現行の日本正規導入仕様に存在しない内容となっています。
まず1200cc車は本来ガラスルーフを備える「Lounge SS」のみが設定されているのですが、今回のテストカーはガラスルーフを備えていません。またホイールはスチール+ホイールキャップの組み合わせ。
逆に「マニュアルエアコン」であるはずの空調は「フルオートエアコン」であるなど、なんとも不思議な装備内容なのです。
これはもしかすると日本の現地法人が本国に対してオーダーする際にミスをした結果なのかもしれませんし、逆に本国側でミスをしたのかもしれません。こうしたことはイタリア車に限らず、輸入車では実際にはそんなに珍しいことではありません。
しかし個人的にはこの仕様がなかなか気に入っています。
ディーラー純正オプションのカーナビゲーションは少々性能的に劣りますが、小さい筐体で見やすいモニターなので室内の雰囲気を壊すようなことがありません。
そして何といっても重量増につながるガラスルーフを備えないので、今回の個体は車両重量が980kgと1tを切っているのですから!
今回のドライブを経て、元々ラテン系の車が好きな私としては、とても購入意欲をそそられています。
もっとも、もう少し様子を見てみようとは思っていますが、フーガにしてもRX-8にしても、テストドライブした数年後には購入しているんですよね・・・。
【>> FIAT 500 (フィアット・グループ・オートモビルズ・ジャパン)】