
年の瀬を迎え、聞こえてくるニュースは自動車産業界に関する暗い話題ばかり。
日本のメーカーは相次ぐ減産の発表、それに伴う派遣契約の解除。もっとも派遣労働者というのは"調整弁"的な位置づけなのですから、急速な業績悪化に伴って派遣契約を解除することに、メーカーには大きな罪はないと個人的には思っています。
モータースポーツ界ではF1やWRCからの相次ぐ日本メーカーの撤退。業績が悪化し先の見通しも不透明な今日、経営判断としては間違っていないと思います。
ただし、株主の顔色を伺っての急場凌ぎに過ぎない撤退だったとしたら、将来的にブランドイメージや技術面で何らかのしっぺ返しを食らうメーカーも出てくるかもしれません。
北米からは"ビッグスリー"の救済策について。万一どこか一社でも倒産となればアメリカ経済に与える打撃は小さくないでしょう。
しかし個人的には80年代後半あたりからここ20年、ビッグスリー各社が何をしてきたのかを振り返れば今の苦境も当たり前のような気がします。彼らは欧州勢や日本勢などと提携を推し進めこそしましたが、本体は技術革新をなし遂げたわけでも無く。アメリカが好景気に浮かれる中で、旧態然とした大排気量のSUVを生産し続けてきたのですから。
こうした状況は各社の"マーケティング能力"を試すことになっているという感じもします。
自動車はあくまでも耐久消費財であり、輸送機器商品です。極一部の趣味性が強いメーカーを除いては、高いマーケティング能力が求められる世界です。
しかし近年、日本の自動車メーカーは特にセダンボディの車種についてマーケティングの主眼を日本市場に置いていないとしか思えない状況にあります。
ゆえに日本市場が急速に縮小して、車が売れない、若者が車離れを起こしていると騒ぎだしたのがここ最近の話し、という感じでしょうか。
日本軽視の最たるものとして、自動車のサイズがあります。
今や全幅1,700mmを超える3ナンバー車は当たり前、かえって都市部では5ナンバーの自家用車を見かける機会の方が少ないように思えるほどです。
同じ銘柄でもモデルチェンジの度に繰り返される肥大化。メーカーは「側突安全性の向上」「居住性の向上」「デザインの進化」などを声高に叫んでいますが、軽自動車などはモデルチェンジを繰り返しても規定寸法内で安全基準をクリアしています。
居住性にしても、果たして10年、20年で日本人の体格はそんなに大柄になったのでしょうか?
道路や駐車場といったインフラは変わらないのに、車だけがどんどん大きくなっていく。今や日本車でも全幅1,800mm以上というものは決して珍しくありません。
これが特定ユーザー層向けの上級車種だけならまだしも、ごく一般的なブランドネームを名乗る車までもが、一昔前の上級車種以上のサイズを有するに至っています。
しかしユーザーもメーカーの言いなりではありません。使いにくいものは買いませんし、見栄を張るために買い換えるような愚行もしないのです。
去る10月、
BMWの
3シリーズがマイナーチェンジを受けました。
この変更で最大のトピックは、それまで1815mmだった全幅が1800mmに狭められたことです。これはドアハンドルに日本仕様専用のものを装着したことによるもので、M3を除く右ハンドル車で対応しているとのこと。
更に既存ユーザー向けにアクセサリーキットも販売されるそうですが、こちらについては車検証上の全幅が変更になるかと思いますが記載事項変更という手続きも装着時に含まれるのか気になるところ。
いずれにしても現行
3シリーズデビュー当初から言われていた過剰に広い車幅は、遂に日本のユーザーの反発をドイツ本社も受け止めざるを得なかったという結果になったようです。
今回の件、
BMWの日本法人は良くやったと思います。日本ユーザーの声をきちんと本国に届け、改良を承諾させたのですから。
しかし、そもそもユーザーを軽視したサイズを設定したことに起因する問題、次期3シリーズがどのようなスペックの持ち主になるのか今から注目していきたい存在です。
さて話は戻って日本メーカーの面々。
モデルチェンジ毎の寸法と排気量、そして最高出力の拡大。もう「大きさ」「速さ」「見栄えの偉さ」を自動車で競う時代は終わったと思います。
真の使いやすさを今一度しっかり見つめなおしたセダン、その登場を期待して止みません。
●関連エントリ : 「コンパクトカー」 2007年1月19日付
Posted at 2008/12/19 01:16:20 | |
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