
路面電車の小旅行で湯の川地区を訪れ、ちょっとした散策を楽しんでから再び電車に揺られて函館駅前まで戻ってきました。
駅周辺は、駅舎そのものが装いを新たにしていることに加え、周辺にビジネスホテルが多数新築されたことから、この十年で大きく様変わりしているという印象です。
そして駅の脇には観光名所として名高い朝市があります。
しかし個人的には余りお薦めする気になりません。この日も昼過ぎの時間帯でしたが、脇を通りすぎようとすると店員が歩道に出て"客引き"まがいのことをしていました。
全国各地でこのような"観光客主体の市場"を見てきましたが、余り印象の良かったところはありません。それは食事をするにしても同様で、地元密着型の店舗よりは割高、かつ通り一辺倒の観光客向けメニューというところが多いようです。
ということで今回はあえて朝市には立ち寄らない行程を組んでいるのです。
■青函連絡船が今も静かに時を過ごす

函館駅前電停から徒歩5分ほど、駅の脇を抜けて海沿いに出ると姿を見せるのが「
函館市青函連絡船記念館 摩周丸」。
これまでにも函館山や八幡坂からの眺望において存在感を見せていた船は、往年の青函連絡船。
1908(明治41)年から1988(昭和63)年まで、80年の長きに渡って函館と青森の間に就航、北海道と本州間の物流はもちろん文化・経済的交流に大きな貢献を果たしてきました。
1988年の青函トンネル開業に伴い役割を終えた連絡船ですが、なにより青函航路に就航する他の航路と大きく違っていたのは"鉄道連絡船"であり、かつ"鉄道車輛輸送船"という存在だったことです。
ご承知の通り、青函連絡船を運航していたのは旧・国鉄(日本国有鉄道)であり、後にはJR北海道。
鉄道を敷設できない海上区間を結ぶ航路は、函館側と青森側それぞれの優等列車などと接続を考慮したダイヤが組まれており、連絡船を経由することで北海道から本州までスムーズな移動が出来るようにされていました。
また青函連絡船には鉄道車輛も積み込まれており、北海道と本州を結ぶ鉄道での貨物輸送にとって無くてはならない存在でした。
このように北海道と本州を結ぶ"大動脈"だった青函連絡船ですが、80年の年月には悲しい歴史も含まれています。
中でも1954(昭和29)年の洞爺丸台風では5隻が沈没、1,430人もの犠牲者を出してしまっています。
「
函館市青函連絡船記念館 摩周丸」は航路廃止まで現役船として活躍した摩周丸の船体を係留、内部を記念館としてこうした青函連絡船の歴史や仕組みなどを紹介しています。
パネルや模型展示はなかなか興味を惹くものばかり。現役当時の船室には椅子席もそのままに残されており、自由に座ることが出来ます。
多くの展示物の中で、個人的には"飾り毛布"に感心しました。これは船内の寝台室の清掃や準備を担当していたボーイの方々が編み出したもので、季節に応じて花などに見立てて毛布を折り上げたものです。
これについては、ぜひ皆さんも実際に足を運ばれてみて、その妙技から生まれた"作品"を鑑賞していただきたいと思います。

この摩周丸では操舵室や通信室が一般公開されています。
ともにそれぞれ専門の説明員の方がいらっしゃいますので、現役当時の様子や苦労話などのエピソードをお聞きすることも出来ます。
もちろん操舵室の各装置について教えていただいたり、運航の仕組みも分かりやすく解説していただくことができます。
通信室ではモールス信号について解説していただけ、実際に説明員の方とモールス信号での交信を体験することが出来ます。
部屋いっぱいに備えられている通信機材が圧巻ですが、「最新技術で造られた通信設備を使えば、この部屋いっぱいの設備は机の上に載せることが出来る程度にコンパクトになります」という言葉が、技術の進歩を実感させてくれました。
【函館市青函連絡船記念館 摩周丸】 北海道函館市若松町12番地先
●摩周丸 主要諸元 全長 132メートル 幅 17.9メートル 大きさ 5,374総トン(函館市による公称値)
●営業内容 夏期開館時間 8:30 ~ 18:00 (4月から10月) 冬期開館時間 9:00 ~ 17:00 (11月から3月) ※最終入場は閉館の1時間前、特別開館時間営業日あり
休館日 12月31日 (この他に臨時休館あり)
入館料 大人 : 500円 小・中・高校生 : 250円
●駐車場 函館市営桟橋駐車場 (200円/1時間) 函館駅西駐車場 (100円/30分) |
■瀟洒な洋館に近代史を訪ねる

摩周丸を見学した後は、再び路面電車で元町エリアに移動。
次なる目的地は函館山の麓に建つ瀟洒な洋館「
旧函館区公会堂」です。
1910(明治43)年に建てられたここは、ブルーグレーの外壁とイエローの柱やバルコニーが美しい荘厳かつ洒落た洋館。
1907(明治40)年の大火よって町会所が失われ、代わって計画されたのが公会堂の建設。当初は資金難で計画が難航したものの、米穀商などで財を成した相馬哲平氏(初代)が5万円を寄付、これを基にして無事に完成しました。
当時の5万円という金額ですが、当時タバコのゴールデンバットが1箱5銭。現在は1箱140円ですから、単純に2800倍。
これをひとつの基準とすると5万×2800で、現在の価値にして1億4千万円程度という計算が成り立ちます。
「
旧函館区公会堂」は歴史を感じさせる外観も見応えがありますが、折角ですから公開されている内部も見学してみましょう。
二階建ての内部はやはり格調と気品あふれるもので、文明開化を経て入ってきた西洋の建築様式美を日本の職人が巧みに自らの手で昇華させた様を感じることが出来ます。
1911(明治44)年には当時は皇太子だった大正天皇が函館を訪れた際の宿舎として使われ、その際に設けられた専用のトイレと風呂や、滞在の拠点となった部屋なども公開されています。

また大広間では現在もコンサートなど様々な催しが行われていますが、歴史を紐解いてみると先に紹介した"洞爺丸台風事故"の海難審判もここで行われたそうです。
写真がその大広間ですが、舞踏会など社交の場としても函館の発展を支える場所であったようです。
一緒に訪れたウチの社員嬢も、そんな往年の華やかさを感じ取ったのか、ダンスのポージングで記念撮影。
なおここでは優雅なドレスの貸衣装サービスも用意されています。
レンタルは1,000円/20分間(入館料別途)。ヘアメイクサービスも用意されるとのことなので、気品あふれる記念撮影を楽しむことも出来るでしょう。
【旧函館区公会堂】 北海道函館市元町11-13 電話番号 : 0138-22-1001
夏期公開時間 9:00 ~ 19:00 (4月から10月) 冬期公開時間 9:00 ~ 17:00 (11月から3月)
休館日 12月31日 (ほか臨時休館あり)
入館料 大人 300円 学生・生徒・児童 150円 ※他施設との共通入館券もあり。
最寄り電停 市電 末広町 駐車場 無し (基坂沿いに有料駐車場あり) |
■正統英国調にティータイム

公会堂見学を終えたら、基坂を下って次なる目的地である「
函館市旧イギリス領事館」へ。
1859(安政6)年から1934(昭和9)年までイギリス領事が着任していた函館、長崎や神戸などと同じく盛んな交易が行われてきました。
ゆえにこれら港町と同様に現在も異国情緒あふれる街並みや香りが残っているわけですが、その象徴的な建物のひとつが旧領事館です。
ここは最近まで改修工事が行われていましたが、3月1日にリニューアルオープン。
箱館開港にまつわる資料展示や、領事執務室など当時の様子を今に伝える空間となっています。
さらに庭園には17種の薔薇があり、噴水と併せて英国の格調を感じさせる美しいものとなっています。
そして領事館の建物内にはグッズショップとティールームが併設されています。

ティールームはアンティーク調の落ち着いた雰囲気で、大きな窓からが薔薇に囲まれた庭園を望むことも出来るそうです(もっとも2月の訪問でしたから薔薇はありませんでしたが・・・)。
ということでここで一息ティータイム。昼食代わりにパウンドケーキやサンドイッチもセットになった"アフタヌーンティーセット(1,050円)"などがお薦めです。
紅茶は多くの種類が用意されており、ポットサービスで供されますので、3杯程度を時間とともに引き立っていく香りとともに楽しめます。
なおこの旧領事館に隣接する場所に民間の有料駐車場がありますので、車の場合はまずこの駐車場に車を停めてから、旧公会堂、そして領事館と巡ってみるのが良いでしょう。
【函館市旧イギリス領事館】 北海道函館市元町33-14 電話番号 : 0138-27-8159
夏期公開時間 9:00 ~ 19:00 (4月から10月) 冬期公開時間 9:00 ~ 17:00 (11月から3月)
休館日 12月31日、1月1日
入館料 大人 300円 学生・生徒・児童 150円 ※他施設との共通入館券もあり。
最寄り電停 市電 末広町 駐車場 無し (基坂沿いに有料駐車場あり) |
■歴史ある倉庫で北海道の名産品をゲット!

旧領事館でのアフタヌーンティーを終えたら、ベイエリアでショッピングを楽しんでみてはいかがでしょうか。
明治時代に建てられた赤レンガ造りの倉庫群は函館の発展と繁栄の象徴。
現在では「
金森赤レンガ倉庫」や「
BAY HAKODATE」として、ショッピングモールなり観光客を集めるスポットになっています。
ここには美術館やホール、グッズや土産物を扱う物販店、そしてビアホールをはじめとした飲食店などが多く入居しており、函館はもとより有名な北海道土産を購入することが出来ます。
もちろんショッピングのほかに、元々が倉庫という煉瓦造りの建物自体も充分にみる価値のあるもの。
建物を一周すると、あちこちで"絵になる風景"を見つけられますので、記念撮影にも絶好のロケーションであることは言うまでもないでしょう。
【金森赤レンガ倉庫/BAY HAKODATE】 北海道函館市末広町14-12 電話番号 : 0138-23-0350
●金森美術館 営業時間 10:00 ~ 18:00 休館日 毎週火曜日(祝祭日の場合は営業) 入館料 一般・大学生 400円、中・高校生 300円、小学生 200円 ※公式ウェブサイトより入館優待券のプリントアウト可。 |
■二日目の夕食は、北海道を代表する肉料理で

そろそろ日も暮れてきて夕食の時間が近づいてきました。
昨夜は函館ならではの新鮮な海の幸でしたが、今日は朝食でも海鮮をいただいたので、夕食にはお肉をチョイスすることに。
北海道でお肉と言えば・・・、やはりジンギスカンで決まりでしょう。
ということで、ホテルや金森倉庫群から徒歩圏内にある「
松尾ジンギスカン五稜郭末広店」へ。
滝川市が発祥の「
松尾ジンギスカン」は、今や北海道を代表するジンギスカンのブランド。
函館のお店はフランチャイズのようですが、臭みのない柔らかなラム肉を秘伝のタレに漬けたあの美味しさは不変です。
ちなみにこのお店、店名に"五稜郭"と入っていますが立地的には五稜郭から遠く離れたベイエリア。元々は五稜郭にあったお店が、最近になって現在の場所に移転したためにこのような店名となっているようです。
ここでは90分で2,100円の"食べ放題コース"を注文。
専用の鍋で野菜を煮て、肉を焼く。"松尾"ならではの美味しいラムは食が進みますので、女性でも食べ放題コースを選んでおいて損はないでしょう。
【松尾ジンギスカン五稜郭末広店】 北海道函館市末広町15-10 電話番号 : 0138-24-0397
営業時間 11:00 ~ 22:00 (L.O. 21:30) 定休日 無休
駐車場 店舗前に3台分 |
●ルートマップ|青函連絡船 摩周丸 → 旧函館区公会堂 → 旧イギリス領事館 → 金森赤レンガ倉庫 → 松尾ジンギスカン
■ライトアップされた函館の"街夜景"を撮る!
夕食を済ませてあとはホテルに帰ってノンビリするだけ・・・。
でも、この夜が天気に恵まれていたならば、そのままホテルに帰ってしまうのは少々もったいないような気がします。
函館は"夜景"が美しい街。山からの眺めはもとより、特に市内の元町やベイエリアにはライトアップされた魅力的な建物が数多く存在しています。
そんな建物を巡っての夜景見物や写真撮影というのは、天気に恵まれたのであればぜひ楽しんでいただきたいところ。

今回まずご紹介するのは「ハリストス正教会」。
ここも函館観光では定番のスポットですが、今回はここまでご紹介していませんでした。もちろん日中に訪れる時間があれば、ぜひ立ち寄っていただきたい場所のひとつです。
夜間もライトアップされた教会は清廉かつ荘厳な印象で、被写体としても魅力的な存在です。
夜景撮影で訪れる際は、三脚とワイドレンズをお忘れ無く。

続いては「
函館市地域交流まちづくりセンター」。
この建物は1923(大正12)年に創建された、丸井今井呉服店函館支店だったものを再利用しています。
経済的に発展する街には、当然小売業者も進出してくるわけで、ここもやはり函館の発展と繁栄を象徴している建物のひとつです。
さらにここには東北以北で日本最古の"手動式エレベーター"も残されているのだとか。
写真撮影にあたっては電車通りに面しているために架空線が少々うるさい感じもしますが、これもまた函館らしい風景のひとつ。
巧く通過する路面電車もフレームに入れられれば、旅情あふれる写真になるかと思います。

ここからは先にご紹介した「金森赤レンガ倉庫」周辺での撮影をご紹介。
倉庫群を撮影するにあたって最も美しいカットを手に入れられる場所として知られているのが、海沿いの道にかかる「七財橋」という小さな橋。
石造りの小さなアーチ橋は、それ自体が趣あるものですが、この橋の上から俯瞰気味に眺める赤レンガ倉庫群は格別に美しいものです。

さらに橋の上からは、倉庫群の間を流れる水路を望めます。
この水面に灯が映ってゆらめく様も、またなかなか美しい光景。
そこで撮影に勤しんだわけですが、この橋での撮影は周囲の状況を充分に確認して行うことが必要です。
なぜなら短く狭い橋なのですが、車の往来は決して少なくありません。
道幅が狭い上に、アーチ状の橋なので車の側からは見通しも良くないため、不用意に立ち止まって撮影していると思わぬ事故に遭う危険性があります。
撮影や見学にあたっては、こうした事情から充分にご注意の上、お子さん連れの場合などは決して目を離すことの無いように、また撮影などが終わったら速やかにその場を離れるようにした方が良いでしょう。

赤レンガ倉庫群も、昼間とはまた違った表情を見せてくれます。
明治から大正にかけての浪漫を感じさせる街並みは、夜景もまた見応えのあるものですから是非カメラにおさめてみたいところ。
しかし場所的には海沿いですから、冷たい風も容赦無く吹きつけてきます。
今回訪れたのは2月、寒さも一年で最も厳しい季節。
風と寒さに悪戦苦闘しながらの撮影となりましたが、気温が低い屋外の撮影では電池の消耗がとても早いので、予備をポケットに忍ばせておいた方が良いでしょう。
また撮影後にはカメラの結露対策も必要。屋内に入ってからはカメラを放置せず、結露が確認されたらマメに拭き取ったり、乾燥剤やエアコンを活用するなどのメンテナンスが必要です。
■一日の締めくくりはカクテルと楽しいおしゃべりで
路面電車での小旅行に始まり、函館の観光スポットをあちこち巡ってきた二日目。
夕食以降は夜景見物を楽しみましたが、屋外での写真撮影などで身体も冷えきってしまいました。
そこで「
ホテル&スパリゾート ラビスタ函館ベイ」に帰ってからどうするか。
天然温泉大浴場で身体を暖めるのも良いですが、ここのお風呂は夜通し入浴できますので、そんなに急ぐ必要もありません。
もちろん時間の余裕があればお風呂で芯から暖まることをお薦めしますが、もうひとつの暖まり方として「バー・ラウンジ」を訪れることを提案します。

12階にある「シェリーズバー」は、ここからも夜景を楽しめる素晴らしいロケーション。宿泊客や観光客のみならず、地元の方々も多く訪れるという人気のスポットです。
こぢんまりとした店内にはカウンターとボックス席。
夜景を楽しむのであればボックス席ですが、ここはあえてカウンター席がお薦め。
バーラウンジはお酒を味わうことに加えて、バーテンダーさんとの会話も楽しみのひとつと言えるからです。
オリジナルカクテルや40種類が用意されているスコッチウィスキーで身体を暖め、バーテンダーさんとの会話で心も暖まります。
お二人のバーテンダーさんは、若い方は生粋の"函館っ子"。地元ならではの隠れたスポット情報などもお聞き出来ますから、ぜひ函館の夜を美味しいお酒とともに過ごしていただきたいと思います。
●ルートマップ|松尾ジンギスカン → まちづくりセンター → 七財橋 → 金森赤レンガ倉庫 → ホテルラビスタ函館ベイ