
ここ最近の日本における自動車市場は、政府が景気対策として実施した「エコカー減税」の効果もあって、一時期のドン底から脱して回復基調にあるようです。
もっとも現状の好セールスは"一時的な特需"という見方もできるわけで、需要が集中したことの揺り返しがやってくることも充分にあり得ますが。
さて、エコカーの主役ともいえるのがハイブリッドカー。
そしてその上をいくクリーンな車としてはEV(電気自動車)が注目を集めています。
既にこの夏から、決まった場所を走行する法人や官公庁などの"フリートユーザー"向けに市販をはじめている
三菱自動車の「i-MiEV(アイミーブ)」は、来年春からいよいよ個人ユーザー向けの販売も開始されます。
●「i‐MiEV」の2010年度分購入希望台数が、1ケ月で900台に
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三菱自動車 EV-Life ブログ 2009年9月10日
459万9千円という販売価格、政府の補助金を利用すうことができるとはいえ、実質的な購入価格は300万円を下らない「i-MiEV」。
間違いなく"高価格車"に属しますが、環境意識の高まりもあるのでしょう、中・小の事業所や富裕層などからも人気を集めているようです。
新潟からは、こんな話題も届いています。
●原発の街に電気自動車タクシー誕生 新潟・柏崎、国内初
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asahi.com(朝日新聞) 2009年7月24日 16時14分
"原発の街に"という見出しの一文は報道として何の意味があるのか分かりませんが、取り敢えずEVタクシーも現実のものになったということです。
さらに一般ユーザーがEVをドライブできる機会としては、次のようなサービスも登場しました。
●ニッポンレンタカー・電気自動車「スバル プラグイン ステラ」のレンタルサービス開始 (pdfファイル)
●マツダレンタカー 神奈川の「EVシェアリング事業」に参画
ともに土曜・日曜と祝日に、3時間の限定ではありますが、一般ユーザーがEVをレンタルして自らドライブする機会を得ることができるようになりました。
料金も決して高額ではありませんので、この機会にEVのフィーリングを体験してみようという方も多いのではないかと思います。
このように、身近さをこれまで以上に感じるようになってきたEV。
しかし、一般ユーザーへの販売を開始するということは、これまでの"特別な乗り物"から、ガソリンエンジン車と同等の"普通の乗り物"という立ち位置になるための性能を有する必要があります。
それは、不特定多数が自由に移動することが出来るという"自動車"が本来持っている特徴によるものもありますし、廃車に至るまでの過程で中古車市場に流通することや、第二、第三のオーナーの手に渡る可能性もあるからです。
そこで一点、私がとても気になるのが「航続性能」。
EVでは満充電から何km走ることが出来るのかという「航続性能」こそ普及に向けての大きな鍵のひとつであると言われてきました。
昨今はインターネットや雑誌の記事で、いわゆる"自動車評論家"や"自動車ジャーナリスト"を名乗るお歴々がEV試乗レポートを多く発表していますが、この"航続距離"について明快な内容の記事をほとんど見たことがありません。
せいぜい、メーカー発表のスペックを引用したり、内燃機関を用いている車と同様に発表値の20%程度落ちの数値を実用航続距離として推測している程度ではないでしょうか。
私が気になるのは、そんな上っ面の性能ではなく、一般市販化されるにあたって非常に重要な「寒冷地における夜間走行時の航続距離」です。
一般市販するということは、当然日本全国どこのユーザーも購入出来る可能性があり、かつ購入したユーザーが日本全国どこへでも走って行ったりEVを持って行けるということです。
つまり、北海道や東北などの寒冷地に在住の方がEVユーザーになることも考えられますし、購入後にこれら地域に転居することとなってEVを持っていく人がいても不思議ではありません。
そこで寒冷地の航続距離についてですが、冬期の夜間、降雪というシチュエーションを想定します。
当然ヘッドライトを点灯、ワイパーを作動させています。ラジオなどのオーディオも一般ユーザーであれば利用するでしょう。
そしてなにより、寒い時期ですからヒーターが必須です。これは乗員を暖めることに加えて、窓の凍結や結露防止という安全面の効果もあります。
さて、こうして走っているEVの航続距離はどのくらいなのでしょうか?
実はEVにとって"ヒーター"はひとつの壁ともいえる装備で、内燃機関が発する熱を利用しているガソリン車やディーゼル車などとは異なり、いわゆる"電気ストーブ"のような暖房装置が必要とされるのです。温水方式ヒーターにしても、温水を造る為の熱源は電気となるでしょう。
その消費電力量は決して小さくありません。もちろん走行に使うための電力も暖房用に使う電力も、同じ電池から供給されることになります。
もし予想よりも遥かに短い航続性能しかなかったとしたら、最悪は寒空の下で暖房も効かない"タダの箱"にクルマがなってしまう可能性もあり、場合によっては乗員の生命にかかわる問題にもなりかねません。
もちろん私は"EV否定派"ではありません。
しかし一般市販をするという状況になった今、何か"お祭り騒ぎ"のような記事しか掲載していない自動車メディアの不甲斐なさが嘆かわしく思えてならないだけです。
Posted at 2009/09/14 20:06:01 | |
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