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2009年11月24日 イイね!

守られるべき"生活の足"

守られるべき"生活の足"ここ数日の政治ニュースでは、民主党を中心とした現在の政権による「事業仕分け」の話題が多く伝えられています。
これまで霞が関の各省庁が行なってきた事業について、より国民的な観点から無駄を排除しようという動きはとても必要なことで、その動向には国民的な注目が集まっています。

しかし個人的には、迅速な決定も悪いとは思いませんが、やや拙速な印象も受けています。
自民党中心の政権だった頃には小泉元首相の政権運営を「劇場型」と表現するケースが多々ありましたが、現在の政権も国民受けを狙った劇場型であると言えるのではないでしょうか。
それもどちらかと言えば旧来から日本人が好む時代劇的な要素が強いように思います。お役人を全て"悪代官"というキャスティングにして、今回の場合は"天下の首相"を中心とした面々が悪事や無駄遣いを追求するというシナリオで事が運んでいるような感じ。いわゆる勧善懲悪のスタイルですが、最初から"役人=悪代官"という前提で物事を進めているような印象を受けてしまうのです。

また、国家の将来像が明確に伝わってこない感じも強く受けています。

例えば交通インフラの問題。
民主党では公約のひとつとして高速道路の無料化を訴え、経済効果やCO2排出量削減効果までを謳っていましたが、ここに来てどうもその主張が微妙な変化を見せているようです。

そしてもう一つ、今日のニュースで気になったことが。

●【事業仕分け】地方に配慮、離島航路補助は見直さず
MSN産経ニュース(産経新聞)  2009年11月24日  21時18分

見出しとされた離島航路補助の維持は、離島住民の生活の足を守るという点で評価されるべきでしょう。
ところが記事を読み進んでいくと、"地方バス路線の維持を目的とする「バス運行対策費補助(概算要求74億円)」については「見直しが必要」と判定された"とあります。

仕分けの理由としてはバスの車両購入費補助までは必要が無いと思われるので、この部分を削減するということのようです。

しかし、果たしてそれで良いのでしょうか。

2009年9月17日付のエントリでも記しましたが、地方では路線バスの慢性的な赤字によってバス事業者の経営が厳しさを増しています。国はもちろん、都道府県や市町村の補助金で維持されている路線は非常に多いのですが、それでも過疎化や利用者の減少、燃料費など運行コストの高騰などによって、バス事業者の経営は"火の車"というところも少なくありません。

東京のような大都市部ではバス利用者の数も桁違いに多いのですが、地方では空気を運んでいるに等しい路線バスも珍しくありません。しかしこれは無駄と切って捨てるわけには行かず、特に自家用車を運転することが困難な高齢者や、移動手段が限られる子供・学生などにとって貴重な生活の足なのです。

これから地方での過疎化・高齢化が進むに連れて、もっとも生活に密着した公共交通機関である路線バスの存在は重要さを増していくでしょう。通勤通学は言うに及ばず、通院や買い物、ちょっとした所用でも、高齢者にとっては"残された最後の足"が路線バスになっていくと思われるのです。

しかしながら前述のように厳しい経営状態の中では、車両の更新もままなりません。事実、地方の事業者では都市部で使われた路線バスの"中古車"を購入して運行し、経費を抑えているところも少なくないのです。

もちろん多少古い車体でもバスとしての機能は果たしてくれます。ですが、当然新しい技術で作られたバスの方が安全性や環境性能には優れますし、バリアフリーの観点からもしっかり対応された車が多いのです。

国土交通省が定めている「バス運行対策費補助」によると、車両購入費国庫補助金の対象車両は、ワンステップ型(スロープまたはリフト付き)/ノンステップ型(スロープまたはリフト付き)となっています。ワンステップとは乗降口から客室までの間に1段の段差がある車両、ノンステップとは乗降口と客室の床面が面一の車両。スロープまたはリフトとは車椅子乗降装置のことで、すなわちバリアフリー化された車両が補助金の対象ということです。

公共交通についてはバリアフリー化を押し進める法的整備も既に行なわれています。これに合わせて各バス事業者も対応車両の導入を進めていますが、平成20年度末の時点で全国の乗合バス総数59,973台に対してバリアフリー対応型車両の普及率は、ノンステップを含めた低床型が41.7%、リフト付は僅かに1.3%(国土交通省資料)。
この数字だけを見ると低床型の普及率は悪くないように思えますが、事業者間で導入数には大きな差があります。平成21年3月末時点の国土交通省資料によると最も導入率が高いのは尼崎市交通局で実に100%。以下、小田急バス、西東京バス、東京都交通局、京王電鉄バスと首都圏の事業者が続き、ここまでが導入率80%以上です。さらにその下を見ても、導入率50%以上の事業者は関東・中部・関西の大都市圏で営業している事業者のみという状況です。

同じく国土交通省の資料にある都道府県別の普及率を見ると、地域格差が如実に分かります。東京都・神奈川県・埼玉県はバリアフリー対応型路線バスの普及率が70%以上。トップは神奈川県の75.82%です。60%以上は千葉県・愛知県・大阪府・京都府。50%以上が兵庫県で、やはりここまで全てが大都市圏を抱える地域です。

逆に普及率のワーストは沖縄県の2.34%。福島県と鹿児島県がともに7.59%、岩手県が9.36%と、この4県が10%を切っています。
要するに大都市圏を抱える9つの都府県のみが普及率50%以上で、それ以外の38道県は路線バスの半数以下がバリアフリー対応ではありません。

事業者別の数字を見ても地方では導入台数0というところも珍しくなく、地方の大規模事業者でも10%以下というところも少なくありません。
例えば1,000台以上のバスを保有している大規模事業者で比較してみましょう。1,456台を有する東京都交通局は85.44%、1,922台を有する神奈川中央交通では72,53%、1,029台を有する名古屋市交通局では69.10%という導入率ですが、1,176台を有する北海道中央バスでは29.42%に過ぎません。2,003台を有する最大の事業者である九州の西日本鉄道でさえ36.84%に留まっています。


こうした状況を現政権はどのように捕らえ、10年後、20年後の国家としての交通インフラをどのように確立していくつもりなのでしょうか。
モータリゼーションの発達に伴い自家用車の所有率が高まり、特に地方では1家に1台どころか、1人に1台というところも珍しくありません。18歳を過ぎて運転免許を取れるようになると、車が無しでは通勤も出来ず、買い物にも行けないという地域が日本の多くを占めています。
しかしこれから確実に高齢化社会は進み、高齢ドライバーによる交通事故の増加が深刻な社会問題化していくでしょう。また、年齢的な問題を含め車を運転することが出来なくなる人が増えたとき、果たして生活の足としての路線バスは残っているのでしょうか。

これは決して"限界集落"と呼ばれるような過疎地だけの問題ではありません。地域の中核都市レベルでも、確実に路線バスの縮小が大きな問題としてクローズアップされていくはずです。
一方で高速道路の無料化などは収益率の高い都市間バスの乗客減につながり、バス事業者の経営はますます厳しくなることも予想されます。

地方の交通インフラは地方の責任で構築すべきという"地方主権論"もあるかもしれませんが、このままでは国の政策が地方の交通体系を崩壊させてしまいかねないと危惧しています。

※写真はイメージです。
 
Posted at 2009/11/28 04:10:48 | コメント(2) | トラックバック(0) | 自動車全般 | 日記

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