
いきなり霊柩車の写真が表示されて、驚かれたという方もいらっしゃるかと思います。もし不快な思いをされた方がいらっしゃいましたら、まずはお詫びいたします。
霊柩車については
2008年2月20日付のエントリで、都市部の葬祭場などで"宮形霊柩車"の乗り入れを拒否する動きが加速しているという話題をご紹介しました。
一口に霊柩車と言ってもいくつかの種類があり、写真のように豪華な"お宮"を架装したもっとも一般的に想像されるであろうものを"宮型霊柩車"といいます。これには装飾や素材によって細かな分類があるほか、名古屋や金沢、関西など地域によって伝統的な特色ある車両も存在しています。
一方、近年になって増えているのが"洋型霊柩車"。華美な装飾はなく、一見すると大型のステーションワゴン風。ただしリアクォーターウィンドゥ部にガラス窓はなく、代わって"ランド棒"と呼ばれるS字もしくは直線的な金属の装飾バーが備えつけられています。
このほかにはマイクロバス型やバン型なども、地方を中心に使われています。
さて、近年は前述のように近所住民との関係から葬祭場への乗り入れが難しくなっている宮型霊柩車ですが、さらにここに来て法規的な問題も出てきました。
●国土交通省、乗用車外装基準―タクシーと霊柩車は適用を猶予
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自動車が既に国際的な工業製品となっている中、各国で異なる法規を統一化しようという動きが加速しています。背景には1993年にEU(欧州連合)が発足したことなどがあるかと思いますが、輸出産業の中心である自動車業界にとっては主要市場の法規や安全基準が統一化されれば、仕向け地ごとの差異を無くすことが出来るのでコストダウンや省力化、ひいては省資源化などにもつながるのです。
日本も独自性の強い法規や安全基準が多々ありましたが、こうした国際化の波によって廃止されたり変更されたというものも多いです。例えば100km/hで鳴るスピードアラーム(速度警報装置)や、パーキングランプ(駐車灯)の装備義務が廃止されました。
こうした統一化はECE基準と言われる規格をベースとしており、最近は歩行者保護規制が車の開発において重要視されています。
例えばノーズ先端が低い車の場合、歩行者との衝突時に先端が自動的にポップアップするボンネットフードを装備して衝撃の緩和を図るような工夫がされるようになりました。
そしてもうひとつ、根本的な形状を見直すことで歩行者保護を図ろうということになったのです。具体的には「ECE R26 外部突起要件対応」という基準であり、日本の保安基準などもこれに対応することになりました。
2001年6月の時点で保安基準などの改正はされていたのですが、2009年1月1日以降の生産車に対しては適用がスタートしています。
自動車メーカーはこの改正にあわせて、アンテナやミラー、灯火類、カメラなど細部に渡って基準をクリアできる緩いRを持った突起にするよう改めています。また、往年の高級車では定番装備だった"ボンネットマスコット"のように、適合が難しいものについては廃止を進めています。
こうしたことを踏まえて最初にご紹介した霊柩車の記事に戻ります。
そう、宮型霊柩車は"お宮"の部分に多数の突起があるため、新しい保安基準をクリアできないのです。さらにタクシーの一部も屋根に装着している"行灯"と呼ばれる表示装置の形状によっては保安基準に適合しない事態が発生してしまうのです。
ところがこれらを変更するのは容易なことではありません。
特に霊柩車の場合は"お宮"は職人の手作りゆえに造り直すにも時間やコストが想像以上に必要となります。事実、多くの霊柩車では新車に入れ替える場合でも車台のみを入れ替えて"お宮"は載せ換え対応で何十年も使い続けているケースも珍しくありません。
そこで霊柩車とタクシーについては2016年度まで適用を猶予することとなったようです。
現実問題として、果たして霊柩車の事故率がどの程度なのかというデータは持ち合わせていませんが、余り事例として耳にしたことはありません。
とは言っても最終的には適合させることになるでしょうが、そうなると宮型霊柩車の運用を止めざるを得なくなる事業者も出てくるような気がします。個人的には霊柩車については文化的な側面も有していると思っていますので、何らかの基準緩和策などを講じても良いのではないかと思っていますが・・・。
Posted at 2010/03/08 13:53:15 | |
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