
今回のエントリは消防について。
皆さんがお住まいの地域にも消防組織がありますよね。消防は各自治体が組織化しており、地方ではいくつかの自治体が協同で消防組合を組織している場合もあります。
こうした自治体の消防には地方公務員である消防吏員が従事していますが、同時に民間による組織として消防団があります。こちらは地域住民による自発的ボランティア組織であり、日頃から訓練を重ねている市民が緊急の際には消防活動に従事するというものです。
これら消防組織において、消火・救助などの活動で中心的存在となるのが消防車両。「ポンプ車」や「はしご車」などが一般に広く知られるところですが、これらは基本的に各組織毎の予算で調達されています。
つまり市の消防本部であれば、その市の予算で購入・運用されているわけです。消防車両はほぼハンドメイドの特殊車両ゆえに決して安価ではなく、最新の高性能はしご付きポンプ車であれば億の単位になります。
一定の基準を満たす車両については国からの補助金も出されますが、それでも地方の財政状況が芳しくない今日では、消防の予算についても潤沢にあるというところは限られているでしょう。
昨今は「税金の無駄を正す」というのが"流行り"のようになっていますが、消防車両についても気になる話を聞いたことがあります。
ある消防本部でポンプ車を更新した時のこと。地元のニュースとして調達価格を含めて報じられたところ、市民から「新車に入れ替えるのは税金の無駄」という苦情が寄せられたそうです。またエアコンやディスチャージヘッドライトを装備した消防車に対して「そんな贅沢装備は無駄」というクレームもあったそうです。
このように背景や現場を知らずして一方的に無駄と断じるのは政府の"事業仕分け"でも見られた光景ですが、少なくとも自らが生活している地元の消防に関する現状くらいは把握しておく必要があるのではないでしょうか。
●消防団員の減少と高齢化 -「女性」「機能別」など導入 増員への道模索-
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YOMIURI ONLINE 中部発 (読売新聞) 2007年2月16日
今から3年ほど前に掲載された少々古いニュース記事ですが、消防団員の人手不足と高齢化の進行は中部地方に限った話ではなく、全国各地で深刻化しています。
日本はこれから世界でも類を見ない超高齢化社会に突入していこうとしている訳ですが、こうした社会資本・インフラの維持に従事する人材の確保は数年後に大きな社会問題となっていることでしょう。
このような中で消防に期待されるものは年々拡大しています。
阪神淡路大震災以降、震災対応は重要視されています。広域的な連携も組織化されつつあり、どこかで大規模な震災が発生した場合には周辺自治体のみならず全国各地の消防から援助隊が出動する仕組みが整えられています。
これは逆に言えば昔は自分の町だけを管轄していた消防が、全国に移動する可能性を持つようになったということ。消防車で数百キロを走り被災地を往復することもあるでしょうし、被災地では消防車が消防士にとって唯一の活動拠点となるわけです。
果たしてエアコンの無い車で、真夏に数百キロを走る気になりますでしょうか?
市内の火災でも燃え盛る炎と格闘した消防士が、真夏の熱気で蒸した消防車で帰路につかなければならないものなのでしょうか?
昼夜を問わず緊急走行の機会がある消防車は、夜間走行の安全性が高まるディスチャージヘッドライトを装備すると贅沢なのでしょうか?
広域的な災害対策では直接の消火・救助活動にあたる車両のほかに、支援車両の存在も重要視されてきています。
救助に赴いた消防は自給自足が原則。そこで大型のキャンピングカー風の支援車両が配備されるようになってきました。この車両は活動の最前線基地になると同時に、疲弊した隊員にとって休息の場にもなります。過酷な被災地での活動において、安全確保の意味でも重要な存在になるのです。
しかし、こうした車両に対しても「贅沢だ」「税金でキャンピングカーはいらない」などという見識の無い市民の声があることも事実のようです。
これから先、消防従事者の人手不足と高齢化を解消する決定的な改善策は見いだせていません。
そうなると省力化するための機材導入は不可欠ですし、人海戦術に頼らず機材を効率的に活用することが求められます。また、地域性に適した機材や車両の配備も必要性が増してくるでしょう。
日頃街中で何気なく見かける消防車や救急車。
これらの車両、そして多くの消防従事者が市民の安全な生活を守るために重要な役割を担っていることを再認識した上で、必要な車両や装備の導入を推進することに対する市民の理解はとても必要になってくると思います。
もちろんその上で、本当の意味で「税金の無駄」が無いかを消防組織自らはもちろん、市民の側も厳しくチェックすることも重要であることは言うまでもありません。
ただ、闇雲に「税金の無駄」だけを叫ぶのではなく、しっかりとした地域ごとの実情把握と検証、将来的なビジョンの策定が必要なのではないでしょうか。
※写真はイメージであり、本文とは関係ありません。
Posted at 2010/03/17 20:12:09 | |
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