
最近の食品業界では色々なものがブームを巻き起こしています。その結果として販売見込みを大幅に上回る売れ行きを示したことから、生産が追いつかずに一時的に販売を中止するという商品も多く、たびたびニュースで伝えられています。
そんなもののひとつが「食べるラー油」。
ラー油と言えば餃子のタレに混ぜたり、坦々麺や麻婆豆腐を作る際の調味料というのがこれまでの一般的な認識でしたが、昨年来「具いり」の「食べるラー油」が登場して市場は新しい需要を喚起しています。ラー油市場そのものも「食べるラー油」の登場以前から活性化していたようで、2004年から2008年までの5年間で120%に規模が拡大したということです。
そして、そんなラー油市場の活性化を横目にみていた伝統的調味料市場に、新しい動きがありました。
●ラー油には負けん、「食べるしょうゆ」 和歌山・湯浅
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asahi.com(朝日新聞) 2010年10月1日 13時53分
和歌山県・
湯浅町の
丸新本家という醤油メーカーが「食べるしょうゆ」を商品化して売り出したというニュースです。
この
湯浅町、私は今年の正月に初めて訪れました。町を貫く国道を通過したのですが、その際に沿道に醤油醸造元を多く見かけ、写真のような「醤油発祥地」という看板も目にしました。
恥ずかしながらこの時まで、この
湯浅町が醤油の発祥地であることを知りませんでした。
調べてみるとこの町には、鎌倉時代の1254年に禅僧・覚心が中国から持ち帰った径山寺(きんざんじ)味噌の製法が伝えられたそうです。その製造過程において、醤から染みだす汁の美味しさが注目を集め、今で言う「たまり醤油」が作られるようになったのだとか。
現代にも径山寺(きんざんじ)味噌と合わせて醤油の製造は受け継がれており、財団法人日本醤油技術センターが運営する「
しょうゆ情報センター」というウェブサイトでも、日本の醤油発祥地として
湯浅町が紹介されています。
私などは醤油といえば千葉を真っ先に思い浮かべるのですが、確かに大手醤油メーカーが工場を構えていることもあって現在でも千葉県は34.32%のシェアを有する生産量日本一を誇っています。そして2位が兵庫県、3位は愛知県と続いています。
醤油市場は国内生産量が年間90万キロリットル、
総務省が発表した統計資料によると日本国民一人あたりの平均年間消費量は2.4リットルとのこと。
しかしこの伝統的調味料の市場も近年は大きな変化を見せているようで、消費者の健康志向の強まりから塩分の濃いものが敬遠されてきているため、出荷量はここ数年伸び悩んでいるそうです。その一方で「だししょうゆ」や「ポン酢しょうゆ」などの生産量は伸びを見せており、食卓事情の変化をかいま見ることができます。
また海外市場は活性化しているようで、健康志向に伴う日本食ブームが各国で起きていることを背景に、海外での生産量はこの35年で約25倍にも増加しているそうです。
ところで醤油と言えば、単身者から大家族までどんな世帯でも必ず台所に常備されているとは思いますが、地域によって嗜好の違いはあるようです。
北海道育ちの私にとっては醤油と言えば
キッコーマン、それも「こいくち」がスタンダード。ちなみに私の場合、味噌は「
かねさ味噌」が子供の頃から親しんできた味です。
しかしこれが西日本にいくと「うすくち」の占める割合が増え、九州地方では「こいくち」が73.7%に対して「うすくち」は24.8%にまでシェアを増やします。また、「こいくち」でも西日本のものは比較的甘口であり、対して東日本から北日本のものは塩辛いものが一般的です。
実際に北日本は塩辛い味付けを好む傾向が強く、塩分摂取量も多くなりがち。これが高血圧や脳卒中の原因となっているのも事実で、昨今は減塩醤油などの販売が伸びているというのも健康志向の強まりによるものでしょう。
私の場合もやはり子供の頃になれ親しんだ味と決別するのはなかなか難しく、今も醤油は「こいくち」の塩辛いものを好みます。一方、山口県出身のウチの社員嬢は塩辛い醤油は苦手だそうで、甘みの強い醤油を好むとのこと。
インターネットの発達などで情報化社会が進み、交通機関の進歩で簡単に遠距離を往来出来るようになった日本。
とは言え、いくら近代化が進んだとしても、その土地に伝わる食文化や食生活の嗜好というのは、そう簡単には一元化されるはずもなく、だからこそ全国を旅して訪れる楽しみもあるというものなのでしょう。
Posted at 2010/10/08 02:17:11 | |
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