
私は仕事柄もあって、北海道から九州・沖縄まで全国各地を訪れる機会に恵まれています。
最近ではこのブログにも記してきているように、利用する交通機関はほとんどが車。東京から自走で各地を訪れているわけですが、高速道路での都市間移動を中心に、幹線国道や、時間に余裕のあるときは市街地中心部なども、あちこちで走っています。
日本は道路インフラが諸外国と比べてかなり整っている方であり、舗装された立派なバイパス道路が整備された地方都市も珍しくありません。片側二車線以上で中央分離帯も設けられたような道路が街の郊外を貫いていて、その沿道には“ロードサイド型”と呼ばれる商業施設が展開している風景は、全国的に良く見かけるものです。
“ロードサイド型”の店舗とは、車での来店を前提に比較的規模の大きな駐車場を備えた商業施設。ファミリーレストランを中心とした飲食施設、家電量販店、ホームセンター、自動車用品店、ドラッグストア、レンタルビデオ店や大型書店などがそうした部類の店ですが、全国チェーンやフランチャイズ店が多くを占めているので、地域の個性はあまり感じられません。
さらにここに、全国展開しているスーパーマーケット、特に地方では巨大な施設が加わっていることもしばしば。
要するに全国どこに行っても、似たような光景が広がっている印象なのです。
一方で地方都市の中心部は、ドーナツ化現象の加速による衰退が深刻な問題となっています。
中心部の商業施設は軒並み客を郊外型の店舗に奪われ、廃業や休業が続出しているケースも多く見られます。俗に“シャッター通り”などと言われていますが、中心街の昔ながらの商店街はその呼ばれ方の通り、平日の日中でもシャッターを閉じたままの建物が少なくありません。
そんな商店街に関して、こんな事故がありました。
●屋根落下:豊橋駅前アーケードで4人けが 大雨が影響か
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毎日jp(毎日新聞) 2010年10月9日 23時58分
折からの豪雨の影響と見られる事故ですが、商店街の歩道にかかるアーケードが突然崩壊して怪我人が生じたという事故を伝える報道です。警察ではアーケードの屋根上にたまった泥や鳥の糞が雨を吸って、その重さに耐え切れなくなった屋根が落下したと見ているそうです。
商店街の象徴とも言えるアーケード。道路全体を覆う全蓋式と、歩道部分だけを覆う片側式の二通りがありますが、いずれも天気に関係なく買い物客を呼び込もうという設備です。
日本では昭和20年代後半から本格的なアーケードが登場、高度経済成長期に全国各地の商店街がこぞって採用してきました。しかし昨今は屋根で商店街を覆うことにより全体的に暗くなってしまいイメージダウンにも繋がることや、太陽の光を直接受けるオープンモール形態が好まれることから、アーケードの新設はほとんどありません。
一方で全国で500近い数が残っている商店街のアーケードは、設置から相当年数を経たものも増えてきて存廃が議論されるようになってきました。特に地震など防災面での不安を抱えている古いアーケードも多く、商店街のイメージアップや再開発といった要因からもアーケードの撤去に踏み切る事例が増えてきています。
しかし、特に全蓋式の場合は巨大な構造物ゆえに撤去にかかる費用も相当なもの。商店街の衰退が続く中での負担は大きくのしかかることになるのですが、かといって存続させるための補修や維持にも大きな費用がかかることから、八方塞がりに近い状態となっている商店街も散見されます。
地方都市の中心部にある商店街の現状をもう少し調べてみましょう。
今回事故のあった豊橋市。中部経済連の調べによると、市全体のうち中心市街地の小売業販売高の割合は1990年代初頭に30%を超えていたものが、10年ほどで20%以下へと下がっています。郊外への購買層の流出が大きな問題であり、中心街にあった大型スーパーや百貨店も撤退したことが販売減少に輪をかけています。
もっともこれは豊橋市に限った事象ではなく、同じような悩みを抱える地域は全国に多く存在しています。
地域住民の生活にもデメリットが現れ始めており、県庁所在地でありながら、中心駅の徒歩圏内に住んでいると日常の食料品を買う店が近くにないという状況も実際に現れ始めています。
この状況は来るべき超高齢化社会において大きな問題になることは間違いありません。
モータリゼーションの発達が社会構造を大きく変えたことによる現状ですが、高齢運転者の事故が徐々に問題視されていくなかで、「クルマがなければ日常の買い物ひとつ出来ない街」のままで良いのか、という話になってくるでしょう。
解決策としては、地域内公共交通機関の拡充か、中心市街地そのものの定義を変えた街づくりのいずれかになるかと思います。
前者の場合は路線バスやタクシーなどが対象ですが、現状では経営が困窮している事業者も地方都市では多いのが実情。ここに安易に税金を投入するのは考えものですが、何らかの実効的な公の支援は必要でしょうし、官民一体となった取り組みが求められることになるでしょう。
後者はもっと根本的なところで、旧来の“中心街”という発想を捨ててしまうことです。今の時点で“郊外”とされるところが発展すれば、実質的にそれが“中心街”になっていくのですから、そちらに住民をシフトさせてしまおうという考えになります。ただ、この場合は旧中心街の住民として高齢者が多く残ることになるでしょうから、移転を促進させる大胆な取り組みが必要になってきますし、住民側も協力する姿勢が求められます。
昨今は地方の首長がクローズアップされる機会も多く、個性的な首長が存在感を見せています。
それはそれで良いとして、国政がこの体たらくを続けている有り様ですから、まずはおのおのが日常の生活を営んでいる地元地域の改革を、きちんと将来像を描きながら進めていくことが必要なのかもしれません。
※写真は熊本市の「駕町通り」。本文とは関係ありません。
Posted at 2010/10/13 16:05:15 | |
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