
久しぶりにニューモデルのインプレッション紹介を、何回かに分けて掲載してみます。
そのニューモデルとは、去る12月16日に発表された
ルノーの「
新型メガーヌ ルノー・スポール」です。
まず第1回は、新型車のアウトラインと、マーケット事情などについてご紹介していきます。
改めてのおさらいをすると、フランスの自動車メーカーである
ルノーは創業から100年を超える長い歴史を誇る、現存する自動車メーカーの中でも最古参に類する伝統ある企業。フランス国営の公団時代をはさみ、現在では完全民営会社として多彩なモデルが世界中で愛されています。
日本との関係では、古くは
日野自動車が1953(昭和28)年から10年間にわたってノックダウン生産(前半の5年間は組立車、後半の5年間は完全国産化)していた日野・ルノー(ルノー4CV)が知られるところ。日本のモータリゼーション普及において、大きな貢献をしてくれたメーカーです。
また最近では1999(平成11)年に、
日産自動車との資本提携を結んだことが大きなニュースとして伝えられています。
そして、
ルノーにおける量販中核車種が1995年にデビューした「メガーヌ」。それまでの「19(ディズヌフ)」に代わるCセグメントのハッチバックであり、フォルクスワーゲン・ゴルフやフォード・フォーカスなどとライバル関係にある重要な会社の屋台骨を支えるモデル。日本車でいえばトヨタカローラやホンダシビックがこのクラスに分類されますので、一般ユーザー向けのモデルとして如何に重要な位置づけになるかをお判りいただるのではないでしょうか。
今回発表された「
新型メガーヌ ルノー・スポール」は、2008年秋のパリサロンで発表された三代目にあたるモデル。本国では5ドアハッチバック(ベルリーネ)、ステーションワゴン(エステート)、クーペカブリオレ(2ドア電動オープンハードトップ)、そしてクーペという4つのボディスタイルがラインナップされていますが、日本市場に先陣を切って導入されたのが今回発表されたクーペをベースとしている「
新型メガーヌ ルノー・スポール」です。

ボディサイズは全長4,320mm×全幅1,850mm×全高1,435mmでホイールベースは2,640mm。5ドアハッチバック(ベルリーヌ)とホイールベースは共通ですが、全長は+25mm、全幅はおよそ+40mmの拡大、一方で全高はおよそ-35mmというプロポーションになっています。ゆえにワイド&ローの精悍さが際立つ印象。さらに標準で18インチ、オプションでは19インチも選べる大径タイヤ&ホイールが足まわりを引き締めていますし、なにより実用性を重んじるハッチバックに対して、特にリアセクションが適度なボリュームを持ったグラマラスな曲面で構成されていることから、とても存在感のあるエクステリアとなっています。
このモデル、単なるおしゃれなクーペというだけではなく、「ルノースポール」の名を冠しているだけにドライバビリティには深いこだわりを見せています。その最たるものが車の基本であるシャシー。「シャシーカップ」と呼ばれる走行運動性能に重点を置いたシャシーが採用されていますが、これはより普遍的な「シャシースポール」に対してダンパー性能がフロントは35%、リアは38%も向上しています。またアンチロール性能も15%高められており、サーキットでのスポーツドライビングも余裕でこなすだけの実力を備えています。
ここでルノー社とモータースポーツについて触れておくと、やはりF1での活躍を真っ先に挙げるファンは少なくないでしょう。往年のアラン・プロストや最近ではフェルナンド・アロンソといった名選手たちがルノーF1を駆って活躍をしてきた歴史は、モータースポーツファンの方々に対してはいまさら説明するまでもないでしょう。
そしてルノーは黎明期からモータースポーツに深く関わり、幾多の栄冠を手中におさめてきています。
なにしろ、創業者のルイ・ルノーが最初に作り上げた1号車が、1900年のパリ~ロンブイエGPに出場して優勝を飾っています。この大会は世界初のグランプリレースとも言われていますので、まさに世界のモータースポーツ史、その1ページに輝かしい歴史を刻んだのがルノーなのです。その後も1901年のパリ~ボルドーGPや、1902年のパリ~ウィーンGP、1903年にはパリ~マドリッドGPと連勝を重ね、耐久性や信頼性を含めて優れたポテンシャルを持つ車として名声は広まっていきました。
こうしたモータースポーツシーンでの活躍は、市販車にも常にフィードバックされてきたことでしょう。絶え間なき技術開発と生産技術の向上が、実用車では耐久性や基本的な運動性のの高さ、安全性などとしてユーザーメリットにつながります。さらに今回発表された「
新型メガーヌ ルノー・スポール」のような走りを重視するモデルであれば、優れたドライバビリティに直結していることは言うまでもありません。

さて、エクステリアデザインに話を戻すと、フロントフェイスが先代メガーヌが独創的ながらちょっと線の細さも感じるものであったのに対して、新型はとても明確に存在感を示すものになりました。肉感的な曲面で構成されますが、決して“肥満体”には見えません。そして新世代ルノーを象徴する大きめのヘッドライトやグリルまわりの造形ですが、フロントフェンダーからグリルへとつながる大型のヘッドライトユニット、そしてそれを受け止めるブラックアウトされたグリルが個性と精悍さを演出しています。
近年は“吊り眼+大口”がひとつの世界的な自動車デザインのトレンドとなっており、メーカー違いでも似た感じのデザインが目についたりするのですが、この「
新型メガーヌ ルノー・スポール」については他のルノー車との共通項はしっかり抑えつつも、厭味にならない存在感を見せています。この“厭味にならない”というのはひとつのキモであり、高性能や高級ブランドを謳う車では時として存在感を鬱陶しく感じることもあるものです。そこは他の欧州車とは異なり、ディテールの小細工や装飾に頼らず、きっちりと車全体をデザインしたルノーのセンスが光ります。

私の個人的な好みを記すと、特に斜め後方からのルックスに好感を持ちました。交錯するパネルラインに若干の煩さも感じなくはなかったのですが、それよりもドライバーの頭上を頂点としてなだらかに下りてくるルーフラインと、張りのあるサイドボディ、さらには安定感と迫力を演出するリアフェンダーが、きれいにリアハッチに収束されて良いまとまりを見せているという印象です。
また、このような車種では地面に寝ころぶような超ローアングルで写真撮影することが多く、このアングルでは迫力や格好よさが強調されがちです。もちろん「
新型メガーヌ ルノー・スポール」はローアングルからの見栄えも良いのですが、それよりも関心したのは普通に立った状態で見たときの印象が格好よいこと。
カタログや自動車雑誌の写真はローアングル撮影が多いので、意外と街中で見ると印象が変わってしまう車というのは多いものですが、この「
新型メガーヌ ルノー・スポール」についてはアイポイントが変わっても破綻しないデザインであり、これはとても秀逸なものだと思います。
車そのものの詳細には触れられませんでしたが、とりあえず第1回はここまで。
次回以降は「
新型メガーヌ ルノー・スポール」のディテールや、実際に走らせてみてのインプレッションを記していきたいと思っています。