
この冬は予想を遥かに上回る豪雪が各地で甚大な被害をもたらしています。
年末の大晦日から元旦にかけての大雪では特に山陰方面での被害が大きく、鳥取県内では国道9号線で1,000台もの車両が立ち往生する事態も発生。自衛隊が現地の要請を受けて災害派遣出動を行い、除雪と救出作業にあたりました。
また1月15日から16日にかけても全国各地で降雪があり、この時は九州南部などでも積雪となりました。
感覚的には2005(平成18)年の「平成18年豪雪」以来の大雪という印象ですが、1月21日に
内閣府で行なわれた関係省庁連絡会議で報告されたところによると、この冬の大雪による死者数は全国で45人、負傷者数は重軽傷合わせて463人となっています。また報道にもあったように交通障害や停電、断水といったライフライン被害も大きく、さらに農業や漁業関係への被害も深刻なものがあります(データの数字は2011年1月19日現在)。
積雪量も記録的な多さになっているところが全国にあり、北海道の森町や岩手県の葛巻町・八幡平市、福島県の会津若松市といった北日本はもちろんのこと、岡山県の真庭市、広島県の北広島町、島根県邑南町や鳥取県米子市という西日本の各地においても、観測地点で史上最多の積雪を記録しています。
このように雪が多い今回の冬ですが、道路や歩道の除雪に対する住民の不満が各地で表面化しているようです。
●予算削減で「安全・安心が不安」と国交省 道路の維持・管理の水準低下、除雪量減らす・・・
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毎日jp(毎日新聞) 2010年12月24日
実は今回の大雪が降る以前から、こうした事態になることを危惧する声は出ていました。そして要因のひとつとして挙げられているのが、
行政刷新会議が行なった“事業仕分け”による予算の縮減なのです。
一部では「事業仕分けで除雪予算が減らされた」という声が大きいようですが、正確には除雪に限った予算ではなく「直轄国道の維持管理予算が縮減された」ということです。
行政刷新会議ワーキングチーム「事業仕分け」第1WG : 直轄国道の維持管理
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内閣府・行政刷新会議 2009年11月12日
この“事業仕分け”で、結論としては「予算要求の10~20%縮減」という評価が下されました。その手法としては「入札方法の見直しや管理水準の見直しで最低10%程度の縮減」、さらに「公益法人による“中抜き”をなくすこと」や「地方自治体との一体的な維持管理によるコスト削減」などが挙げられています。
今回の除雪に対する不満は、このうちの“予算縮減による管理水準の見直し”が根底にあると思われます。
ただ、道路には国道のほかに、都道府県道や市町村道があり、それぞれ維持管理者が異なります。直轄国道についてはこの“事業仕分け”による影響が大きいかと予想はされますが、実際には都道府県や市町村のレベルになると除雪予算の縮減はさらに以前から行なわれてきています。
●道道の除雪に関するご理解とご協力について
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北海道(土木局 道路課)
一例として
北海道を見てみると、財政赤字に転落したことなどを契機として、道道の除雪体制を見直しています。具体的には除雪出動基準の目安を以前の降雪5~10cm以上に対して、交通量の少ない道については10cm以上へと引き上げています。また融雪効果は高いものの、電気代などの設備維持管理費が大きいロードヒーティング装置については、面積の縮小が図られています。
●札幌市 : 雪対策予算
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札幌市
市町村レベルでも雪の対策費は大きな財政上の支出項目になっており、
札幌市でいうと150億円弱が1シーズンに支出されています。
その大半を占めるのは除雪や排雪といった直接的な作業。これらは自治体職員が直接的に行なうケースは少なく、ほとんどは地元の建設会社などに民間委託されています。機材については受託企業や自前で持っているものを使う他、自治体から貸与されているものも多く、作業員は社員だったり臨時雇用していたりと様々なケースがあるようです。
除雪作業は交通インフラの確保という、生活の根幹に関わる重要なものです。もし除雪が不足すれば物流などは滞りますから経済損失は計り知れません。また交通事故の多発や緊急車両の活動に障害を与えることなどによって人命に関わる問題も生じるでしょうし、これからの高齢化社会においては高齢者の生活に対して特に影響が大きいと思われます。
また、降雪地帯では雇用の確保という一面も忘れられません。特に建設業は冬季の収入を除雪に頼る部分も多く、企業の存続と社員の雇用確保に欠かせないものになっているはずです。
しかし一方で、国から地方まで自治体の予算が厳しい状況にあることも事実。ゆえにコスト削減による予算の縮減は間違いなく必要ですが、どうも現状では特に雪が多かったせいもあるでしょうが、除雪の不足がクローズアップされてしまう結果を招いています。無駄な道路を作るなど公共事業の“悪の面”はあるでしょうが、その一方では生活に絶対欠かせない公共事業も存在しています。
どうも雪に対しては非豪雪地帯の人々はロマンティックとでもいうようなイメージが先行してしまうのか、台風や地震といった他の自然災害に比べて、豪雪による雪害は軽視されているように思える部分があります。しかし、雪は実際にとても恐ろしいものでもあります。
行政刷新会議の事業仕分けでは、「
社団法人 雪センター」について事業規模の大幅な縮減という判定が下されました。
この法人、実に職員14人のうち10人が東京所在で更に14人の内訳を見ると、理事長(1人)を筆頭に専務理事(1人)、理事が10人、そして2人監事となっているのです。要するに一般職人がいないという、あり得ない組織構造であり、もちろん天下りの面々が高給を得ているのです。
これは事業仕分けのひとつの成果であると思います。実際、この法人が今後どうなっていくのかも注視していく必要があるでしょう。
しかし一方での直轄国道維持管理については、問題がいろいろと残されています。各現場では予算縮減に向けて融雪剤の調達価格を従前よりも安価にするなどの取り組みが行なわれていますが、どうしても実際の作業そのものも縮小せざるを得ないようです。
もう少し降雪地帯選出の国会議員が発言する機会もあって良いようにも思えますが・・・。
残る今冬の間に、深刻な雪害が再び発生しないことを祈るしかありません。
Posted at 2011/01/24 08:31:07 | |
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