• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

NorthStarのブログ一覧

2011年01月26日 イイね!

幻となったコンセプト

幻となったコンセプト今や自動車業界のトップメーカーでもOEMは珍しいものではなくなりました。日本語では“相手先ブランド製造”などと表現されますが、要するに同業他社の製品を、自社ブランド商品として販売する手法のことです。
それ自体は決して新しいものではなく、古くは1967年にトヨタ自動車と提携したダイハツ工業が2年後の1969年に発売した「コンソルテ」は、トヨタ自動車の「パブリカ」のボディやシャーシをベースにして意匠を部分的に独自化したものでした。発売当初エンジンはダイハツ製に換装して販売していましたが、後にトヨタ製エンジンを搭載した仕様も追加されています。これも一種のOEMに含まれる事例でしょう。

OEMにはコストダウン効果と、供給を受ける側にとっては商品ラインナップの拡充を容易に実現出来るというメリットがあります。
最近では前者については商用車の世界でそのメリットが注目され、ライトバンやワンボックスバンでは盛んに展開されるようになりました。後者についてもミディアムクラス以上のセダンや軽自動車などについて、OEMでのラインナップ拡充を図るケースが見うけられます。

2011年1月18日の日本経済新聞は、三菱自動車日産自動車から「フーガ」のOEM供給を受けて、今年中に6年ぶりに上級セダンの販売を復活させる、と伝えました。
三菱自動車は過去に軽自動車から大型セダンまで(更に言えば大型トラックまで)のフルラインナップ体制を敷いており、上級セダンとしては「デボネア」や「プラウディア」「ディグニティ」といったショーファードリブン要素の強いモデル、そしてオーナー向けとしては「ディアマンテ」を製造販売していました。

しかし「デボネア」は1999年に生産を終了、後継の「プラウディア」「ディグニティ」も2001年でライフに終止符を打ちました。「ディアマンテ」についても2005年で生産を終了しています。現状のラインナップでは「ギャラン フォルティス」がセダン型としてはフラッグシップの位置に立っていますが、それまでのブランドネームに比べると1ランク以上の格差があるのは明確なところです。

三菱自動車の場合は、銀行や商事、重工など“三菱グループ”の内部需要も決して小さくなく、特に財閥系企業グループの中でも結束が強いと言われる三菱ではグループ企業の中で確実に上級セダンの需要が存在しています。ところがここ6年ばかりその需要に応える車種が存在していませんでした。
また古くからの三菱を愛好する一般ユーザーの需要にも対応出来ず、メーカーはもとより販売店にとっても収益の大きい上級セダンを望む声は根強くあったのでしょう。こうした背景から今回のOEMが実現する運びになったのではないかと想像出来ます。

果たして「フーガ」のOEM車が三菱ブランドでどのようなネーミングになるのかは判りませんが、個人的な予想では内外装の意匠変更も最小限に留められるのではないかと思います。最近の三菱は逆スラントノーズに台形の“ジェットファイターグリル”がアイコンとなっていますが、さすがに現状の「フーガ」にこの顔つきを組み合わせることは困難でしょう。

ここで思い出したのが2007年の東京モーターショーに参考出品された「Concept-ZT」。
見事に逆スラントノーズと“ジェットファイターグリル”の顔つきを持ちつつ、堂々たる体格ながら重苦しさを感じさせないスタイリングに仕上がっていた上級セダンのコンセプトカーです。

参考データを見ると、ボディサイズは全長4,950mm×全幅1,820mm×全高1,440mmでホイールベースが2,815mm。なかなか大柄なボディですが、比較的直線を基調としたスタイリングは斬新さこそ薄いものの独特の存在感を醸しだしています。
興味深いのは搭載されるエンジンで、排気量2.2Literのクリーンディーゼルエンジン。4気筒DOHCの“4N14”型エンジンはコモンレールとピエゾ式インタークーラーを燃料噴射方式として採用、さらにターボをドッキングして140kW(約190ps)の最高出力と、400Nm(約40.8kg-m)の最大トルクというスペックを誇っています。

さらにミッションは「ランサー・エボリューションⅩ」でもお馴染みのツインクラッチSST、駆動方式は電子制御4WDでS-AWCを採用。アルミスペースフレーム構造のボディ、アウターパネルではボンネットやトランク、フェンダーに加えてドアも樹脂を採用するなど、動力性能面のポテンシャルも高いものを予感させる内容となっていました。

ショーに展示されたモデルは、細部の意匠こそショーカーらしい佇まいでしたが、よくよく見ていくと市販化の一歩手前という感じの出来ばえでもありました。インテリアもショーカーとしては比較的現実路線で作り込まれていましたが、その中で特徴的だったのはセンターコンソールに配された2つのダイヤル。
運転席側のものはエンジンスタート/ストップボタンを組み込んだオートマチックのセレクター。ジャガーが採用しているものと同じ発想のダイヤル式となっています。助手席側のダイヤルはS-AWCのモード切り替え。ランサー同様にTARMAC/GRAVEL/SNOWの3モードが用意されていますが、さすがにこのクラスで“GRAVEL”というのはどうかと思った記憶があります。

その他で面白いのは、ヘッドライトとワイパーのスイッチがステアリングホイールに配されていることと、パワーウィンドゥや集中ドアロックのスイッチがセンターコンソールにタッチ式で用意されていたこと。
さすがにこれらはショーカーならではの部分でしょうが、これらのスイッチを一般的なレイアウトとして、センターコンソールにはカップホルダーや収納スペースを設け、更にメーターパネルなどをちょっと現実的なものにすれば、市販車として充分に通用する内容だったのです。

当時は三菱自動車で新しい上級セダンの自社開発を真剣に検討していたのでしょう。
しかし世界的な景気後退やエコ化という流れには勝てず、残念ながらこのコンセプトとプロジェクトは“お蔵入り”となってしまい、そして今回のOEM提携に行き着いたということのようです。

商売としては三菱自動車の企業規模や販売店の力からして、今の国内市場には独自のモデルで上級セダンを開発するよりも、OEM供給を受けて販売した方が正しい判断であるのは明らかです。
しかし個人的には、この「Concept-ZT」は当時とても気になる存在でした。ネーミングの“ZT”は資料によると「Z(究極の)+Tourer」を意味しており、「三菱自動車のクルマづくりの柱である“走る歓び”“確かな安心”“環境への貢献”の3要素を高いレベルで実現する技術の集大成である」と謳われています。

残念ながらOEMでは、こうした“メーカーの主義主張”は見えてきません。コストの制約が小さい上級車種でこそメーカーの個性や車づくりへの考え方、技術力をより見極めることが出来るものですが、残念ながら「Concept-ZT」はこの世に生を受けることは叶いませんでした。
個人的には日本仕様がディーゼルエンジンのみで展開されるとは思えず、かつ実際に販売するとなると価格戦略的に2輪駆動仕様も用意されたかと思います。その上で価格的には300~500万円あたりをターゲットとする構想があると予想しており、自分自身で購入する対象としても興味をそそる一台になると期待していただけに、“お蔵入り”してしまったことはとても残念に思っています。
Posted at 2011/01/28 23:54:58 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車全般 | 日記

プロフィール

各種取材やウェブサイトを中心とした制作業務を行なっています。 主なテリトリーは自動車/モータースポーツ、飛行機などの交通関係。 自動車は乗用車からトラッ...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2011/1 >>

リンク・クリップ

office North-Star業務雑記帳(FC2) 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2011/08/12 00:27:49
 
ADVAN Motorsports 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2011/08/12 00:27:30
 
NINJA TOOLS 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2007/09/17 19:46:48
 

愛車一覧

日産 フーガ 日産 フーガ
三菱ディアマンテ30M-SE、Y50型日産フーガ350XVに続く、三代目の“社用車1号機 ...
フォルクスワーゲン パサート セダン フォルクスワーゲン パサート セダン
マツダRX-8、三菱ランサーエボリューションVII GT-Aに続く、三代目の"社用車2号 ...
日産 フーガ 日産 フーガ
二代目となった"社用車1号機"。 日産フーガ350XV、ボディカラーはダークブルー。 ...
三菱 ランサーエボリューションVII 三菱 ランサーエボリューションVII
マツダRX-8の後継として導入した「社用車2号機」。 三菱ランサーエボリューションVII ...

過去のブログ

ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation