
カレンダーは今日から2月。月が変わるといろいろな変化も伴うものですが、自動車に関連したところでは今日から新しいデザインの高齢者運転標識が定められました。
道路交通法第71条の5第2項では、「普通自動車を運転できる免許を受けた者で75歳以上の者は、内閣布令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣布令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない」とあります。
この「内閣布令で定める様式の標識」が、従来の“もみじマーク”から“クローバーマーク”に変更されました。既に報道されているように、写真の“もみじマーク”は1997年の法改正で75歳以上の運転者に装着が努力義務として規定されました。その後、2002年に対象年齢が70歳以上とされ、2008年6月から装着が義務化されるはずでした。
ところがその後、紆余曲折が待ち受けていたのです。
採用されたデザインが“枯れ葉”を連想させる、などという合理性に欠ける感情論がなぜかまかり通ってしまい、義務化の施行直前になって国会で何とも不可思議な議論が繰り広げられたのです。その結果として警察庁が「1年間は違反の取り締まりは指導に留める」という通達を出し、さらに2009年4月には法的にも義務化を棚上げして努力義務に回帰することが決まってしまったのです。
そしてこのたびのデザイン変更。
これについても
警視庁のウェブサイトから引用すれば、70歳以上の運転者に対して“表示するように努めてください(罰則はありません)”という内容に留まっているように、表示は義務化されていません。かつ古いタイプの標識も“当分の間、使用することができます”と、とても曖昧かつ中途半端で実効性に欠ける内容となってしまっています。
人間は年齢を重ねると、身体的な衰えは免れません。運動能力、反射神経、判断能力、動体視力。これらは自動車の運転において欠かせないものであり、これらの衰えによって安全運転を実現できなくなることは明らかです。例え自動車としては比較的低い速度域であっても、例えば時速40km/hという街中レベルの速度にしても人間が持っている能力を遥かに超える“高速”であり、決してこの速度で人間は走ることが出来ません。そのような速度域で1トンを軽く上回る重さのものを動かすということの本質を考えたとき、高齢者が自動車の運転をその能力に応じて制限されることは致し方ないところであると思います。
昨年来、特にタクシーの高齢ドライバーによる交通事故も伝えられており、まずは二種免許について高齢者対策を考えなければならないでしょう。
具体的には一律に年齢で判断するのではなく、科学的な根拠に基づく実技試験において個別の能力を見極め、一定のレベルに達していない運転者の免許は更新しないという策が、いよいよ超高齢化社会を迎えるにあたって必要になってくると思います。もちろん最終的にはこの策を、全ての運転免許更新に展開すべきです。
しかし残念ながら高齢化社会ということは高齢者の人口比が高いことから、選挙のことを考えてしまう議員諸氏にとって、こうした問題には触れないようにしようという思いも見え隠れしています。
もちろん公共交通機関や福祉サービスの充実度に格差があるので、地方では車が無ければ買い物や通院が全く出来ないというところも珍しくありません。この問題は各地方が実情に則した対策を考えつつ、国が予算的な支援をする体制づくりが早急に求められるところ。
国土交通省が「交通基本法」の制定に向けて本格的に動き出していますが、ぜひとも実効性のある法律を作り、しっかりと将来を見据えた国のグランドデザインを描いてほしいと思っています。
自分自身もいつかは年齢による衰えを理由に、自動車の運転を止めることを決断する日がやって来ます。その時に、自らの意志で運転免許を返上することはとても勇気が必要ですし、ドア・トゥ・ドアの利便性に慣れきった身にとっては、出来ることならいつまでも運転を続けたいと思うことは間違いないでしょう。
しかし、その独りよがりな思いが、ひとつ間違えると取り返しのつかない重大事故を招く恐れがあります。そうなれば多くの人に迷惑をかけ、誰かの人生を奪ったり狂わせてしまう結果になり得てしまうのです。
免許返納もなかなか数が増えていないようですが、高齢者の自覚と誇りを持ちつつ、改めて自分自身の身体を見つめ直し、かつ自動車を運転することの“本質”を問うて、賢い判断をする人が増えることを願っています。
Posted at 2011/02/03 21:16:40 | |
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