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2011年02月17日 イイね!

危険極まりない目玉装備

危険極まりない目玉装備自動車には色々な快適性を高めるための装備がありますが、そのなかのひとつがオーディオ。以前はスパルタンなスポーツモデルであれば軽量化のためにオーディオを装着していないという事例もありましたが、さすがに今の時代ではオーディオレスのままで乗られている自家用車というのは無いような気がします。

基本中の基本となるのはAM/FMラジオ。これらは放送されている番組を車内で楽しむという目的はもちろん、ニュースや天気予報といった放送を通じて、災害発生時などの情報収集という安全運転上も必要な役割を担っています。さらに交通情報はAMラジオの1620MHZで配信されていますので、事故や通行止め、渋滞といった情報を得るためにも欠かせないもの。最近は交通情報のチャンネルを一発で呼び出せる専用のボタンを備えたユニットがスタンダードになってきました。

次に主に音楽を楽しむための装備。古くは8トラックやカセットテープのデッキにはじまり、CDやMD、DATのプレーヤーもありました。CDは今や数枚のディスクを格納出来るチェンジャー装置も広く普及しています。
またカーナビゲーションの普及に伴ってインパネ上のモニターを利用した映像再生も一般的になり、DVD再生機能を有したものも珍しくありません。
そして最近はポータブルプレーヤーを接続できるオーディオが主流。センターコンソールやグローブボックスに外部入力端子を備え、車内に持ち込んだプレーヤーを接続して音楽を楽しめるというスタイルが主流になりつつあります。

カーオーディオの選択肢は、新車段階でのメーカー標準装備品と工場のラインで組付けられるメーカーオプション、さらには販売会社で組み付けるディーラーオプション、そしてユーザーが独自に購入して装着する社外品といったところでしょうか。コンパクトカーでは基本がオーディオレスとなっていて、ユーザーが好みや予算に応じてこれらの中から選んで装着出来る、というスタイルが増えてきています。
そんな中で私はどちらかというと新車純正装備品、またはメーカーオプションを好みます。インテリアデザインも多様化した今日では、室内全体とのマッチングという意味でこれに勝るものはありません。また機能面や音質などの充実度も悪くないですし、ステアリングスイッチや各種モニターカメラとの連携などで車外品を上回る利便性を有しているものが多いからです。


しかし、少々残念な内容のものもあります。
それは去る1月20日に発表された「スズキMRワゴン」に装備されている「タッチパネルオーディオ」。インパネ中央に用意されたそれは、なんと完全にフラットなパネル面にスイッチが浮かび上がるというスクリーンタッチ方式で操作するオーディオです。スクリーンタッチ方式はカーナビゲーションにも採用例がありますが、操作感覚としては最近普及が進んでいるスマートフォンに近いものがあるかと思います。

この装備、自動車のオーディオとしては失礼ながら史上最低のものだと思います。
そもそも運転者が走行中に操作することをカーオーディオは考慮しなければなりません。それは好みの音楽を聴いたりという快適性能の面だけではなく、前述のように交通や天気にまつわる安全運転に必要な情報を得るためでもあるからです。

では完全にフラットなパネル面に表示されたスイッチ類を、走行中に操作できるものでしょうか。当然、運転中は前方をはじめとした周囲の状況を常に把握する必要がありますから、操作パネルを注視することは出来ません。その上で指を伸ばして必要なスイッチの場所を確かめて操作するわけですが、フラットパネルなので当然指先に伝わってくる感覚に変化はありません。
つまりパネル面を見ないで操作する“ブラインドタッチ”を行なうのは絶望的であり、必ず視線をパネル面に送らなければなりません。この装着位置は比較的インパネの高い場所にありますが、単なるスイッチパネルとは異なり、フラット面に表示されているスイッチなのでしっかり視認する必要があり、必然的に視線を送っている時間は長くなってしまうでしょう。
40km/hで走行している自動車は2秒間に22m、60km/hなら33mも進んでしまいます。視線を前方から外す時間が秒単位でも長くなればなるほど、いかに危険性が増すかはこの数字を示すまでもなく想像に難くありません。


自動車の装備は充実化が進むとともに、操作性の簡略化という課題を突きつけられました。一時期はスイッチだらけのインパネという車種もあり、中には大小あわせて150個以上のスイッチが備わっていた車種も仕様によっては存在していました。これが徐々に工夫を凝らされ、例えばダイヤル的なスイッチが採用されたり、ひとつのスイッチに複数の機能を持たせるファンクションスイッチ的なものが登場したりしています。
写真を掲載したのは「日産ジューク」のインパネ。これには「インテリジェントコントロールディスプレイ」という装備の設定があります。これは独立した6つのスイッチが、それぞれ異なる2つの操作機能割り当てられていて、選択したモードによって機能を使い分けているというもの。スイッチそのものはパネル表示ではなく通常のハードウェアとしてのスイッチであり、表示切り替えに工夫を凝らすことで2つの機能を上手く共有させています。
こうすればスイッチの総数は削減できますし、個々のスイッチの面積も大きくとれるので、操作性能や安全性能が向上するわけです。

一方でフラットパネル面に表示するタイプのスイッチは、パソコン画面などと同様にあくまでも“絵”にすぎないので、ハードウェアのスイッチよりもコスト的に有利な面があるでしょう。さらに如何様にでも“絵”は描けるので、デザインや機能も自由自在。
しかし全てが“絵”、つまり電源ひとつ入れるにしても余程慣れない限りはパネルを見なければ操作できるものではありません。

このような代物を目玉装備に謳うメーカー、そして開発者には呆れてしまいます。
少なくとも同社のウェブサイトを見るだけでも「装備品紹介ページ」においてわざわざ“※写真は駐車して休んでいる状態です”などという注釈を付ける必要があるというだけで、自動車用オーディオ装置としての欠陥を認めているようなものです。


さらに気になるのが、自動車メディアの記事。
スズキMRワゴン」の紹介記事や試乗記ではもれなくこの装備が紹介されていますが、危険性を指摘するコメントはほとんど見受けられません。
“未来的なデザインが良い”、“スマートフォンのような操作感覚が気持ち良い”などなど褒めたたえるばかり。これらを事実としても、最低限「ただし運転中の操作は控えるべき」であったり「メーカーにはステアリングスイッチの装備も求めたい」といった注釈が必要になると思うのですが、そうした文言は見当たりません。

渋滞情報を聞きたくて操作するために、電源オンから選局、場合によっては音量操作までをしている間に、何度も前方から目線を外す可能性があります。そうこうしているうちに渋滞最後尾に近づき、前方不注意で最後尾の車両に激突などという可能性もあり得るわけです。もちろんこれは通常のオーディオでもあり得る話ですが、どう考えてもその特有な操作性から「タッチパネルオーディオ」の方が危険性が高いのは明らかではないでしょうか。
こうした危険性を含んでいる装備を目玉に据える自動車メーカー。ユーザーの立場に立った指摘が出来ない自動車メディア。後者については、果たしてどちらを向いて情報発信をしているのかという疑問を抱かざるを得ません。
 

■2011年2月23日追記
本件の危険性について、もう少し背景的なものを解説した記事を2011年2月21日付のエントリとして掲載しました。
Posted at 2011/02/19 23:47:50 | コメント(1) | トラックバック(1) | 自動車全般 | 日記

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