
去る2月18日、
メルセデス・ベンツから二代目となる「
CLSクラス」が発表されました。
初代は2004年に登場。4枚のドアを有しつつも低い全高でクーペを彷彿とさせるスタイリング。実用性よりもデザインを優先、居住空間は通常のセダンに比べて狭いものの独特のスポーティな佇まいで人気を集めています。
二代目も基本的なコンセプトは変わらず。実用性の高いセダンのお手本ともいえるEクラスをベースに、全く異なるキャラクターのモデルとして生み出されています。その全高は1416mm
。初代のフラッグシップグレードだった「CLS63AMG」が1415mmとほぼ同じ数値でしたから、やはりこのロールーフが最大の特徴となります。
バリエーションは2種類。3.5LiterのV6エンジンを搭載する「CLS350 BlueEFFICIENCY」は225kW(306ps)の最高出力で930万円、5.5LiterのV8ツインターボエンジンが386kW(525ps)を生み出す「CLS63 AMG」は1,625万円というプライスタグを掲げています。
近年になり、この「
CLSクラス」をはじめとして、ヨーロッパでは背の低い4ドアセダンをリリースするメーカーが増えてきました。そしてこれらたコンベンショナルな4ドアセダンに対してハイパフォーマンス&ハイグレード版という位置づけになっており、スポーティなデザインも付加価値のひとつという仕立てになっています。
思えばその昔、日本では4ドアハードトップという独特なスタイルのボディが主流だった時期がありました。サッシュレスのドアを4枚有し、セダン形状でありながらルーフは低く実用性よりもデザイン性を重視したコンセプト。クラウンやセドリックといったLクラスから、マークⅡやローレル、インスパイアといったアッパーミドルクラス。さらにはコロナ・エクシブやカリーナED、エメロードといったミドルクラスのみならず、カローラ・セレスやプレセアなどの小さいサイズの車種にまで展開されました。
これらは当然、ルーフが低いので4ドアでありながらコンパクトなキャビンとトランクルームゆえに実用性はかなりスポイルされていました。しかし一般的なセダンボディに対してワンランク上という感じの高級感、そして若々しいスポーティさが支持を集め、車種によっては一般オーナー向け需要は4ドアハードトップボディが主力とされて、4ドアセダンは高齢ユーザーや法人需要を賄うというマーケティングが展開されたりもしたものです。
私自身は当時から、この4ドアハードトップというボディ形状に対してはあまり肯定的ではありませんでした。やはり実用性能が大きくスポイルされてしまうことがどうしても気になり、ミニバン全盛の今日とは異なりファミリーカーの主流が4ドアだった当時では、セダンに対して背の低いハードトップを買うことのメリットが小さいとしか思えなかったからです。
しかし当時は自動車でのある種の“見栄の張り合い”もあり、自動車に対してそのような価値観も蔓延していました。故に商品戦略の巧みさもあったのでしょう、消費者の心理を巧くくすぐることに成功して主流の座を占めていました。
それがミニバンの登場で実用性能が重視されるようになって状況は一変。次々にサッシュレスドアのハードトップボディは姿を消し、真っ当な4ドアセダンが復権を果たしています。
対してヨーロッパでは背の低いセダンが増えていますが、これは“自動車のクロスオーバー化”という流れに沿ったものでしょう。自動車市場の競争が世界的に厳しさを増す中、各メーカーは生き残りをかけてブランド戦略や商品戦略を展開しています。
昨今は古典的なボディ形状などによるカテゴライズの枠を超えたクロスオーバー化も、商品の価値を高めるために一般的になりました。昔は業務用というポジションが強かった4輪駆動のクロスカントリーモデルですら、乗用車との“クロスオーバー”を遂げた新しいモデルが次々に誕生。特に北米などでは富裕層から支持を集めており、自動車メーカーにとっては高い利益を出せる重要な位置づけにまでなりました。
こうしてみると、セダンとクーペの“クロスオーバー”として誕生した背の低い4ドアも、メーカーにとっては利益率の高い商品になり得るので力が入るところでしょう。こうした流れがどの程度拡がっていくのか、日本のメーカーが追従していくのかは今後気になるところです。
ちなみに私は、過去の車歴で一度だけ4ドアハードトップのモデルを所有していたことがあります。
それが前・社用車1号機だった
三菱ディアマンテ 30M-SE。サッシレスドアで、ヒドゥンBピラーの典型的な国産4ドアハードトップでしたが、幸いなことに背が比較的高かったのでユーティリティはそれほど犠牲になっていませんでした。サッシレスドアの剛性感には不満を覚えた部分もありましたが、実用性がそれほど悪くなかったので購入に至った次第です。
Posted at 2011/02/26 17:43:01 | |
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