
それは数日前の雨の夜に、社用車2号機(
フォルクスワーゲン・パサート 2.0)で都内を走っていたときのこと。
信号待ちをしていると、隣のレーンにやってきて並んで止まった車に目を奪われました。車そのものは宅配便などでも使われているウォークスルー型のバン。しかし上品なダークグリーンにペイントされた車体、そのボディサイドには写真のような表記がされていたのです。
店名と思われる表記の下には“FLOWER / PLANTS”とありますから、フラワーショップであろうことは容易に想像できます。
帰ってから調べてみると、東京は青山の外苑西通り沿い、エリア的には“キラー通り”とも呼ばれているところですが、そこに店を構えている「
FUGA」というフラワーショップがありました。こちらのお店は生花類の販売はもちろん、植栽や企業・媒体向けのフラワーアレンジメントなども幅広く手がけているそうで、イベントの飾りつけや撮影用の花のセッティングなどにも定評があるそうです。
偶然にその存在を知った店ですが、ロゴ書体が似ていることもあって
日産フーガを所有している自分としてはどこか親近感も覚えるのは自然なこと。ちなみに今回知った「
FUGA」は漢字で“風花”と書くところをアルファベット表記したもののようです。
なお、同名の商業店舗では、
山形県にある「
山寺 風雅の国」には足を運んだことがあります。このほか都内では
新宿プリンスホテルの最上階にある和風創作料理の店が「
FUGA」という名称ですが、こちらは漢字で表すと“風雅”となるそうです。
オーナーであればご存じの方も多いでしょうが、
日産・
フーガの車名の由来は音楽用語にあります。この技法を用いた有名な作曲家の一人がヨハン・セバスチャン・バッハで、「トッカータとフーガ」はオルガンの名曲として広く知られています。
シンプルながら強弱を巧みに組み合わせて生み出された重厚感が特徴の一曲だそうで、クラシックファンからは根強い人気があるそうです。
自動車のネーミングというのはなかなか難しいもので、特に世界的に展開を図る車種の場合はそれぞれの国や地域で、名称として用いる言葉がどういう意味を持っているのかを徹底的に事前調査する必要があります。その上で辞書に載っているような一般的な意味のほかにも、スラング(俗語)として別の意味がないかなどを調べ、商品名として適切か否かを最終的に判断しなければなりません。
もちろん商標登録の問題もあり、世に同名の商品が出ていなくとも先に他社が商標権を抑えていた場合には使うことが出来ません。各メーカーは使えそうな言葉を多く商標登録しているのが常で、どうしても特定の言葉を使いたい場合は権利を有しているライバルメーカーから名称を有償譲渡してもらうケースもあったりします。
日産・
フーガの場合、日本では伝統ある「セドリック」「グロリア」というブランドネームを廃して、事実上その後継という位置づけになる車種だったことから慎重なネーミング決定プロセスを経たことだろうと思います。海外ではインフィニティブランドとなるために
フーガという名称は日本市場向けと言えますが、漢字表記の“風雅”にも通じるこのネーミングはなかなか良い響きを持ち合わせているように思います。
ただ、全く新しいネーミングを一般に広く浸透させるのは、並大抵のことではありません。やはり年配の方にとって
日産の高級セダンといえば「セドリック」「グロリア」の印象が強いようで、いまだに
フーガと言ってもピンとこない人も少なくありません。
そこで、例えば
トヨタ自動車などが良く使う手法ですが、まずは伝統的なネームに対してサブネームとして名称を付与して1~2世代に渡って展開し、ある程度浸透したところでサブネームをメインメームと入れ替える、というマーケティング戦略もあります。近年の例では「コロナ」から発展して現在に至る「
プレミオ」がありますが、その流れで言うと「
カローラ アクシオが今後どのようにネーミング展開をしていくのかが気になるところ。
ちなみにこのようにサブネームを新型車で用いる場合には、市場への浸透を図る目的とは別にコスト的な制約をクリアするため、というケースも存在しています。車両名称をガラリと変えてしまうということは、全国にある販売会社に掲げてある看板も掛け替える必要があり、そのために要するコストは決して小さくありません。そこで既存の看板表記をそのままにしておくために「既存ブランドネーム+新規サブネーム」という組み合わせの車両名称を採用することも珍しくなく、公式には言われることこそありませんが過去にもコスト的な理由によって既存ブランドネームを残してサブネーム展開を図った車種というのがいくつか存在しています。
Posted at 2011/05/20 10:34:35 | |
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