
「
新型ルノー・メガーヌ(5ドアハッチバック)」をご紹介するエントリの後編。
今回発表された「
メガーヌ」ですが、前回の記事で車体サイズについてのスペックはご紹介しているので、今度はもう少し細かい部分のスペックを見ていきたいと思います。
とは言っても、テクニカルなスペックとしてはシンプルそのもの。
ボディスタイルは5ドアハッチバックのみ、組み合わされるエンジンは
日産自動車との共同開発で生まれた、排気量1,997ccのM4R型のみとなり、ミッションも唯一6速マニュアルモード付のCVTが組み合わされます。駆動方式はFF(前輪駆動)で、ステアリング位置は右ハンドルのみ。要するに、基本的なスペックについては全く選択の余地がないのです。

しかしバリエーションは2つの類別が用意されています。
ひとつは、グリカシオペという濃密なブルーグレー色をまとう写真を掲載した「プレミアムライン」。そしてもうひとつが鮮やかなオレンジ色、オランジュカイエンのボディカラーをペイントされた写真の「GTライン」です。
ネーミングからも想像できるように、前者は快適性を、後者はスポーツ性を重視したグレード。顔つきがそれぞれ異なり、当然ですが「GTライン」の方がアグレッシブな雰囲気を強くしています。しかし、それ以外ではリアディフューザーなどの備えはあるものの、ド派手な巨大エアロパーツをこれ見よがしに装備するようなこともなく。機能パーツであるタイヤとホイールが、「プレミアムライン」の205/55R16に対して、「GTライン」は205/50R17と若干ですが大径でファットなものにされている程度なのです。
内装に目を移すと、「プレミアムライン」は上品なベージュの配色、対する「GTライン」はちょっと硬派なブラック。フロントシートはサポート性をアップさせるためにサイドが張り出した形状のシートが奢られており、インテリアの雰囲気をスポーティにするのはもちろん、コーナーリング時などには高いサポート性でドライバーの求める走りをしっかり支えます。

また、メーターパネルも両者ではことなっており、「プレミアムライン」はデジタル・スピードメーターとタコメーターをはじめとしたアナログメーターを組み合わせたものを採用。これにはメーター外縁が光る仕掛けが組み込まれていて、走行状態によって光り方や色合いを変えてドライバーの注意を促すというデバイスにもなっています。一方の「GTライン」には、「
メガーヌ・ルノースポール」と同じタイプのアナログメーターを採用。これは否が応にもスポーツムードを高めてくれるポイントになります。
このように見ていくと、ふたつのグレードで装備差はあるものの、前述の通りエンジンやミッションは完全に共通。そうなると、早とちりな人は「単にタイヤやホイール、シートや内装色を変えただけの“なんちゃってスポーツ”か」と思われるかもしれません。ところがカタログの装備一覧を良く見ていただくとわかるのですが、「GTライン」のみの装備品として「GTライン専用シャシー」という記述があります。
果たしてシャシーを“装備品”と紹介して良いのかは置いておくとして、両者の決定的な違いがここにあります。元々、この「
新型ルノー・メガーヌ(5ドアハッチバック)」ではシャシーの性能が飛躍的に高められているのですが、さらに「GTライン」ではルノー・スポールがチューイングを施してスプリングレートやダンパー減衰力をセットアップ、全高もローダウンされたシャシーが用意されているのです。
先行発売された「
メガーヌ・ルノースポール」でも、自動車の基本骨格となるシャシーの素晴らしさには共感を覚えましたが、あそこまでスポーツ性能だけを追求したものではないでしょうが、こちらの5ドアハッチバックモデルのシャシーについても完成度が高いであろうことは容易に想像がつきます。今回は残念ながら実際に運転する機会はなかったので詳細はお伝えできませんが、ぜひ可能であれば販売店で両者を試乗して乗り比べてみることをお薦めします。
ここからは「プレミアムライン」と「GTライン」に共通する装備群について見ていきましょう。
エアコンやオーディオ、パワーウィンドゥなどは当たり前ですが標準装備。エアコンは左右独立温度調整式で、「プレミアムライン」ではセンターコンソール後端に後席乗員の上半身に冷風を送るエアベントも備わっています。
そしてヨーロッパ車らしい美点が、安全装備や運転を支える機能装備の充実ぶり。まずステアリングにはチルトのみならず前後方向の調整もできるテレスコピック機能を搭載。ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、EBD(横滑り防止装置)、EBD(電子制御制動力配分装置)などが標準装備。エアバッグは運転席&助手席はあたり前として、前席サイドやカーテンエアバッグも用意しており、シャシーやボディなどの基本的な安全性能の高さをさらにサポートしています。

さらに特記しておきたいのが、安全運転をサポートする利便性の高い機能装備群。
ヘッドライトはバイキセノン式で、かつコーナーリングに連動して進行方向を照らすAFS機能も有しています。このヘッドライト、ならびにワイパーにはオート機能も搭載。トンネルなどでも瞬時にライトを点灯してくれますが、薄暮時の点灯タイミングは適切と言えない場合もあるので、この点についてのみ注意しましょう。
ややボディサイズが大きくなりましたが、車庫入れなどの強い味方になるのがフロントソナー&バックソナー。これは「プレミアムライン」のみの装備となりますが、バックモニターまでは奢られていないものの、狭い場所での転回や車庫入れでは充分に強い味方になってくれます。
このように充実した装備を備え、かつオーナーの個性や嗜好にあわせて2つの選択肢が用意されている「
新型ルノー・メガーヌ(5ドアハッチバック)」。もっとも、マニュアルミッションの導入を望むコアなユーザーもいるでしょうが、まずは基本的な性能が高いこの2つのモデルで認知度とブランド力を日本において一層高めることこそ、
ルノーにとっては喫緊の課題であるはず。そしてこれらの課題はクリアされていくことで、ユーザーサービスの充実や向上など、既存のルノーファンにも多大なメリットがあるはずなのです。
最後に希望小売価格をご紹介すると、「プレミアムライン」が268万円、「GTライン」が275万円。前者は7色、後者には5色のボディカラーが設定されており、このボディカラーの豊富なラインナップも
ルノーの大きな美点です。
果たしてどちらがお薦めなのか?
これは、正直なところ今回は発表会のみだったので試乗が叶っていないので、今の段階ではなんとも言えません。ただ、間違いなく言えることは、自動車というものに少しだけでも趣味的な要素を覚える方であれば、ポピュラーカーであるCセグメントであっても「
新型ルノー・メガーヌ(5ドアハッチバック)」が新しいカーライフを楽しませてくれる存在になるであろうということ。

これは私自身がフランス車を所有し、最近になって初めてドイツ車のオーナーとなって感じたことでもあるのですが、古典的な価値観なのかもしれませんがドイツ車は質実剛健で道具としての出来ばえには文句のつけようがありませんが、あくまで縁の下の力持ち的にライフスタイルを支えてくれる存在であるという印象があります。出しゃばらなくて良い部分もありますが、所有しているだけでは何の不満もないかわりに、劇的な変化もカーライフスタイルに起こりません。その点、フランス車というのは判官贔屓があるかもしれませんが、どこかカーライフを明るくしてくれる存在であり、縁の下の力持ちではなく隣に並んでいる友達のような感覚があるのです。
自動車という商品を生産国やメーカーの拠点地域で語ることは少々時代錯誤な感じもあるのですが、やはり
ルノーにはフランスの血がしっかり流れていることだけは間違いないでしょう。