
誰もが“世界一のクルマ”と認める存在といえば、
ロールス-ロイスをおいて他には無いでしょう。
1906年に設立され、翌年に「シルバー・ゴースト」の愛称をつけられた40/50HPタイプは、その高い信頼性と動力性能、そして圧倒的な静粛&快適性能の高さから高い支持を集め、同社を世界のトップブランドに躍進させました。
貴族社会であり、階級制度が根付いているイギリスの自動車メーカー。その中で
ロールス-ロイスの顧客とは富裕層であり、さらにいえば上級車種についてはいわゆる“成り金”は相手にされず、王侯貴族など家柄や家業など素性の良さすら求められたと言います。
そんな
ロールス-ロイスのトップレンジに君臨しているのが「ファントム」。1925年に誕生、戦争をはさんで1950年にファントムIVとして復活、1990年にファントムVIが生産を中止するまで世界各国の上級顧客へとデリバリーされていきました。
このブランドネームは
ロールス-ロイスがBMW傘下になった現在も受け継がれていますが、個人的な印象としては現代のファントムは、より庶民化したように感じられます。東京都内では比較的見かける機会も多い現行のファントムに対して、1990年以前のファントムはまず目にすることもなく、並行輸入や中古車を新興企業のオーナーや結婚式場などで運用しているのを何度か見かけた程度です。
それもそのはず、全生産台数を見るとファントムIVは僅かに18台、ファントムVで516台、ファントムVIが374台と、3つのシリーズを合計しても世界中にデリバリーされた台数は1,000台に届いていないのですから。日本市場はファントムVIが正規ルートで19台の輸入実績があるそうですが、これではそうそうお目にかかれないのも当たり前という感じです。
今回は、そんな稀少で高貴なロールス-ロイス・ファントムのミニチュアカーを、コレクションに加えてみました。
全長6,045mm×全幅2,010mm×全高1,750mm、ホイールベースは3,650mmという堂々としたディメンション。V型8気筒・OHVで排気量6,230ccのガソリンエンジンが生み出すパワーとトルクは「必要にして充分」とされ、詳細な数値が公にされていなかったことは余りにも有名な話です。
ボディワークを担当したのは、名門コーチ・ビルダーであるマリナー・パーク・ウォード。職人が顧客の求めにも応じてハンドメイドで生み出すボディは、単に自動車という耐久消費財の枠をはるかに超えて、工芸品の領域に達しているといえるでしょう。もちろんそのデザインの秀逸さを前提として、細部の丁寧な造り込みには目を見張るものがあります。
まさしく高級車の中の高級車である
ロールス-ロイス。もちろんそこには顧客から寄せられる絶対的な信頼があるからこそ、高いブランド価値が生まれているのです。この点、どんなに体裁を見繕って高級を自称したところで、“高額ブランド”こそ誕生するでしょうが、一朝一夕には“本当の高級ブランド”というものは生まれないということは、日本の自動車メーカーによって図らずも実証された感もあったりします。
新たに就任したアメリカ大統領に祝賀電報を送り、その文面で「これで閣下もロールス-ロイスをご購入になられる資格を得られました」と記した、とか。ファントムの購入を希望する新興成長企業のオーナーなどに対して、「貴殿には●●(同社の格下車種)の方が宜しいかと存じます」と、事実上の販売拒否をしてみたり、とか。事実は否かは確かめる術もありませんが、そんな伝説も残っている気高い自動車メーカーが、往年の
ロールス-ロイスでした。
ただし、顧客に対する徹底した手厚いサービスも、
ロールス-ロイスらしい伝説を残しており、故障したオーナーの元へヘリコプターで駆けつけて修理した、などというストーリーはつとに有名です。
この話はオーバーにも思えますが、例えば、
ロールス-ロイスならではの顧客サービスのひとつに“専属運転手教習所”がありました。これは、
ロールス-ロイスのオーナーとなる人物が雇っている運転手に、
ロールス-ロイスの運転技法にはじまり、運転手としての礼儀作法やマナー、、
ロールス-ロイスの整備や維持についての技術などを教えるもので、ファントムを注文したオーナーは納車前に運転手をこの教習所に送り込むのが通例となっていたと言います。
こうした逸話を前時代的と言ってしまえばそれまでのことですが、やはり
ロールス-ロイスという自動車メーカーの偉大さに、改めて敬服せずにはいられない伝説の数々だと思います。
MiniCar|TRUE SCALE ロールスロイス ファントムVI 1966
Posted at 2011/06/19 19:45:04 | |
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