
土曜日の夜、なんとなく友人と連絡を取り合って、日曜日の予定が決まったのは22時を過ぎたころ。
結果的には事実上の徹夜状態で日付が変わり、夜も明ける前の午前4時前に撮影機材を社用車1号機(
日産フーガ 350XV)に積み込んで出発。足立区に住む友人を迎えに行き、その後は夜明けの首都高速から東名高速へとリレーして、ひたすらに西を目指して走ります。
9時をすぎて
名古屋市に到着、高速道路を下りた後は時間調整を兼ねた朝食のために「おかげ庵・篠原橋店」へ。「おかげ庵」とは名古屋に本拠を構える喫茶店のチェーンである
コメダ珈琲店が展開している、和テイストのメニューを中心とした店舗。
コメダ珈琲店は8月に関東と関西への出店を加速すると発表、関東地区については今年2月の時点で45店舗を展開していますが、2014年2月までに120~130店舗にまで拡大するという計画なのだそうです。その中には名古屋地区のみで僅かに5店舗しか展開していない「おかげ庵」は含まれていないような気もしますが、出来ればこちらも積極的に展開してほしいところです。
さて、名古屋ならではのモーニングセットで朝食を済ませた後は、今回の目的地へと移動。それは名古屋港の近くにある「
リニア・鉄道館」です。
この施設は
JR東海が運営している展示施設で、2011年3月14日にオープンしたばかりです。埼玉県にある
JR東日本の「
鉄道博物館」、
JR西日本が運営する大阪府の「
交通科学博物館」や京都府の「
梅小路蒸気機関車館」、そして福岡県にあり
JR九州も運営に関わっている「
九州鉄道記念館」と並ぶ、JR直系の鉄道展示施設です。

この日は好天に恵まれた三連休初日ということで、開館直後の時間でしたが入場は行列が出来るほどの盛況ぶり。まだオープンから半年しか経っていないこともあり、物珍しさも手伝うのか家族連れはもちろん、高齢者の団体が貸切バスで乗り付けるなどしていました。
入館料は大人1,000円。館内に入ると、まずは蒸気機関車の「C62」、次世代新幹線の開発で産まれた高速試験車両「300X(955形)」、そして超電導リニアモーターカーの大量輸送実験車両「MLX01-1」が出迎えてくれます。
1948年に誕生した「C62」、そして1995年生まれの「300X」と1996年生まれの「MLX01-1」。この全てに共通しているのは、鉄道の高速化に多大な貢献をした存在であるということです。「C62」、中でもここに展示されている17号機は、日本における蒸気機関車最高速度記録を保持しています。「300X」は1995年から2002年にかけて試験運用され、700系などにその技術は活かされました。この編成は1996年夏に、米原-京都間で鉄製のレールと車輪を用いた鉄道としての国内最高速度記録である443km/hをマークしています。そして「MLX01-1」は、言わずと知れたリニアモーターカーの実験車両で、超電導リニア方式の世界最高速度となる581km/hを記録しています。既に海外では営業運転が始まっているリニアモーターカーですが、日本でも
JR東海が2027年に首都圏と名古屋圏を先行開業させ、2045年を目標に大阪圏までの全線営業開始を目指しています。

更に館内のメイン展示コーナーへと足を進めると、そこには多くの実車が展示されています。
新幹線は初代の0系、100系、そして300系と、ドクターイエローこと922形のT3編成を展示。さらに往年の電車や気動車、蒸気機関車や旧型客車などを多数展示しています。その中でやはり人気を集めていたのは新幹線車両。私はこれまでに新幹線には僅かに5回ほどしか乗車した経験がありませんが、やはり子供の頃からテレビなどを通じて見慣れているせいもあるのか、白ベースに青いラインが入った東海道仕様の0系こそが“ザ・新幹線”という感じを覚えています。
また電車の中で目を惹いたのがクハ381形。カーブの多い区間でのスピードアップを図るべく、カーブ通過時に車体を傾ける「振子式」を初めて実用化した特急電車です。ただ、当時の「自然振子式」は揺り戻しの影響などで独特の乗車感覚があり、乗客の中には気分を悪くしたり、乗り物酔いの症状を起こす人も少なくなかったのだとか。これが381形の営業運転開始から40年を経た現在では、制御システムの進化などによって快適性も大幅に向上。全国のJR各社をはじめ、私鉄でも導入が進められ、スピードアップに大きく貢献しています。
今回、初めて振子式の始祖と言えるクハ381形を間近にして感じたのは、車体の絞り込みの強さ。振子式という独特のシステムを採用したがゆえでしょう、車体は特に正面から見るとわかりやすいのですが、下部が大きく絞り込まれた構造となっていました。

さて、更に展示エリアを奥に進んでいくと、そこには個人的にお目当てとしていた車両が待っていました。
オヤ31形。1949年に製造された古い車体ですが、最も長いものでは2005年まで車籍が残されていました。それというのもこの車両、営業運転に供されるのではなく、建築限界測定車という事業用の車両だったからです。
鉄道は線路上を走る車両が、沿線の架線柱や信号、標識などといった構造物、さらには当然ですが駅舎やホーム、橋梁にトンネルなどの建築物に決して接触することは許されるはずがありません。そのため、施工にあたっては事前設計の段階から建築限界という領域を設けて、この範囲内にはいかなる構造物や建築物も無いようにしています。そして実際にその建築限界が守られているのかを確認するための車両が、このオヤ31形。
一見すると古い客車のようですが、車両端には車体をグルリと囲むように矢羽根が設置されており、これを拡げて走行することで確認作業を行っていきます。つまりはこの矢羽根が建築限界そのものを表しているのですが、拡げた状態は他の鉄道車両に見られない特徴的な外観になります。この様を沢山の“かんざし”に見立て、低速で確認作業を行っている様子を“かんざしを沢山髪にさした花魁が歩いている”と表現して、「おいらん車」という愛称で親しまれてきました。
このように多彩な展示が見られた「
リニア・鉄道館」。これらの他にも、ユニークなところでは車掌業務を体験できるシミュレーターなどが、料金は別途ですが用意されています。
しかし正直なところ、期待には届かない内容の施設であったという印象を拭いきれません。車両展示も数は多いですが、なんとなく“置いてあるだけ”という感じが無きにしも非ずで、説明のパネル展示なども不十分な印象です。
私はこれまでに「
鉄道博物館」と「
交通科学博物館」を訪れた経験がありますが、正直に言ってより規模が小さく旧態化している「
交通科学博物館」の方が、見応えがあったという感想を持ちました。
今回はやや混雑していたことから駆け足での見学に留まったためかもしれませんが、もう少し展示内容の再考や工夫を凝らす努力が欲しい施設だと思っています。
この「
交通科学博物館」を見学した後は、三重県のいなべ市に移動。ここでも一件の鉄道系展示を見学して、14時すぎには帰路につくことに。
最後に東名高速は厚木IC手前付近で20kmほどの渋滞がありましたが、20時には東京に帰着。往復約1,000kmの日帰り紀行は無事に終了しました。
Posted at 2011/09/24 19:53:40 | |
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