
全日本ジムカーナ選手権・第8戦の取材出張も二日目。決勝が行われる日曜日は、朝早くから「
本庄サーキット」に入って取材活動を進めていきます。
シーズンの締めくくりとなる最終戦、チャンピオン争いを持ち越しているクラスも多く、パドックにはいつも以上に張りつめた空気が漂います。もちろん朝から晩までという訳ではなく、基本的にはジムカーナらしい和やかな雰囲気に包まれているのですが、自分が出走する時間が近づくにつれてそれぞれの選手が“戦闘モード”に入ったときの空気が、いつも以上に張りつめているという印象がありました。
今回、私は走行シーンの撮影は同行したプロカメラマン氏に任せて、人物やパドックの景色を主に撮っていました。その中で、例えば最初に掲載する写真などは、出走順が近づいてきて表情が“戦闘モード”に入ったところを捕らえることができたと思います。
被写体はN2クラスの朝山崇選手。2007年にヴィッツでN1クラスのチャンピオンを獲得し、翌年からDC2型インテグラにマシンをスイッチしてN2クラスへと移行しました。N2ではやや苦戦が続いたシーズンを過ごしていましたが、今季は好調な走りを披露。事実上の開幕戦となった名阪を制して幸先よくシーズンをスタートすると、終盤でも第6戦のもてぎ、第7戦のおおむたと連勝を飾って、チャンピオン争いの最終決戦となる本庄の地へと乗り込んできたのです。

ライバルに対して計算上は若干有利な条件にあった朝山選手。しかし、恐らくそんなことは関係なく、とにかく勝つことだけを考えて走りに臨んだのではないかと思います。
気になる結果は2本ともに1分25秒台を刻み、さらに2本目ではしっかりとタイムアップ。見事に今季4勝目を飾って自身2回目、N2クラス移行後は初めてとなる全日本チャンピオンの栄冠を獲得しました。
個人的には今を去ること4年前、2007年に朝山選手が初めての全日本タイトルを獲得した瞬間にも立ち会いました。この年はたまたまジムカーナの現場に足を運ぶ機会が多かったのですが、チャンピオンを決したのはやはり最終戦。舞台は九州の「
モビリティおおむた」。2本目でトップタイムを更新して会場が興奮と大歓声に包まれたことを記憶していますが、同じような場面を再び共有することが叶いました。
フィニッシュ後、当然ですが祝福の嵐が巻き起こります。ライバルも含めてチャンピオン獲得を祝う声、握手、そして抱き合って喜ぶ姿。それは見ていて、そして撮影していて、とても清々しいものでした。

このようなチャンピオンが決する歓喜の場面が次々と繰り広げられた最終戦でしたが、もうひとつこの現場に足を運んで良かったと思うことが。
今回は二人のジムカーナ界を代表するビッグネームが現役引退を発表し、全日本でのラストランとなったのです。そのうちのお一人がSCクラスにランサー・エボリューションⅩで参戦している谷森雅彦選手。
岡山県の谷森選手は1991年にジムカーナにデビュー。2002年にナンバー無しの競技専用車両で競われる改造車クラスへと転じ、同年から今年まで実に10年連続でシリーズチャンピオンを獲得してきました。チャンピオンの回数では更に上回る記録を保持している選手がいらっしゃいますが、連覇となると谷森選手がナンバーワン。常に勝つことを宿命として戦うことは想像を絶するタフさが要求されるかと思いますが、今年も第7戦のおおむたで最終戦を待たずしてチャンピオンを確定させて、大いなる金字塔を打ち立てました。
私自身もこれまでに何度も谷森選手の走りを撮影してきましたが、この日も群を抜く速さで圧勝。ラストランだけはしっかり撮影しましたが、全日本でこの素晴らしい走りが見納めになってしまうかと思うと、やはり残念な思いも拭いきれません。

そしてSCクラスと言えば、主流のランサー・エボリューションに対してシティで立ち向かっている西田竜治選手も忘れられない存在。今回はターンの少ないパワフルなマシンに有利なコース設定でしたが、ハンデをものともせずに堂々の2位表彰台を獲得して、谷森選手とのツーショットを飾りました。
そんな西田選手、表彰式に先立って行われた谷森選手の引退セレモニーでは、贈る言葉をかけながら男泣き。大いなる目標であり続けた選手の引退を、もっとも残念に思っているのは他ならぬ西田選手なのでしょう。
表彰台ではツーショットとなった谷森選手と西田選手。最後の全日本優勝コメントを残した谷森選手と、表彰台の上でガッチリ抱き合って互いを讃え合っている姿は感動的でした。
こうした場面に立ち会えたことを自分でも嬉しく思うと同時に、この感動をどのように広くお伝えすることが出来るのだろうかと自問自答するかたちにもなった全日本ジムカーナ選手権の最終戦。ジムカーナ史の1ページを刻む貴重な声、そして多くの写真という大収穫を得られた出張となりました。
無事に取材を終えた後は関越自動車道で東京まで。結局は帰り道も同行したカメラマン氏のご自宅までは運転をお任せ、非常に珍しいことなのですが自分の車で出張しながらほとんどステアリングを握らないという一泊二日になったのでした。
Posted at 2011/10/19 01:50:31 | |
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