
欧州の通貨危機など世界経済の先行きが不透明感を増している中、著しい発展を続けていた中国の市場について動向がますます注目を高めています。特に自動車産業にとっては成長幅の大きい市場であり、沿岸部を中心に急速な発展を見せるモータリゼーションは、日欧米の各自動車メーカーにとって重要度が増す一方。もっともあまりにも急速な経済発展には急ブレーキがかかる可能性も否定はできないわけで、各メーカーとしては来年度以降の市場展開については慎重な見方も拡がっているようです。
とは言うものの、ここ十年ほどの短い間に自動車の普及は爆発的とも言える勢いを見せた中国市場。2009年には販売台数が1364万台に達し、1042万台だったアメリカを抜いて世界一の市場規模を誇るに至っています。2010年についてはさらに躍進、中国の新車販売台数は1806万台にまで増加し、1158万台だったアメリカ、496万台だった日本に大きく差をつけて1位の座を守りました。
その市場構成をもう少し細かく見てみRと、2010年のメーカー別新車販売台数では1位が上海GMで103.9万台。2位が上海フォルクスワーゲンの100.1万台、3位は一汽フォルクスワーゲンで86.9万台となっています。これは中国汽車工業協会の調べた数字ですが、中国で外資による自動車生産については現地企業との合弁が必須であり、2004年に公布された「自動車産業発展政策」に基づき完成車などの製造企業では中国側の持分比率が50%以上と規定されています。さらに土地などは国家の所有となり、あくまでも外資には使用権のみが与えられるなど、ビジネスとしては難しい面が少なくない市場でもあるわけです。
この先についても勢いの強弱はあるでしょうが、まだまだ発展が見込まれる中国の自動車市場。もっとも、自動車の普及に伴ってインフラ整備の不足や消費が急増するであろう石油の供給問題、自動車の普及に比例して増加が避けられない交通事故の問題など、早急に手を打つ必要がある社会的な課題も少なくありません。
ただ、自動車産業界としてはこの市場を重視する方向が続くであろうことは間違いなく、昨今登場している新型車はデザインなどが中国市場を意識したものも多く見られるようになってきました。
ところで中国の自動車市場について、ちょっと興味深いニュースを見つけました。
●「排気量は1800cc以下に」公用車の購入制限強化 中国、公費天国批判に配慮
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msn産経ニュース(産経新聞) 2011年11月19日 17時40分
中国工業情報省が、政府や共産党の機関が購入する一般公用車について、エンジン排気量上限を1,800cc、価格を18万元(約220万円)と定めることにしたという内容です。従来は排気量2,000cc以下、価格は20万元以下となっていたようですが、国民から公費の無駄遣いを指摘する声が高まっていることに配慮しての決定なのだとか。実際にはこれまでも不正に高級車を購入するケースも多かったようで、この点についての監視も強化していく方針なのだそうです。
中国の特殊な政治事情を鑑みると、民衆の鬱憤を溜めすぎることは国家体制を維持する上でのリスクが高まることにつながりますから、ひとつの"ガス抜き"的な面がある政策なのかもしれません。ただ、公用車という需要は決して小さいものではないでしょうから、もしかすると日欧米の各自動車メーカーもこの決定に対応して、排気量1,800ccクラスのエンジンを搭載する車種を増やしてくることも予想されます。
近年の中国はビジネスで成功した人たちが欧米の高級車を好んで購入する傾向が強く、特に大型のセダン需要は年々高まりを見せているようです。その中で面白いのは、高級ミドルセダンのロングボディが人気を博していること。例えば写真はアウディですが、最上級のA8ではなく、ミドルレンジのA6でロングボディが用意されています。良く写真を見ると、トランクリッドのエンブレムが「A6L」となっており、ロングボディを現す"L"の表記を見て取ることができます。A6のロングボディは日本市場はもとより、ドイツ本国でも設定の無い仕様です。
アウディのA6、メルセデス-ベンツのEクラス、BMWの5シリーズといったクラスについて、ロングボディといえばイギリスではコーチビルダーの手によって一定の生産があったと記憶していますが、これはホテルの送迎などごく限られた需要のために手作りに近いかたちで生産されているもの。つまり、こうしたクラスのロングボディというのは、本当に中国市場独特の需要スタイルであると言えるでしょう。
この先、中国市場がどのような発展を見せていくことになるのか。その市場において日本の自動車メーカーはどのように戦略を立てて進んでいくのか。また中国資本のメーカーは、技術的な面などでどれだけの進歩を実現させることができるのか。
日本ではなかなか情報も少ない分野ではありますが、これからもこうした動向には注目していきたいと思っています。
Posted at 2011/12/02 23:48:44 | |
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