
今年もエキサイティングでチャレンジングなストリート・レースが開催された「マカオ・グランプリ」。58回目を数えるアジアで最も歴史と伝統のあるモータースポーツイベント、毎年11月の3周目はマカオ全体がレース一色に染まります。
近年のメインレースは、F3インターコンチネンタルカップとWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。特に後者はシリーズ最終戦と位置づけられており、今シーズンはここがドライバータイトルを懸けた最終決戦の舞台になりました。
タイトル争いの主役は、ランキングリーダーのイヴァン・ミューラー選手(写真・左)と、2番手で追うロブ・ハフ選手(写真・右)。ともに今シーズン圧倒的な強さを見せて早々にマニュファクチャラーズタイトルを手中におさめているシボレーのチームメイト同士であり、セアトから移籍して2年目のミューラー選手には連覇が、一方のハフ選手には悲願の初タイトルがかかっていました。
過去のデータを調べてみると、意外にもミューラー選手にはマカオでの優勝経験がありません。それどころかマカオを含めたストリート・レースではハフ選手が圧倒的に強さを見せており、今回のレースはその行方を占うのがとても難しいものでした。
いざフタを開けてみると、金曜日の予選ではハフ選手がトップタイムをマーク。実に3年連続のポールポジション獲得に成功して、レースウィークの主導権をガッチリ握ることに成功したのです。
そして迎えた日曜日の第1レース。ストリートレースということで抜き所の少ないマカオ、ゆえにポールポジションからのスタートは圧倒的に有利な立場となります。決勝スタート早々に中段グループではクラッシュが発生してセーフティカーが導入される"マカオらしい"展開での幕開け。もちろん先頭のハフ選手、そして2番手のミューラー選手にはスタート直後の混乱も他人事、リ・スタートしてからはミューラー選手が執拗なプッシュを続けていきます。
しかし中盤を過ぎて再びアクシデントによりセーフティカーの導入。9周を予定していたレースは規定により11周に延長されましたが、2回のセーフティカーによって実質的なバトルラップは限られてしまい、見事にハフ選手がミューラー選手を下して3年連続のポール・トゥ・ウィンを飾ることに成功しました。
続く第2レース、逆転チャンピオンに向けて「連勝あるのみ」という感じのハフ選手は3番手、対するミューラー選手は8番手グリッドからのスタート。この時点で両者の得点差は13へと縮まっていました。
スタンディング方式のスタートで勢い良く飛び出したのは4番手グリッドについていたBMWのトム・コロネル選手。巧みなロケットスタートでトップに立ってリスボアコーナーから山側区間へと入っていきます。その後ろにはセアトのミシェル・ニュケア選手がいましたが、これをパッシングが難しい山側区間でハフ選手がかわして2番手に浮上。さらに3周目ではコロネル選手をも捉えて、遂にトップに立つことに成功しました。
しかし、対するミューラー選手も着々とポジションを上げてきて、中盤のセーフティカー導入時点では4番手につけていました。このままの順位でフィニッシュすると得点は同点になり、かつ優勝回数でもミューラー選手とハフ選手が並ぶ結果になり、規則によって2位獲得回数の多いミューラー選手がチャンピオン、という流れになっていました。
つまり、そんなに無理をしなくてもミューラー選手にチャンピオンの称号が与えられることは、チームからの無線などで本人も承知していた筈です。しかしこれで黙って終わらないのがWTCCの面白さ。リ・スタート後、前を行くニュケア選手に容赦なく襲いかかり、8周目では先行するに至らなかったものの、9周目ではしっかりニュケア選手を捉えてマンダリンコーナーで3番手に浮上。
結果、ハフ選手が連勝を飾ったもののミューラー選手も3位表彰台を獲得したことから、しっかり得点差をつけてミューラー選手が2年連続3回目のWTCCドライバーチャンピオンに輝きました。3回のタイトルはBMWのアンディ・プリオール選手に並ぶ最多タイであり、まさにシボレーとミューラー選手の黄金期を象徴する称号であると言えるでしょう。
残念ながら日本のモータースポーツメディアは全く関心をもっていないために、WTCCに関する報道はほとんどありません。しかしインターネットが普及しており、かつWTCCそのものが積極的な情報発信を行っているので、ちょっと興味があればどのようなレースなのかを知ることは決して難しくありません。また、日本でも衛星放送でレースの中継は見ることが出来ますので、ぜひ一度はWTCCの迫力と世界最高峰のテクニックの応酬を見ていただきたいと思います。
Posted at 2011/12/03 22:10:32 | |
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