
【2012年1月1日 14時45分/広島県福山市内海町】
午前3時30分の東京出発から、ここまで事実上の徹夜状態でやって来ている中国地方周遊の一日目。当初予定でも初日は疲れを早々に癒すために早めのホテルチェックインを予定していますが、もう一カ所だけ見ておきたいところがあるので、そちらへと車を走らせます。
人口46万人の福山市、ここも近年はご多分に漏れず、近隣自治体との合併を行ってきました。そんな中のひとつが2003年2月に編入された内海町。
内海町は瀬戸内に浮かぶ田島と横島から成る離島自治体でした。ただ、離島といっても本土はまさしく目と鼻の先という感じの近さゆえ、住民にとっては本土と島をむすぶ橋の建設が永年にわたる悲願だったのです。
その願いはバブル景気にも後押しされるような形で叶い、1989(平成元)年に全長832mの内海大橋が完成、住民の利便性が格段に向上するのみならず、救急医療などの面でも安心度が高まりました。
この内海大橋、その構造はとても凝ったものとなっています。なにより大きな特徴は橋が本土と島の間に一直線に架けられているのではなく、本土側から見ると大きく海上で右カーブを描きながら島へとアプローチしている点にあります。
実際にこの橋を下から見上げてみると、その壮大で優美な佇まいには思わず息をのんでしまうほど。橋そのものはパールスカイにペイントされており、瀬戸内の風光明媚な景色に対して違和感無く溶け込んでいます。
ところでこの内海大橋、なぜカーブを伴う架橋となったのか、その直接的な理由を説明する内容は短時間のウェブ検索では見つけられませんでした。
ただ、現地でも思ったのですが、この橋のすぐ近くには
常石造船株式会社という大規模な造船所があり、訪れた際にも何隻もの大型船がドッグ入りしていました。
察するに本土と島の間には航路が設定されているのではないかと思います。基本的には自由に行き来出来る海上交通ですが、このように狭い場所では明確な航路が指定されているものですが、おそらくは東行きと西行きの航路がここを通っているのでしょう。
大型船の通行という面で言えば、橋はその障害になり得ます。しかし、橋そのものが直線的であっても高さ方向の障害については、橋の両端部で例えば大阪の木津川に架かる
千本松大橋のように、アプローチをループ状にするという解決策が考えられます。
ですが、もしも幅方向の障害についての問題があるとしたらどうか。大型船の航行を想像するときに、余裕のある深度が必要とされることから、実際に目に見える海峡部の幅よりも有効幅は狭いことが考えられます。そこに直線的な架橋をすると、橋の支柱が障害になり得ます。そこで橋そのものをカーブさせて沿岸の地形も活かして、航路の幅を確保したのではないかと予想するところです。
いずれにしても全国的に見ても珍しい形状の内海大橋。私にとっては
2008年12月31日付のエントリでご紹介した天草のハイヤ大橋に次いで、興味深い“橋見物”となりました。
■追記
改めてネット上で内海大橋のカーブについて、その理由をリサーチしてみました。すると、次のような内容を見つけることができました。
●き裂方向別岩盤強度試験について(内海大橋)
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独立行政法人 科学技術振興機構
内海大橋の架橋に関して、海底の岩礁を基礎として利用する方式で橋脚を造り上げるために実施された横方向載荷試験の結果についての論文がありました。著者は架橋を管轄する広島県庁土木建築部と広島県福山土木建築事務所の方ですから、どうやら元々海底にあった岩礁を橋脚の基礎とするために、その位置関係から橋はカーブする形で架けられた、というのが本当の理由ということのようです。
なお、さらに言えば岩礁を利用した理由については、この辺りの海流が複雑であるということもあるようです。ゼロの状態から基礎を作るには海流が邪魔をするので、元々あった頑強な岩礁を利用した方が工事をするうえで安全性が高く、効率にも優れるという判断があったようです。
ちなみにこの辺りは源平の時代から交通の要所だったようで、岩礁をはさんだ狭い海峡は軍事的にも重要な場所と位置づけられていたとのことです。
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Posted at 2012/01/05 22:38:14 | |
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2012年 中国地方 | 日記