
いわゆる“はたらくくるま”にもいろいろとありますが、安心・安全な市民生活を守ってくれる頼もしい存在の代表格とも言えるのが「消防自動車」。
日本に初めて消防自動車がお目見えしたのは1911(明治44)年、大阪市が輸入したもの。同年、大阪市内で初の近代的な消防署として設立された東消防署に配備され、馬牽き蒸気ポンプ車とともに火災から市民を守っていました。ちなみにこの年、東京では麻布に「快進社自働車工場」が設立され、国産自動車が産声をあげようとしていました。
消防車の配備については、国が定める「消防力の基準」に沿って、地域の人口や広さ、産業構造などに応じて決められています。例えば大規模な工業地帯やコンビナート施設などがある地方には化学火災に対応する装備が義務づけられてますし、高速道路が通っている地域ならば救助工作車の充実も求められたりするわけです。消防は警察と異なり、市町村が基準の単位。市の消防本部、町村であれば広域連合による消防組合などが存在していますが、東京の場合は
東京消防庁が23区を管轄するのみならず、稲城市と離島を除く市町村からも消防業務の委託を受けています。
消防車についてはいくつかの専門メーカーがありますが、国の定める基準に則した車両の場合は補助金の対象となります。全国の消防車の大半は基準の範囲内の車両ですが、その中でも事実上はワンオフと言えるものが多く、細かい使い勝手や装備器材の搭載などについて地域の独自性を見ることができます。道の入り組んだ都市部や城下町では小型で機動性に優れる車両が重宝されますし、一方で北海道のように広大な地域では車体は大きくとも資器材や水などの搭載量を多くするという傾向がみられます。
一方では、完全に地域での使い勝手を追求して作られた“独自仕様”も存在します。これは各消防本部や組合の予算、つまり市町村予算のみで作られるもので、財政的な負担は小さくありませんが、より地域事情を反映させた使い勝手の良い車両を導入することができます。
そして、こうした補助金対象の有無はあるにしても、予算を組んで導入される車両のほかには、寄贈車両という存在もあります。
●消防学校に赤いBMW 千葉市消防局に寄贈
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MSN産経ニュース(産経新聞) 2012年6月4日 21時38分
ニュースで伝えられたのは、輸入車ディーラーが地元の消防に寄贈した一例です。今回は事務的な移動に使われる車両ということで、赤いボディに本部名称表記こそあるものの、赤色警光灯やサイレンなどは備えておらず、8ナンバーの緊急自動車登録はされていない模様です。
消防車というとポンプ車やはしご車が真っ先に思い浮かぶところですが、ご承知の通りそのほかにも色々な種類があります。阪神・淡路大震災以降は救助工作車や支援車の充実化が進み、地下鉄サリン事件以降ではNBC(核・生物・化学)対策車両も増えてきています。
こうした車両のほかに、指揮車や広報車、査察車といった縁の下の力持ち的な存在もあり、これらはクロスカントリーSUVやミニバン、ワンボックスバン、ライトバン、マイクロバスなど、ベースもさまざまです。そんな中にはセダンやハッチバックといった乗用車ベースのものも存在しており、日頃は事務的な連絡業務や署員の移動に、火災などの発生時には幹部の臨場や連絡などに使われたりしています。
もちろん多くの車両が緊急自動車登録をされており、赤いボディに赤色警光灯やサイレンを備えています。一時期は使い勝手やスペースユーティリティで有利なミニバンやSUVが多くを占めましたが、最近になって特にハイブリッドカーの導入例が増えているようです。
さて、消防車は法律で車体色を朱色と定められているのですが、実は色コードが指定されているわけでもないので、車体によって違いもあるわけです。ポンプ車などでも艤装・製造メーカーによって微妙な色合いの違いはありますし、消防本部によっては独自に蛍光色を採用しているところもあったりします。
そして、最近になって目立ってきたのが、今回のニュースにもあるような乗用車ベースの車両では、メーカー純正色をそのまま使っているというパターンです。カタログに載っているカラーバリエーションの中から、市販車と同じ赤色系のカラーを選んでいるというもので、ゆえに赤色と言っても明暗さまざまですし、メタリックなどが入っている場合も多いようです。このため、消防署の車庫でポンプ車などと並んでいると、若干の違和感を覚えることも無きにしも非ず……。
写真を掲載した三菱ディアマンテをベースとした消防車は、きちんと消防車としての赤色をペイントされています。こうした“全塗装”にはコストが当然かかりますから、自治体の財政事情が厳しい昨今では、コストダウンの一貫としての純正色採用というのが本当のところでしょう。
Posted at 2012/06/24 15:33:44 | |
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