
昨今の自動車市場では、新興国の顕著な伸びが何かと話題。その筆頭は中国とインドあたりになりますが、
総務省・
統計局の発表資料によると、2007年の数字で4輪以上の保有台数は中国が4,250万台(うち乗用車が2,916.6万台)、インドは1,695.4万台(うち乗用車が1,202.1万台)となっています。
これに対してアメリカは桁が増えて自動車保有台数が2億4726.5万台(うち乗用車1億2,593.3万台)。主要先進国が一通り掲載されている資料において、日本はアメリカに次ぐ7,602.4万台(うち乗用車4,146.9万台)という規模を有しています。
これだけの車が存在している訳ですから街中に一歩出ると確実に視界には自動車が入ってきます。しかし、時代の移り変わりとともに、見かけなくなったものもあります。
●フェンダーミラー車はどこへ? 優れた安全性も「絶滅寸前」に
-
SankeiBiz 2011年3月7日 7時00分
今では法人タクシーやハイヤーなど、ごく一部の車にしか装備されなくなったフェンダーミラー。その名の通り、フロントフェンダーに備わる後写鏡で、長い足の先にミラーが備わっています。近年ではSUV系の車種に似たような小さいミラーが備わりますが、あちらは車両の直前直下やフロントタイヤ周辺を確認するためのもの。対して、ここで言うフェンダーミラーとは、今では一般的なドアミラーと同様に、車両の後方や側面全体を視認するための装備です。
元々、日本では保安基準によってドアミラーは認可されていませんでした。アメリカ車などで輸入された個体でも、フェンダーミラーに日本で改造されていたものが街を走っていた記憶があります。尤も、1970年代の終わりから'80年代初頭の記憶をたどると、外国車についてはドアミラーのままで日本を走っていたこともあったのではないかと思います。これは明確な記憶ではないですが、例えばスピードリミッター装置も日本車は装着していますが輸入車には装着義務が無いように、もしかすると外国製車両については認められていたのかもしれません。
いずれにしても日本製の車については全てがフェンダーミラーでした。それがセダンであろうが、例えスタイリッシュなクーペやスポーツモデルであったとしても。もちろん全てが同じ形であるわけはなく、例えばスポーツ色の濃いものには流線型や砲弾型のデザインを採用したフェンダーミラーが用意されていました。
また上級モデルでは電動リモコンで角度調整が出来たり、鏡面の曇りや水滴を除去する熱線ヒーターが組み込まれていたものもあります。さらにユニークなものになると、初代の日産レパード/レパードTR-X(トライ・エックス)などでは、非常に小さなミラー用のワイパーまで備わるというケースもありました。
こうして工夫も凝らされていたフェンダーミラーですが、自動車は国際商品であるために規格の統一化が進められていきます。
1983(昭和58)年3月18日、時の運輸省は「通達7. 自車第186号」を出し、後写鏡の取付位置について運転席からの視野範囲を右側55度、左側75度と定め、無理な姿勢を取らずに後方確認が出来れば良いとされました。これによって晴れてドアミラーは国産車においても解禁となり、その第一号は日産パルサーEXA(エクサ)でした。
ちなみにドアミラー解禁の要因について、先にリンクを貼った記事では「外圧による」としていますが、私自身はこの表現に少々違和感を覚えます。
色々と調べてみたのですが、この当時に運輸省に対してドアミラーの解禁を要求していたのはアメリカ政府や海外の自動車メーカー、日本の輸入車業界が確かに中心でしたが、日本の自動車メーカーも同様に解禁を求めていたのです。
当時は日米貿易摩擦の悪化が国際問題化しており、特に自動車はアメリカにとって貿易赤字の象徴たる存在でした。そこで日本独自の規制は「非関税障壁」にあたると声をあげていたわけです。しかし同時に日本のメーカーにとっても、日本市場向けだけにフェンダーミラーを用意することは生産コストや効率の面からいって決して好ましい状況ではありませんでした。前述のように車種によってデザインされたミラーを用意する負担は小さくなく、輸出向けでは当然全車に備わるドアミラーに一本化出来ることを望んだであろうと想像できます。
ドアミラーが解禁されると、一気に日本車はドアミラー化が進みました。
解禁から数年は上級セダンなどではフェンダーミラーが標準装備でドアミラーをオプション設定とする車種もありましたが、自然にドアミラーが標準化されフェンダーミラーはオプション設定へと立場を逆転。そして最終的にはフェンダーミラーをメーカーとして設定しないことが当たり前になり、今では法人タクシーやハイヤーなど運転手付のショーファードリブン要素が強い一部の車種にのみ残されています。
タクシーやハイヤーとともに長くフェンダーミラーを採用し続けてきたのがパトロールカーと教習車ですが、これらは徐々にドアミラー化が進んでいます。
今では運転免許を持っていても、フェンダーミラーの車を運転したことが無いという方も珍しくはないでしょう。せいぜい教習車で乗ったことがある、という程度でしょうか。
かく言う私自身も、仕事柄いろいろな車を運転する機会がありますが、フェンダーミラーとなるともう15年くらい乗った記憶がありません。個人的にはフェンダーミラーは走行中の後方確認時に視線移動が少なくて済むというメリットがあることを承知の上で、ドアミラーを支持します。やはり鏡面の大きさと、後続車などとの距離感を掴みやすいこと、より大きく明確に後方の様子が写し出されることがメリットだと感じています。
そういえば1985(昭和60)年にデビューした7代目の日産スカイラインには、ユニークな装備がありました。
名付けて「アンシンメトリーミラー」。なんと右側には普通のドアミラー、左側はドアと通常のフェンダーミラー位置の中間くらいのポジションにフェンダーミラーが備わっているという左右非対称のレイアウトになっているものでした。安全性とスタイリングを両立させた、とメーカーは謳っていましたが、想像するだけでもお判りの通り決して格好良いものではなく。私は今も保管してあるカタログの装備紹介写真で見た以外、一度として実車にはお目にかかれませんでした。
なお、この「アンシンメトリーミラー」という名称は、その後のセドリックなどの営業車に備わる装備の名前に受け継がれました。ただし今度は左右の取付位置が異なるのではなく、一般的な位置に備わるフェンダーミラーの左右で鏡面の大きさが異なるというものでした。左側が大きめの鏡面を有しているので、都心部などでは左側方から接近してくる二輪車などの発見が容易になり、タクシー用途では安全性の向上に大きく貢献したのではないかと思います。
Posted at 2011/03/10 21:44:15 | |
トラックバック(1) |
自動車全般 | 日記