
6月の下旬にドライブガイドのネタ収集や写真素材撮影を目的として訪れた北陸。
金沢市に2泊3日する行程で、市内観光を中心に
石川県のみならず、
福井県と
富山県も巡りました。
各地ではいくつかの観光スポットに立ち寄りつつ、地元に根付いている味も楽しんできました。食についてはいわゆる“定番”のお店やエリアよりも、ごく普通に地元の方々が利用しているような店を優先的にチョイスしていますが、コストパフォーマンスの高い美味しい食事を各地でいただくことができました。
この2泊3日の北陸紀行、改めてその行程や訪問先を整理して、ご紹介していこうと思います。
■東京→敦賀、570kmのドライブ

私が住んでいるのは
東京都の
町田市。最寄りのインターチェンジは東名高速道路の横浜町田IC。まずはここから高速道路に入って、西を目指して走ります。
一宮JCTからは名神高速道路にリレー、さらに進んで米原JCTからは北陸道へと車を進めていきます。そして敦賀ICで流出して一般道へ。ここまでの道のりは約570km、所要時間は8時間半くらいになるでしょうか。
北陸を巡る今回の旅、まずは
福井県からその行程をスタートさせるプランを構築しています。
敦賀市内からは国道27号を西に進み、
小浜市を目指していきます。
■小浜・夏の風物詩を巡る朝
小浜市をまず最初の目的地としたのには大きな理由があります。
この町、実は隠れた(?)“和スイーツの宝庫”。以前は当地を冬に訪れ、冬場だけの季節限定販売となっている「丁稚ようかん」を買い求めたことがあります。冬の季節限定があるのですから、当然その逆に夏の季節限定も存在しています。それが“葛まんじゅう”なのです。
若狭地方は良質な葛の産地として有名です。秋の七草のひとつでもある葛は、その根からデンプンを得ることができます。これが“葛粉”と呼ばれるものですが、お菓子の材料として使われるほかにも、薬効があることから「葛根湯」などでもお馴染みでしょう。
そして、和菓子で言えばなんといっても「葛まんじゅう」に尽きます。地元でとれる良質な葛粉を使った「葛まんじゅう」は当地の名物であり、夏の時期は店頭で冷水に浸けて売られている模様が、ひとつの風物詩にもなっています。
そこでまず訪れたのは、「
菓子司 木屋傳」というお店。
こちらには朝9時の開店とほぼ同じタイミングで訪れたのですが、ちょっと訪問が早すぎたのか葛まんじゅうの用意はまだ整っていませんでした。おもむろに運ばれてきたのは出来立てほやほやの葛まんじゅう。これを冷水で冷やすわけですが、数分が経っていただいたものはまだ冷えきっていない温かさの残るものでした。
しかし、これはこれでなかなかの美味しさ。完全に固まりきっていない葛はなめらかな食感を楽しめますし、中の餡も温かさが残っているので上品な甘みがより強調されて、朝一番の訪問でなければ味わえない美味しさを楽しめました。
【菓子司 木屋傳】 福井県小浜市小浜白鬚42 電話番号 0770-52-0565 営業時間 9:00 ~ 19:00 定 休 日 不定休 駐 車 場 なし |
■名店の誉れに恥じない美味しさ

北陸紀行初日の朝は、
小浜市で和菓子屋さんをハシゴすることから始まりました。
2件目として訪れたのは「
御菓子処 伊勢屋」。こちらは個人的な印象として、市内ではもっとも全国にその名を知られている感じがしています。私自身もこの店を訪れるのは今回が初めてではなく、初めての福井県訪問となった
2008年12月27日にも訪れています。
同店は朝8時からの営業。既に開店から1時間半以上が経っていたためか、店内は活気に満ちていて先客もいらっしゃいました。店舗に隣接する駐車場にも、朝早いというのに関西方面のナンバーをつけた車が2台ほど停められています。
店内では、まさに夏の小浜を感じさせる光景が待っていました。地下30メートルから湧きだしている冷水に浸かる、お猪口に入れられた葛まんじゅう。これがガラスの器に盛られて供されるのですが、見た目だけでも涼を感じさせてくれます。
気になる味ですが、これはもうスーパーマーケットなどで売られている量産品の葛まんじゅうとは全くの別物です。葛そのものの滑らかさが全く違い、如何に量産品には色々な添加物が多く入っているのかを感じさせるほどです。
ここではせっかくの機会なので3つを注文してみましたが、上品な甘さとのど越しの良さが相まって、ペロリといただいてしまいました。
【御菓子処 伊勢屋】 福井県小浜市一番町1-6 電話番号 0770-52-0766 営業時間 8:00 ~ 19:00 定 休 日 水曜日 駐 車 場 専用駐車場あり |
■地域に愛されるカフェ・スタイルでいただく葛まんじゅう

和菓子屋さんのハシゴ、その締めくくりとして選んだのが「
志保重」。こちらの西津店はスーパーマーケットに隣接しているのですが、3卓の喫茶コーナーも設けられてちょっとした一休みに最適な感じです。
こちらの店頭では特に冷水に浸けるような演出はありませんでしたが、短い時間ながら落ち着いた中で葛まんじゅうを楽しめるという点では、今回訪れた店の中でナンバーワンの環境です。
注文した葛まんじゅうは、白いお皿に載せられてやってきました。
食べてみると、たしかに他の2店とは違う個性を感じられます。というか、同じ葛まんじゅうでありながら、訪れた3店それぞれに独自性を見いだすことができました。もちろん上質な葛を使っていることは全ての店に共通。その上で葛の硬さ、あとは餡の甘さの違い、これらの組み合わせでそれぞれの個性が出ているように思えます。
こちらの「
志保重」さん、その点でいえば子供からお年寄りまで幅広い層に好まれそうなスタンダードな味わいでした。葛は比較的しっかりした歯ごたえで、餡もやや甘め。しかし、お店を訪れたときには、おそらく徒歩で来られたのであろう近所のご家族が先客としていらっしゃったことからもわかるように、地域に根付いた店として愛されているようです。ならば、こうした方向性も納得のいくもの。
ちなみに今回いただいた3店、その全てで葛自体には甘さがつけられていませんでした。ここが市販量産品との決定的な違いだと思います。甘さを求める向きには物足りなさもあるでしょうが、だからこそ上質な葛そのものの美味しさ、そして餡の美味しさを楽しめるのだろうと思いました。
【志保重 西津店】 福井県小浜市雲浜1-8 電話番号 0770-53-0599 営業時間 10:00 ~ 20:00 定 休 日 不定休 (年2回) 駐 車 場 ママーストアー西津店を利用可 |
■百聞は一食にしかず
葛まんじゅうを堪能した後は、国道162号で海沿いを走り、三方から国道27号に移って来た道を
敦賀市へと引き返します。
なお国道162号沿いの三方湖周辺では梅の栽培が盛ん。日本海側最大の梅産地として知られており、その栽培は天保年間から始まっているそうです。この時も青梅の収穫を行っている様子を沿道に見て取れました。

さて、
敦賀市に到着したら時刻はお昼どき。この町では名物の「ソースかつ丼」をランチにいただいてみることにします。
やって来たのは「
敦賀ヨーロッパ軒」の本店。元々は
福井市にある「
ヨーロッパ軒」の暖簾分けで生まれたお店だそうですが、開店したのは1939(昭和14)年と古い話で、既に長く独自の歴史を刻んでいるお店です。
街中にあるお店は、懐かしい感じの“洋食屋さん”そのものといった感じ。そう、レストランではなくて“洋食屋さん”。決してべらぼうに高級ではないのですが、家族で夕食に出かけるにしても、よそ行きの服でちょっとだけ身なりを整えて行く、という昭和の高度成長期にみられた風景を思い起こさせる雰囲気のお店です。
店内はやはり賑わっていました。ただ、観光客と地元客の比率が3:7くらいで、地元の方が圧倒的に多かったのは意外といえば意外。家族連れはもちろん、仕事途中のサラリーマンや作業員風の方々も、お昼を気軽に食べにやってくる地元密着型のお店であることを再認識した次第です。
注文したのは「かつ丼セット(1,050円)」。メニューを見ても“ソース”という前置きはなく、ここで“かつ丼”と言えば“=ソース”なのです。ちなみに単品では840円、味噌汁とサラダがついて1,050円というお値段です。
正直に言えば、これまでにソースかつ丼なるものはあちこちで食した経験がありますが、私はあまり好きではないのです。単にカツをご飯の上に載せてソースをかけただけ、というものが多かったように思えて、この時も“かつ丼”を注文しようか最後まで迷ったくらいなのです。
ゆえにあくまでも“せっかく来たんだから頼んでおくか”という程度で、期待はほとんどしていませんでした。

やがれ運ばれてきた“かつ丼”とご対面・・・。
ボリュームが予想以上・・・。大盛りではなく普通のサイズですが、厚手のカツが3枚も載せられています。丼も決して上げ底ではなく、ご飯の量もなかなかのもの。女性など食の細い方は「ミニかつ丼(525円」を注文した方が賢明に思えます。
そして一口いただいてみると・・・、美味しい!! ソースはいわゆる“お店秘伝の味”という感じで、いろいろなものを調合したオリジナルであることが明白。一般的なウスターやトンカツソースとは全く異なり、甘辛い感じの味わいがご飯にも最適で食が進みます。
これはやられました・・・。やはり百聞は一見に、いや“百聞は一食にしかず”です。自分の先入観を恥じるとともに、ここにはまた食べに来たいと思った次第です。
【敦賀ヨーロッパ軒・本店】 福井県敦賀市相生町2-7 電話番号 0770-22-1468 営業時間 11:00 ~ 20:00 定 休 日 月曜日、第2・3火曜日(祝日は営業) 駐 車 場 専用駐車場あり |
●ルートマップ|町田 → 菓子司 木屋傳 → 御菓子処 伊勢屋 → 志保重 → 敦賀ヨーロッパ軒・本店