「私のメモワール」
私の「自動車趣味の変遷」をお知り頂きたい・・・との
個人的な「承認欲求」で始めた
過去の記述を再掲載するヴァージョンです。
今回は、
今から10年前の(2017年4月7日現在)
2007年07月16日のmixi日記に書いた
「シビック・タイプR試乗」。
「フィット」にその役割をバトンタッチする形で
長らく日本市場から撤退していた「シビック」車。
今回、日本市場に「シビック ブランド」が復活すると同時に、
栄光の「タイプR」も日本市場に復帰するタイミングに合わせ、
2007年当時の「タイプR」を懐かしむ意味でも
その時の印象をそのまま備忘録的に掲載します。
写真含め、当時の原文まま転載いたします。
シビック・タイプR試乗
ホンダ・シビック・タイプRは
すっかり「ミニバン・メーカー」になっていた観のある、このメーカーの意地の一発で、
今回試乗の機会を得た。
それは、「硬派なFFスポーツ」だった。
とにかく「エンジンの存在感が際立つクルマ」である事は、S2000の時と同様。
専用設計エンジンのS2000は、
専用設計ならではの良さもあるが、
反面、エンジニアが凝りすぎて、
レーシング・エンジン・モドキになってしまう危険性もあった。
レーシング・エンジンみたいな物を日常で使うのは、様々な点で不都合が生じる。
レーシング・エンジンで培った技術を市販車にフィードバックするのは良いが、
使う領域の違いや、レース毎のオーバーホールを前提とする発動機とは
スタンスが違いすぎるのも事実。
初期のS2000のエンジンは
「2Lで250馬力を絞り出す目標」のために、
フリクション・ロスを極限まで低めるべく、
ピストンリング等をレース用に近いものを使ったため、
耐久性や密閉性に難が生じ、
オイル上がりからオイル消費量が多大となった。
また、トランスミッションのフリクションを最小にするため、
規定のミッションオイル量が通常の半分であったりしたため、
冷間時のシフトレバーの動作の自粛を要求されるなど、
コンディション維持には特別な配慮が要った。
要は出力を絞り出すため、ギリギリまで追い込んで造ったエンジンは、
余裕が無く、ガラス細工のような繊細さを持つという事。
その点、欧州メーカーの造るスポーツカーは、
いくらスーパー・スポーツであっても、
公道用には、使い易い性格や長期の耐久性を持たせて設計し、世に出してくる。
その点では、今回のシビック・タイプRは
市販車エンジンベースのチューンなので
耐久性や初期性能の維持管理は、
一からの専用設計エンジンのS2000より良いかもしれない。
ホンダ・エンジンの真骨頂、
8400rpmのレッドゾーン入り口までそれこそ「バーン」と快音を放ち、
一気に吹け上がる。
特にVTECのハイカム側に切り替わる5800rpmを越えてからは、
二段ロケットさながら、
更なる上昇曲線を描くように、パワフルで息の長い加速を見せる。
「ホンダはエンジン屋」という言葉が今更ながらに、私の脳裏に甘美に響く。
過日、ノーマル・シビックのハイブリッド車を試乗しているが、
当然ながら、その時感心した、広い室内やトランク、
広大な目の前のインパネ上面やそのデザインは基本的に共通で、
本来地味な外装は、空力パーツで随分かっこよくなっており、
「玄人好みのスポーティー」な化粧直しは好ましく感じた。
広いリアシートに4枚のドア、広大なトランクを持つこのスポーツセダンは
実用性との両立において、
家族持ちのスポーツ・ドライヴィング好きには打ってつけの一台となり得るのだろうか?
実際、形こそ「ファミリー・セダン」を呈してはいるが、
その中身は、歯ごたえのある、超硬派の「FFスポーツ」だったのだ。
近くの駅の送り迎え程度の短時間ならリアシートに人を乗せる事は出来ようが、
長時間、同乗者を、特にリアシートに乗せるのは、
よほど「揺れ」に強い、理解あるパートナーでないと不満が出るだろう。
タイプRのバッジを着けているとはいえ、
ノーマルの市販車でここまで固めていいの・・・?と思ってしまったが、
ボディ剛性が欧州車並みに高く、
ロールしないまま(本当はロールしているのだろうが・・)曲がってゆく俊敏さは、
「キビキビ感をスポーティーと感じる」今の私にとって大変好ましいものではある。
FFでスポーツカーらしいハンドリングを目指すと、リアのサスペンションがカギとなる。
リアをがっちりと安定(固める)してやって初めて、
FFでありながらFRのようなノーズの入り方のできるグッドハンドリング・カーとなるのだ。
私自身、
過去にアルファ156のV6モデルを
ユニコルセ社の車高調整式スポーツサスペンションに換装して、
ポルシェのようなハンドリングを持つ「FFスポーツ」に仕上げよう、とした事があるが、
「リア・サスのセッティング」が一番大事だったことを思い出す。
結局「ポルシェのような・・・」は夢に終わったが、
最終的にその中でもベストセッティングが決まった時は、
リア・サスのジオメトリー変化を嫌い、ボディ取り付け部のゴムブッシュの換わりに
レース用のギチギチのピロポールを使っていたほど「固めて」いたのである。
この「FFスポーツ」化したアルファ156で、
家族をリアシートに乗せて長距離を走ったことがあるが、
乗り心地に閉口され、二度と乗ってもらえなかった事を思い出す。
ダンピングの効いた
ピュアスポーツ特有の固めの乗り心地に慣れているはずの私だが、
タイプRで荒れた路面を通過する時には「揺さぶられる」感覚が強く、
脚を固めていたアルファ156より幾分マシだが、
あの時の「リア・サス」を思い出してしまったのも事実である・・・。
定員4名がゆったり座れるスペースを持ち、荷物も多く積める上、
控えめな空力パーツで一般的な冠婚葬祭にも乗ってゆけるカタチは、
「羊の皮を被った狼」の言い古された表現を思い出した。
ナビなど快適装備をフル装備にして、諸経費込みで、約350万円のプライスは、
現在のところ、ホンダ唯一の「タイプR」を名乗るマシンの性能を考えると安いとも言えよう。
理解のあるパートナーや家族を持つ好事家なら、
シビック・タイプRを通勤や生活の中心に使うのも良いかも知れない。
初出「2007年07月16日のmixi日記」
原文まま