
マナーをきちんと考えて、相手のことを常に考えてくださる方々のパブリックスペースで、こういう半ば批判はけして品のいいものではないし、これに関してお叱りを受けることは当然ですが。
本書は昨年ベストセラーになった「下流社会」の続編ですが、こういう「悪書」も最近では珍しい。
下流社会の内容についてはもうすでにお分かりかと思いますが、三浦某自身が嫌いな人種を得意のでデータ操作で「下流」と称して選別して卑下しているにすぎないということです。
冒頭「下流度チェック」なるものから喧嘩を売ってくれます。
選挙では自民党に投票して、石原慎太郎にひかれ、ワールドカップ・オリンピックでは心のそこから日本を応援して、中国や韓国が嫌いだ。
正社員になることは自分を捨てることになるし、出世できないなら正社員になる意味はないと思っている。
仕事でがんばっても報われていないと思っているし、いまの自分は、「自分」を探している状態だ。
自己アピールは苦手ではあるが、これからの自分の人生に希望を持っている。
これらのことが当てはまると「下流」だそうです。
さらに・・・「SPA!」「SMART」「メンズノンノ」の読者は下流で自民党支持。「大人のウォーカー」「週間エコノミスト」「ニューズウィーク日本版」の読者は「上流」で民主党支持だそうです。
三浦某によれば、下層とは「働いても働いても豊かになれない貧乏人」、下流とは「中流であることに対する意欲のない人」なのだそうです。
つまり、自分らしさにこだわって好きなことだけしたい、嫌いな仕事はしたくない、
自分には能力があると思っていて、将来よりも現在を楽しみたい、という若者が「下流」の典型だそうです。
何を書こうが自身の勝手ではありますが、あまりにも幼稚な文章でもう少し文脈の前後の矛盾を考えたらいかがと言いたいです。
例えば「下流」のライフスタイルをこう定義しています。
・パソコン(Personal Computer)
・ページャー(Pager) =携帯電話
・プレイステーション(Play Station)=テレビゲーム
「下流」の趣味にゴルフや旅行が少なくパソコンやゲームの比重が高いのも、著者によれば「下流は引きこもり」だかららしい。
著者のイメージに合った都合のよいデータを選別して、読者をそのイメージで何となく納得させているにすぎず、最後に学歴別統計を唐突に提示するのもそのためです。男性の団塊ジュニアの「下」のキーワードとして「パソコン」を挙げている。しかし、いずれの階層でもパソコン・インターネットを使用する割合は高いと説明しており矛盾しているのではないですか。
要は、某の好きな「理想の階層」とは、高学歴で高級なスーツを着こなし、常に上を目指している、トップエグゼクティブを目指す人物ということ。「夜、風呂上りゲームをやっていたらのどが渇いたので、ジャージを着てコンビニに行ったら友達から携帯がかかってきたので座って話をしている」のは「下流」の人々のやること、ということです。(アホか。)
しかし社会にある不平等を、自由、個性、オンリーワンなどという言葉で隠している大人社会の欺瞞、若者のものぐさ」という指摘はただしい。目標も持たず努力もしないで、根拠の無いプライドだけが肥大して、それが「オンリーワン」という都合のいい言葉になっていると思います。
しかしライフスタイルが経済性を生み出すような三浦某の論理は、事が反対よ。
さも簡単に我々(つまり某を含めた上流)が経済をコントロールできるかのようなたわごとをおおせになられる。
専門家と自称するならマルクスやエンゲルスをもう少し勉強せい。(マルクス、レーニンでさえ階級理論との不整合にてこずってルンペンプロレタリアという意味不明の「別の階層」を作ってそこにむりやり選別する必要があったほど世の中は複雑なのよ。)
また「下流社会」がでた時に一番批判されたのが、サンプル数が少ないと言う点ですが、これに関して余程気になったのか、あとがきでこう書いています。
「『下流社会』に対する批判に、引用している調査データのサンプル数が少ないことがある。
まあ、私も分析のプロだから、サンプル数が少なくても、さほど間違った分析はしないつもりだ」と。(内容の非難については何のコメントもなし。そりゃ批判の方がレベルが高すぎるから、最初に結論ありきの分析ではこじつけの反論も無理なのか)
それは正しい。某が示したデーターを見るなら。
しかし、そのデータを提供している「調査企画プロデュース・総合分析:カルチャースタディーズ研究所」というのは某が主宰する個人研究所です。(自身が勤務していたパルコ、三菱総合研究所の親会社の不祥事にはさすがのプロのお気づきにはならなかったらしい)
何のことは無い、自身に都合がいいデーター採取も自由自在ということです。
健康系番組の捏造問題と基本的には同じレベルのお話です。単に「数字のマジック」ということです。
それをふまえて本書を読むなら、「現在を見る」という問題提起の意味で一読の価値がありそうです。
Posted at 2007/11/18 11:45:57 | |
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