
さて、トビラ写真。
これはなんでしょう?
正解は我がV35、リア右側のホイールを下から見上げた写真です。
光っているのはバランスウェイト、65gが付いています。
…うーん、ちょっと多いんでないかい?
やっぱり韓国タイヤは品質が…という方もいるかもしれませんが、ちょっと待った!!
ちゃんと理由があるんです。
タイヤが問題じゃなく、日本のタイヤショップの器材の問題なのです。
ということで、今回の”ちょっといい話”、タイヤホイールバランス調整の話をします。
ちなみに、なぜ毎回”ちょっといい話”と書いているかというと、これを覚えて酒の席とか、クルマ好きの談義のときのトリビアに使ってください、というつもりで(笑)
間違っても彼女とのデートの時の話題に使わぬよう。
彼女から変な目で見られます、多分。ははは。
さて、本題です。
今回も長文+説明下手ですよぉ(笑)
【タイヤのマークの意味】
まずは基礎編。
新品の国産タイヤを購入すると大概このようなマークが付いているでしょう。
(あえて”国産”と書いたのには理由があります。これは後で)
ペンキのような塗料でφ10-15mmぐらいの●です。
モノによっては白い○も付いている場合があります。
さて、これらはどういう意味があるでしょう?
正解は…
黄色:タイヤ一周の中で最も軽い部分に打たれたマークです、”軽点”と言います。
赤色:タイヤのRFVマークといいます。これは後で
白色:こちらは検査合格のしるしです。タイヤホイール組み付けには何も関係ありません。
ということで、基礎編:タイヤのマークのお話はここまで
【タイヤホイールの組み方:①質量合わせ】
それでは、タイヤとホイールの位置合わせの仕方を説明します。
…今から説明する方法は多くの方が知っていると思います。
多くのタイヤショップでは下のような合わせ方をしていると思います。
タイヤの黄色マークとホイールのエアバルブの位置を合わせています。
この合わせ方は、一般的に”質量合わせ”と呼ばれています。
基礎編で説明したとおり、黄色のマークはタイヤの1周の中で一番軽いところです。
ホイールのエアバルブのところはホイールの1周で一般的には一番重いところです。
(実際にはホイール単品でいえばバルブ穴があいている分、ここが一番軽いのですが、穴の分減らしたアルミ重さよりバルブの重さの方が重いので、この位置が一番重くなります)
タイヤの一番軽い点とホイールの一番重い点を合わせるので、バランス修正をしたときのバランスウェイト量が少なくできることが期待できます。
…ただ、できたら
ホイールとバルブだけの状態でバランサーを回し、一番重い位置を出して(方法としてはバランスウェイトを貼り付ける指示が出た位置の180度反対側を見つける)、
その場所とタイヤの黄色マークを合わせた方がさらに良いはずです。
(さらにちょっといい話)
上記のように“バルブと黄色マークを合わせる”ことで問題ないのは市販ホイールではほぼ正解です。
ただ、最近の純正ホイールでは違う場合があるのです。特にINFINITI系の車(例えばV36スカイラインも含まれるでしょう)では間違いなく。
キーワードは”TPMS(Tire Pressure Monitoring System)”です。これはタイヤの空気圧を常にモニタして車室内のディスプレイに表示したり、空気圧が低下するとワーニングが出るシステムです。
日産車でいえば、この空気圧測定部はバルブと一体になってホイールの中に組み込まれています。
アメリカや一部の国ではこのシステム装着は義務付けられています。例のファイアストーンタイヤのバースト事故を教訓に義務化されたのです。
ということで、標準ホイールは、日本向:a)普通のバルブ。アメリカ向:b)TPMS装置付きバルブがつくようになっています。両方ともホイール自体は同じです。
でも写真で見るとわかるように、バルブの大きさが全く違う!重さはb)のほうがa)の3倍以上重い。
ホイールを普通に作っていては、このb)を付けた時のアンバランスが大きくなるため、バルブのちょうど180度反対側のスポークの裏にb)の重さを打ち消す重りが付いているのです。
実際には別部品ではなく、鋳造のときにその部分だけ意図的に重くなるように作られています。
興味のある方は、ホイールをはずしてスポーク裏の凹みの深さをスポーク1本1本チェックしてみてください、1本だけ凹みが浅いのがあるはずです、この部分が重りなのです。カウンターウェイトといいます。
V36の18インチホイールの写真で説明するとこうです
…何を言いたいのか?というと、この重りはb)の重さにに合わせていたり、a)とb)の重さの中間に合わせていたりするのです。
ということで、日本向車両=ホイール+a)バルブの場合、a)の重さより、180度反対側にあるカウンターウェイトの方が重い場合があるのです。
なので、
タイヤの黄色マークをバルブの180度反対側の位置に合わせた方がウェイト量を減らせるかもしれないわけです。
…説明が下手だな。今回もぜひついてきてください!(笑)
【タイヤホイールの組み方:②位相合わせ】
…とここまで説明しましたが、特に新車を購入して間もない方、ご自身のタイヤホイールを見てください。
上記のようになって
いないでしょう?
タイヤの黄色マークとホイールのバルブの位置は大概あっていません。180度反対側にもあっていません。
その代わり、タイヤの赤マークとホイールにある
”謎の青い点”と位置がほぼあっていると思います。
さて、これはいかに?
実は、これは質量合わせとは全く違う形の位置合わせ方法をとっているのです。
”位相合わせ”という方法をとっています。
位相合わせの説明をするためには、まずは
”タイヤとホイールはまんまるではない”ということを認識しなければなりません。
もちろんまんまるが理想ですが、製造のバラツキ等で完全な丸にはなりません。
また、タイヤのゴムの厚さや密度も1周でバラツキがあります。
タイヤ業界ではタイヤを”1周たくさんのバネがある物体”と定義することが多いです。
つまりこんな感じ
(出典:㈱イヤサカHP)
タイヤが丸くなかったり、密度にむらがあるとそれぞれのバネの硬さが違うということになるわけです。
上記の図では他のばねに比べて赤いばねだけが硬いと仮定しています。
すると、タイヤが回転するとき赤バネの部分だけ持ち上がってしまいます。
同じくイヤサカのHPではアニメーションで説明されています、
ここを参照してください。
綺麗な丸と思っていたタイヤも実は細かく言えばこのように地面を押す力が1周の間に変化しているのです。
このバネのばらつきは、多くの場合タイヤの寸法のばらつきが原因です。つまり赤いばねの部分は半径が大きいとなるわけです。
この赤いバネの位置が、タイヤにおける赤いマークの位置なのです。
RFVとはRadial Force Variation (放射方向の力のばらつき)の意味で、1周のRFVの中で一番大きな力を出すところが赤マークの位置です。
…分かってきましたか?
タイヤの赤マーク=半径の大きな部分 と ホイールの半径の小さな部分を合わせると、全体がよりまんまるになる可能性が高い!という考えが”位相合わせ”なのです。
ホイール側はタイヤのビードが当たる部分の振れを測定します。
つまり、こう。
この絵はホイールを縦切りにした断面です。
リムの車両外側と内側、タイヤのビードが当たる部分に振れ測定器をつけてホイールを一周回し、一番半径が小さくなる部分を見つけるのです。
この位置を示したものがホイールについている”謎の青点”のことなのです。
RRO(Radial RunOut)マークといいます。
この方法はほぼすべての自動車メーカーの生産工場で行われています。ホイールの点の色は会社によってまちまちだと思いますが。
あらためて、位相合わせの方法を絵にするとこうです
タイヤの赤点(RFV最大点≒半径の大きな部分)とホイールの半径の小さい部分(RRO点)を合わせることでタイヤホイールがより中心軸に対して丸くなり、スムースに回転できるということです。
いくら質量バランスは完璧でも、タイヤホイールが楕円だったら…車体はバランスがずれているのと同じようにゆすられてしまいます。そりゃそうでしょ。
【さて、どっちがいい?】
2つの位置合わせの方法を説明しました。
整理しますと…
①質量合わせ
メリット:バランスウェイト貼り付け量が少なくて済む
デメリット:タイヤホイールを合わせた時の丸さは出来なりレベル
②位相合わせ
メリット:タイヤホイールを合わせた時、なるべく丸くなるようになっている
デメリット:バランスウェイト貼り付け量は①に比べて多い
さて、どちらがいいでしょうか?
自動車メーカーは②を選びました。
考えてみれば当然でしょう。
②は貼り付けるバランスウェイトは多いものの、最終的な残留質量アンバランスレベルは結局①と同じです。さらに②は丸さは①より格段にいいのだから…
車両振動を抑えるという考え方でいえば、②が正解ですね!
ディーラーなどに展示されている新車を見ると、結構バランスウェイトが貼り付けられているのに気付くと思います。
上の理由を知らない人は、”俺の社外ホイールに比べてウェイト量が多い(または1台分4本のウェイト量がまちまち)=純正のタイヤやホイールは品質が悪い”と決めつけちゃうのです。
理由が分かれば…こちらの方がいいでしょう?
【疑問:なぜ国産タイヤは…?】
基礎編において、”国産タイヤはこのようなマークに…”と書きました。
意味があるのです。
実はミシェランなどの海外タイヤは(純正採用されているタイヤを除けば)この黄色マーク(軽点マーク)が付いていないのです!赤マーク(RFVマーク)のみ。
海外では②の位相合わせが当然であるという考えなのです。
タイヤショップでもホイールの振れを測定してタイヤを組み付けるような機械が普通に設置されています。
日本でもこのタイプの機械はちゃんと売られているのですが…
こちらを参照してください。アメリカではこのバランサーばかりです。
日本ではこのタイプのホイールリム振れ測定機能付きバランサーを入れているショップはほとんどありません。
なぜ、日本では①質量合わせがメインなのでしょうか?
真実は良くわかりませんが、ワタシの個人的な意見では、振れを測定して組み込み位置を決めるような面倒な作業より、”黄色マークとバルブ位置を合わせる”という単純な位置合わせが楽だし、バランスウェイト量も少なくて済む(大きなタイヤショップになると1本1本では大したことないウェイト価格でも、1か月では結構な出費になります。まさか貼り付けるウェイト量で作業費を変えるわけにはいきませんし)ためではないかと。 また、上記のリム測定機能付きバランサーは一般のものよりコストが高い。
作業が楽で出費も抑えられる…ショップ側のメリットのためではないか?
…なーんてうがった見方をしてしまいます。
あとは、ユーザーの”ウェイトが少ない=精度が高い”という価値観もあるのかもしれません。
さーて、分かりましたね。
今回のワタシのタイヤ、ハンコックは韓国メーカー。
これも赤マークのみなのです、欧州に輸出しているだけにこれがスタンダードなんでしょうね。
日本のタイヤショップでは、”あら?黄色マークがない。じゃあ赤マークとバルブ位置を合わせりゃいいだろう”という簡単な結論で組んでしまいます。
分かりますね、これだとバランスウェイト量的にも丸さ向上的にもなんの意味もありません。
ランダムに組んだのと全く同レベル、ウェイト量が多くなってもしょうがないのです。
ウェイト量が多い=韓国製は品質が悪い、と短絡的に考えてはいけません。
単に日本のタイヤショップの設備の問題なのです。
…ふう。
今回も長文です。
ここまでついてきてくれた方、本当にご苦労様です(笑)
でも、こういう事実は重要で、皆さん知ってほしいですね。