目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
初級 |
作業時間 |
30分以内 |
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ブロアファンのトラブルで多いのは中間の風量のいずれかが効かなくなる、若しくは最大かOFFのみになるというデジタル現象だと思います。中間風量についてはブロアモーターに流す電流の制御を行なっているレジスターの故障が多く、他にはサーマルヒューズの溶断や風量スイッチ裏のコネクターが発熱によって溶けて接触不良になるといったものが有名です。
レジスターについては当然ながら製造廃止ですが、同じような年式の物であれば流用可能なのでは?と思うのが日産旧車乗りの心情ではないでしょうか。今回は某オークションで長期に渡って漂流を続けていた910ブルーバード用のレジスターを安価で入手できたので、流用の可否を検証してみる事にしました。
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図中矢印に示されているのがR30のレジスター取り付け位置です。運転席足元のインストロアカバー(右)を取り外してクラッチペダルの根元辺りを見上げると、ヒーターコアユニットのカバー側面にグレーの6Pコネクターがあると思います。
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コイツがレジスターです。因みにこのコネクターはすぐ近くにあるフットセレクターのコントロールユニットに繋がる物と同形状の色違いで、私は接続ミスを過去に2回やりました。フットセレクターが装備されているRS系とターボGT系のES、PASSAGEにお乗りの方は、内装の全撤去などの時には注意して下さい。
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固定は2個のタッピングビスです。あまりスペースがありませんので脱着にはスタビーがあると便利です。ブロアファンからの風が流れる場所に固定されている事から分かるように、かなり発熱するようですね。
左側がR30、右側が910ブルーバードの物です。裏側にある金属板の形状や取り付けフランジ部分の厚さに違いがあるのが分かります。
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実装されている抵抗も少し違うようですね。青虫のような防振セメントは同じ物が使われています。
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コネクターに抜け止めの有無の違いがありますが、端子の形状や数は同じで接続には問題ありません。
仮に各端子の番号を次のようにしてみます。
① ② ③
④ ○ ⑤
コネクターには端子①に対応する配線は無く、②、③、④、⑤に繋がる4本のみです。R30の配線図を確認すると、②-④、②-⑤、②-③間の抵抗値の差を利用してブロアモーターの回転を制御しているようです。実際に抵抗値を測定してみると
②-①はサーマルヒューズで正常時は直結
②-④が風量3(HL)、抵抗値は0.5Ω
②-⑤が風量2(ML)、抵抗値は1Ω
②-③が風量1 (L)、抵抗値は2Ω
これについてはR30用、910用ともに大きな違いはありませんでした。回路的には②-④は②-①-④、②-⑤は②-①-④-⑤、②-③は②-①-④-⑤-③のように②-①間のサーマルヒューズを介して抵抗が直列で加算されていく仕組みです。これらから、①-④間の抵抗が0.5Ω、④-⑤間の抵抗も0.5Ω、⑤-③間の抵抗が1Ωである事が分かります。また、風量0(OFF)と風量4(H)は風量スイッチ側で制御しておりレジスターは介しません。何らかの原因でサーマルヒューズが溶断した場合には端子②-①間の導通が絶たれる事でレジスターに電流が流れなくなって最大風量の4しか効かなくなります。レジスターに繋がるコネクターを外したままでも最大風量だけは作動するのはこの為です。なお、ブロアモーターにはACCからのプラス電源が直に入り、レジスターはアース側に入るマイナスコントロールです。
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更にブロアレジスター関係の調査をしていくと、特定の年式のスバル サンバーの物も似た形状である事が判明しました。早速、父親のサンバートラックを見てみるとビンゴ!!R30のコネクターがそのまま接続できるような格好です。ただ、910の物と比べると少し大きいので無加工での流用は難しそうですね。サンバーの風量は3段階調節で、コネクターには①、③、④、⑤の端子に4本の配線が入ります。サンバー用も同様に検証してみましょう。
① ② ③
④ ○ ⑤
裏側はアルミのヒートシンクがあって抵抗の配列やヒューズの存在等は直視できません。R30への流用を前提として、端子②と④、⑤、③各間の抵抗値を測定してみると、②-④間が0.7Ω、②-⑤間が1.2Ω、②-③間が3.2Ω、サンバーは②の端子は使わずに①を使用するので②-①間を測定してみると0.2Ωでした。抵抗値の組み合わせから推測すると、このレジスターは4段階調節のスバル車にも使われている可能性があります。中間の風量が弱まりそうですが、これならR30にも使えそうですよね。サンバーに910用のレジスターを取り付けてみると風量調節は効くものの最大風量(3)と風量(2)の差が少ない感じです。R30の物を取り付けた場合もその差に変化はありませんが、コネクターの相性は良くてカチ!っと嵌ります。サンバーはレジスターが接続されていないとブロアファンは回りませんので、最大風量時でも直結ではないのでしょうか?
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910用、サンバー用のいずれのレジスターをR30に取り付けても全ての風量調整が正常に効きます。R30用をサンバーに取り付けた時のように風量差が小さくなる事は無く、きちんと段階分けされています。抵抗値が違う筈なのに不思議ですね。
今回の検証から、形状に多少の違いは見られるものの910ブルーバードのレジスターもポン付けできる事が分かりました。しかし年式からして910用も製造廃止と思われますので、更なる他車の流用調査が必要です。サンバー用についてはサーマルヒューズ等の機構がレジスター内に実装されているかどうかが不安な点です。運良く端子②-①間に入っていればR30の回路に合致するので安全性は確保できます。あとはサイズの問題をクリア出来れば、現段階では流用できるレジスターの中ではいちばん現実的な物と言えそうです。
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