
いわゆる8ナンバー車などの特装車の特集です。8ナンバーではない架装・特装車両もこちらで紹介させていただきます。タイトルは言いたかっただけです。今回は静岡市消防局葵消防署南田町出張所に配備されていた歴代の救助工作車と、それに関係する車両を紹介していきます。

静岡市消防局南田町出張所は静岡市消防本部時代の昭和62年(1987年)2月に新富出張所と安倍川出張所が統廃合し、中央消防署南田町出張所として開所しました。中央消防署の救助工作車は南田町出張所に配備されており、開所前は新富出張所に配備されていました。

南田町出張所に最初に配備された救助工作車は日野レンジャー+5(日野3代目レンジャー)をベースにした車両で、標識灯には中央特救隊と入っていました。詳しい配備年は不明ですが、ベース車の年式からして昭和61年(1986年)から昭和63年(1988年)辺りに導入された車両と思われます。

艤装メーカーは不明で車体後部にはヒアブ製の屈折式クレーンを搭載しており、梯子昇降装置にも中央特救隊の表記跡が。中央消防署特別救助隊には後述の4代目フォワードが導入されたことで、この救助工作車は石田消防署鎌田出張所に予備救助車として置かれていました。

ルーフ部には大型の広報用スピーカーを装備しており、当時の静岡市消防局では赤色灯と赤色灯の間に標識灯を装備していました。こちらの救助工作車は平成26年(2014年)3月に予備救助工作車が別車両に置き換えになった事で、廃車となってしまいました。

平成13年(2001年)2月には後任車両として、モリタが艤装したいすゞ4代目フォワード(FSS)をベースにしたⅢ型救助工作車が配備されました。平成15年(2003年)4月に静岡市と清水市が合併に伴い、中央消防署は静岡市消防本部追手町消防署と改称されました。

平成17年(2005年)4月には静岡市の政令指定都市移行に伴い、静岡市消防防災局に改称され、車体表記等も変更されました。画像は平成19年(2007年)1月7日の静岡市消防出初式で撮影した際のもので、写っているのは千代田消防署特別救助隊の隊員です。

同日に撮影したシャッター部の表記は追手町特別消防救助隊となっており、標識灯の表記は追手町特救となっています。この標識灯の表記は配備当初(静岡市消防本部時代)は中央特救隊、平成15年以降(合併後)には南田町特救となっており、追手町特救の表記になったのは平成17年の静岡市消防防災局改称後ではないかと思われます。

平成20年(2008年)4月には追手町特別救助隊が昇格し、追手町特別高度救助隊(静岡スーパーレスキュー)が発足しました。平成22年(2010年)4月には静岡市消防防災局から静岡市消防局に改称され、特別高度救助隊も南田町出張所から千代田消防署に配置換えとなりました。

標識灯の表記は特別高度救助隊となり、シャッターデザインも静岡スーパーレスキュー(SHIZUOKA SUPER RESCUE)というSの文字を二重にしたデザインのものとなりました。側面の表記も静岡市消防防災局から防災局の表記を消し、その後ろに局を追加したので少し左詰めの表記となっています。

右側の救助資機材庫にはガス溶断機や予備の空気ボンベを積載しており、湘南工作所製の照明装置操作盤も右側に設置されており、ロープやスプレッダーは左側の資機材庫に積載されています。

張り出したフロントバンパー部には大橋機産製のドラム式油圧ウインチを装備しており、リアにも電動式のウインチを装備しています。フロントウインチの左右には丸型ハロゲン式の前面赤色灯を装備しており、その下部にはモーターサイレンとフォグランプを装備しています。

平成26年(2014年)4月には清水消防署に高度救助隊が発足し、千代田消防署特別高度救助隊で使われていた救助工作車は清水消防署へ配置換えとなりました。左右の後部座席ドア部には静岡市消防局マスコットキャラクターカワセミーズのステッカーが入っており、これは平成25年(2013年)10月頃貼られたようです(6月時点では未貼付)。

シャッターデザインも高度救助隊運用に伴い少々変更され、青色文字の(S)UPERという表記が消されました。シャッター右上の特別高度救助隊という表記も清水高度救助隊に変更となりました。

車体後部には直進式クレーンを装備しており、古河ユニック製のV370シリーズを採用しています。梯子昇降装置は電動式のもので、車体後部にはウィレン製と思われる補助赤色灯と作業灯を装備しています。

主警光灯は大阪サイレン製のエアロダイナミック(AD-Vシリーズ)を採用しており、本来であればドライバユニットに挟まれている中央部分は標識灯ですが、こちらの救助工作車は回転灯ユニットとなっています。

補助赤色灯部やウインカーランプ、フォグランプ部には破損防止用ステーが備え付けられており、元々は前面赤色灯はハロゲン式のものでしたが、いつの間にかパトライト製LED補助警告灯のLP3-M1-Rに付け替えられています。

配置換えに伴いフロント部には清水Rの表記が入り、標識灯の表記も清水に変更となりました。南田町出張所から千代田消防署、清水消防署と配置換えされてきたこの救助工作車ですが、平成30年(2018年)2月に後述する後任車両が配備されたことに伴い廃車となりました。

平成22年4月に上記の車両が千代田消防署に配置換えしたことに伴い、日野スペースレンジャー(4代目)をベースにしたⅡ型救助工作車になりました。元々こちらの車両は庵原地区広域消防組合消防本部・消防署に配備されていた車両ですが、平成20年(2008年)11月の市町村合併に伴い消防組合も解散になり静岡市消防防災局に編入されました。編入に伴い消防署は当時の湾岸消防署庵原分署となり、現在は静岡市消防局港北消防署庵原分署となっています。

編入当初は庵原分署で運用されていましたが、先述の理由から南田町出張所に配置換えとなりました。車体後部にはユニック製のトラック搭載型クレーンのV340を装備しており、照明装置は精電舎製の2灯式メタルハライド式ライトを装備しています。

艤装は畠山ポンプが手掛けており、車体後部には小糸製作所製の単円筒形赤色回転灯が2基設置されています。赤色の資機材庫シャッターには大きく白文字でRESCUEの表示が入っており、このデザインは庵原地区消防組合時代のものと思われます。

後述する新救助車が平成29年度(2017年度)に配備されたことで、こちらの車両は予備救助車となりました。予備救助車は駿河消防署鎌田出張所に置かれていましたがいつからか東豊田出張所に置かれるようになり、現在は駿河消防署に置かれています。

赤色灯はパトライトエアロダイナミックシリーズを採用しており、赤色灯後部にはモーターサイレンが設置されています。標識灯には南田町と入っていましたが、予備車になった際に表記が消されました。

予備救助車ではありますが三連梯子やスプレッダー等の救助資機材は積載しておりますが、最低限の資機材となっています。空気ボンベ等の装備は必要あれば、点検予定の車両等から積み替えるようです。

フロントウインチはドラム式のものとなっており、プロテクターに保護された前面赤色灯はハロゲン式のものとなっています。ナンバープレートは払い出しのものとなっていますが、偶然にも一連番号が東京消防庁の通話コードで「要救助者あり」を意味する252となっています。

平成29年度に新車導入されたⅡ型救助工作車は日野6代目レンジャーをベースにした車両で、艤装はモリタとなっている。モリタの製造するハイルーフキャブのレッドアーマーを採用しており、シャッターデザインは特別高度救助隊(SSR)や消防ヘリカワセミ同様に白いラインに水色のラインが入ったものとなっています。

クレーン装置は先代車両同様にユニック製のものとなっていますが、ユニックがオプション設定しているGホワイトという色を採用しています。照明装置もLED式のナイトスキャンを採用しており、これまでに静岡市消防局に配備されていた救助車とは異なる新たな仕様となっていました。

南田町出張所に配備されていたこちらの車両ですが、令和6年(2024年)に入り葵消防署に配置換えとなりました。配置換えに伴い側面の標識灯が南田町から葵に変更されました。

救助車の配置換えに伴い南田町出張所に配置されていたいすゞ6代目前期型エルフの資機材搬送車も葵消防署に配置換えとなりました。現在南田町出張所には水槽付きポンプ車と水槽車の2台が配置されています。

平成30年度2月には先述のいすゞ4代目フォワードをベースにした救助工作車の更新車両として日野6代目レンジャーをベースにした車両が清水消防署に配備されました。葵消防署の車両同様にモリタが艤装のレッドアーマー装着車ですが、こちらの車両は高度救助隊が運用する車両なのでⅢ型となっています。

葵消防署の救助車同様に小糸製作所製のトラック用リアコンビネーションランプ(バックランプ付き)となっておりますが、クレーン装置がタダノZest ecoシリーズに変更されています。仕様は似ていますが、細部はかなり違っています。

令和2年度末には吉田町榛原町広域施設組合消防本部時代に配備された高床四駆車の救助工作車の更新車両として、日野6代目レンジャーをベースにしたⅡ型救助工作車が配備されました。こちらの車両もモリタが艤装していますが、レッドアーマーではなく標準ルーフのキャビンとなりました。

こちらの車両もクレーン装置はタダノ製となっており、主警光灯はウィレン製のものとなっています。仕様としては平成25年度に石田消防署(現在は千代田消防署に配備)と、湾岸消防署(現在は港北消防署)に配備されたⅡ型救助工作車に近いものと思われます。

元々葵消防署に配備されていたいすゞ6代目前期型エルフをベースにした水槽付きポンプ車は救助車の配置換えに伴い、駿河消防署に配備されました。こちらの車両は追手町周辺の繁華街で活動する為に小型トラックをベースにしており、中型車ベースの化学車よりもPA連携等で出動していた印象でした。

このポンプ車には700ℓの水槽を装備しており、車体上部にはバックボードや三連梯子を装備しています。詳しい運用方法は不明ですが駿河消防署に配置転換後もPA連携や火災に出動しており、水槽付きポンプ車(駿河1)と同時に出動することもあるようです。

当時の静岡市消防局の車両としては珍しく、ウィレン製の主警光灯を採用していました。いすゞ6代目前期型エルフをベースにした700ℓ水槽付きポンプ車は後に清水消防署有度出張所と日本平消防署三保出張所にも配備されましたが、そちらの主警光灯は大阪サイレン製のスーパーネオフラッシュとなっています。
今回は以上です。
参考文献 三推社/講談社 2007年8月29日第1刷発行 別冊ベストカー 消防マニア!
メニューはこちらから