≪ビアルビート ウィキペディア≫
ビアルビート(Bialbeat)は、ホンダ・ビートに、“デイトナ”が製作したボディ・キットを取り付けた車輌の総称である。
【概要】
ホンダ・ビートをベースに、60年代のGTクラス・レーシング・シーンで活躍した、アバルトのスポーツ・カーをモチーフに作られたボディ・パーツ、『ビアルビート・キット』を取り付けた車両のことを『ビアルビート』と称する。なお、このキット自体の販売総数は8台といわれ、そのため現存する車輌は極めて少ない。
【解説】
ビアルビートとは、群馬県前橋市にあった『オート・アンド・ファッション・ブティック “デイトナ”』が製作、販売した、FRPで出来たボディ・キット、『ビアルビート・キット』をまとったホンダ・ビートの総称である。このキットは、フロント・カウル、エンジン・フード、リア・バンパーの3点と、丸型ヘッド・ランプ、ウインカー・ランプ、ボンネット・キャッチなどから成るが、その体裁は単なるエアロパーツの領域を遥かに超え、むしろキット・カーを髣髴とさせる内容であった。そのため高価にならざるを得なかったとみえ、1992(平成4)年の販売価格は、38万円もした(あの『無限』のF/Rエアロバンパー+サイドステップでさえ17.2万円なのに! ちなみに、車輌をデイトナに持ち込んだ場合、塗装、取付けはサービスとしているが・・・)。なお、1998(平成10)年のTipo誌の広告を見ると34万8千円となっていることから、どこかの時点で値下げを行ったようだが、この対応が販売増に寄与することはなかったとみえ、結局、総生産台数は8台といわれる。
ビアルビートのモチーフは、1962年のジュネーブ・ショーでデビューしたアバルト(ABARTH・・・英語圏では「エイバース」と発音)のレーシング・スポーツ・クーペ、『アバルト・シムカ1300』のシリーズⅠと思われる。その根拠は、ベース車輌がフィアット600Dからシムカ1000へ変更したことに伴い、ボディサイズが若干大きくなったことで、『フィアット・アバルト1000ビアルベーロ』の“おちょぼ口”よりも、フロント・カウルの開口部が拡大したそのスタイルに、より造形の相似が見てとれるからである。ただこの件については、両者の正確なディメンションが不明であり、ましてや実物を2つ並べて比べたわけでもないことから断言は避けるが、写真で見る限りそのスタイルは、フロントからは“ソックリ”と言っていい。実は、このソックリ度を表す逸話に「本物のアバルトから型を取って作った」というものがある。ただ、この件についてはあくまで憶測ながら、“ない”と考える。これは、バブル景気に陰りが見え出した時期とはいえ、アバルトのレーシング・カーのような歴史的価値のある車輌には、まだかなりの高値が付いていたであろうし(現在でも恐らく1000万円は下らないのでは?)、そのボディが、容易に変形しやすいアルミ製ともなれば、これを雛型にするのには、あまりに高価な投資と思えるからである。しかしながら、このビアルビートを初めて大きく取り上げた雑誌であるTipo(発行元:ネコ・パブリッシング)誌が、1992年3月(通巻33)号であることから、取材→編集→発行の時間を考えると、遅くとも1991年末には完成していなくてはならず、同年5月15日のビートの新車発表から、半年少々でここまでまとめ上げたその製作スピードを考えると、本物から型を取って作った可能性も完全には否定出来ず、すでに会社が存在していない今となっては、真相は藪の中である(なお、『BABY・COBRA 40.27(ベビーコブラジャパン)』では、アルミで作られたベース車両から型を取り、FRP製のコンプリートモデルを造っていることから、アルミボディだからといって雛型製作が不可能なわけではない)。ただ、いずれにせよ製作者の力量は相当なものであり、よほどアバルトに造詣の深い人が製作にかかわったのではないかと思われる。
(そんな完成度の高い車ではあるが、肝心のネーミングについては疑問を残す。車名の元となったと考えられる『ビアルベーロ』は、「Bi(2本の)」「Albero(カムシャフト)」の意・・・つまり、単に「ツイン・カム」であることを表しただけで、“固有の車名”ではない。ちなみに、シングル・カムは『モノアルベーロ』であり、そこから考えると、シングル・カムであるビートにつけるべきネーミングは、本当ならば『モノアルビート』となったはず。ここまできっちり車を作り上げた人間が、こんな単純なミスを犯すとは思えないことから、単に語感で選んだネーミングなのだろうが・・・)
【参考文献】
*アバルト-カルロ・アバルトの生涯と作品(ネコ・パブリッシング)
:ルチアーノ グレッジオ [著], Luciano Greggio [原著], 武田 公実 [翻訳]
*カーマガジン(ネコ・パブリッシング)22/38/84/109/147/151/162/212/247/300/345号他
*Tipo(ネコ・パブリッシング)17/33/108号他
*心に残る名車の本(企画室ネコ):20マツダ・コレクション
*カーグラフィック(二玄社):197/267号他
*自動車アーカイヴ(二玄社):Vol2 60年代のイタリア/フランス車編
*アバルト ガイド(二玄社):アルフレッド・コセンティーノ著
*K-CARスペシャル(立風書房)Vol30
*K-CARスペシャルパーツマニュアル’92(立風書房)
*オールド・タイマー(八重洲出版):57号
*カスタムCAR(芸文社):358号
*Abarth King of Small Cars:Alfred Cosentino著
*ABARTH OWNERS INTERNATIONAL:Alfred Cosentino著
*Faza Fiat Abarth Lancia Bible:Alfred Cosentino著
≪この『ビアルビート』は、自身が独自に調べた結果を一方的に語った”思い込み項目”です。
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