40年60万kmほどを走行したというスカイラインFJR30型をお乗りの方から悲痛なご相談をいただきました。
プロペラシャフトが脱落してしまったそうです。
ご送付前に状況写真を送っていただきました。大変なことになっていました。
なんだかフロア下から音がするなと思っておられたそうですが、遠方でいきなり大きな音が響き不動車になってしまったそうです。下回りを確認したところ、第一ジョイントを大きく削り取ったスパイダーがヨーク穴から外れて暴れたようです。大事故に至らず本当によかったです。
シャフト一式が送られてきました。分離してしまったジョイントを目の前にすると痛々しさに身が引き締まります。
センターベアリングは正常動作しているのかと思いましたが、ゴムの硬化とひび割れが起きていました。
第一軸は両ヨークとも大きく削り取れていましたので、削れがましなほうは再使用できるか迷いましたが、同じ径・歯数のハコスカ用ジョイントの入手ができたのでこれに一式交換することにしました。旋盤にセットして首部をできるだけギリギリ外せるところを狙って溶接部を削り取り、FJR30側とハコスカ側のジョイント一式を元の長さを再現できるように外しました。
第二軸のジョイントは滑らかな首振りに感じましたが、長期間使用してきたので非分解方式のジョイントでしたが両スパイダーとも交換することにします。
第一軸はハコスカのジョイント一式を第一軸に差し込み、振れがゼロに近くなるよう溶接します。ハコスカのスパイダーは交換式のジョイントが使用されていましたので、せっかくなので外してニードルベアリングとキャップ内の古グリスを徹底洗浄して高性能グリスでオーバーホールします。ハコスカ用スパイダーの調整シムは潤沢に持っていましたので感触のいい首振りになる厚みのシムを慎重に選択して組み込みしました。
センターベアリングは当方の在庫新品に交換しました。交換作業のために古いセンターベアリングのゴムダンパー部にちょっとさわるだけでボロボロと崩れていき、よく自重を支えていたなと感心します。
第二軸のスパイダーは一見スムーズな首振りでしたが、非分解のスパイダーを外したところ、内部は潤滑切れぎりぎりで、外すそばからニードルベアリングがポロポロと落ちてきましたので油としての粘りがまったくなくなって終了間近でした。在庫スパイダーが使えましたので終了間近のスパイダーを交換し、回転中心を0.01mm付近まで追い込んで位置決めと固定を行いました。
動バランス修正を行って超低振動軸として期待のできるシャフトとして完成となりました。今回はジョイント交換まで行うという大工事でしたが無事に機能回復を果たせました。
オーナー様から装着と試走のあとに感想をいただきました。
「昨日クルマへの取付作業を無事終了し30km程度走行しました。
先ずは40年動き続けているスカイラインが息を吹き返して感激です。
次にとにかくクルマが軽くなりました。徐々に悪くなるものは慣らされるので気づきにくいのが常ですが正常に戻るだけで、走るのが楽しくなるくらい軽くなりました。極々緩い傾斜路に留めてもブレーキを緩めると動きますが、以前は動かず、まぁこんなもんなのかと思っていたのですがプロペラシャフトのジョイント部が、動かなかったのでしょうね。駆動抵抗が極めて大きかったと思います。燃費もかなり改善されたと思います。あと15年はこの相棒と一緒に走りたいと思います。」
新車時から40年60万km走行してさらに15年を見越しておられるのは大変驚きですが、車の復活をともに喜べて嬉しく思いました。
Posted at 2025/02/08 21:24:20 | |
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