レガシィ BH9型を大事に乗っておられる方から悲痛なご連絡をいただきました。
キコキコと異音がするので車屋さんに見てもらったら、プロペラシャフトからだろうという見立てをもらったそうですが、もう純正新品は供給なし、中古シャフトもまったく出ずということで、ご依頼主様いきつけの修理屋さんも預かってくれず、廃車にするしかないだろうかというお尋ねでした。
この車は水平対向6気筒が搭載されていて、とても静かでいい車だがあまり販売台数は伸びなかったようだとお聞きしました。
レガシィなどスバル車は何度かやっておりましたので、まずは状態を見てみたいと思いましたが、修理屋さんが預かってくれず外せなくてどうしたものかと悩んでおられました。当方は自動車整備の設備はないので仲間の整備屋さんに相談したところ、プロペラシャフトの脱着を引き受けてくれましたので車ごとお持ち込みいただきました。
プロペラシャフトが外れたと連絡をもらい取りに行きまして確認作業に入っていきます。中央の等速ジョイントはトラブルは起きていないように見え、デフ側のジョイントは中立点での引っかかりは若干感じましたが通常動作はしておりました。
問題はトランスミッション直後の第一ジョイントで、U字型のヨークのところが茶色くなっていたので、サビで終了していることがうかがえました。首振りさせてみると、左右には動きますが上下には動かなくなっていました。
この機会にプロペラシャフトをしっかりオーバーホールしたいというご希望だったので、スパイダー二か所の交換を行っていきます。レガシィは分離できない等速ジョイントを使われていることが多くこの形式は引き受けできなかったのですが、分離ができないとジョイント交換ができないので、今回チャレンジをしてみます。カップブーツはきっちりカシメられて隙間がないので起こすのがとても大変でしたが、なんとか外して分離ができました。内部に抜け止めのCリングがついているのですが、これを外さないと等速ジョイント機構が抜けてこずしかも簡単にリングが外れてこないので、等速ジョイントは作業者泣かせの構造です。
第一・第三ジョイントのスパイダーを交換していきます。
トランスミッション出口すぐの第一ジョイントは、ニードルベアリングがサビ粉に変わっていました。
センターベアリングも交換したいと思い、等速ジョイントのカップ内部を見てみたところ、カップ底部にボルトが見えているタイプで緩めるとカップが抜けてセンターベアリングにアクセスできる構造であることがわかりました。しかしスバル用として用意していたセンターベアリングのステー部分の形状が若干違い、今回はゴム部の変形やベアリングの回転具合も良好だったこともあり、今回交換は見送ることになりました。
等速ジョイントも内部の部品をすべて外して古グリスを徹底洗浄し、良質のグリスを充填してオーバーホールしました。
非分解方式のユニバーサルジョイントの交換時は、固定用止め輪がなく回転中心の位置決めをしなければなりませんので、手作業で時間をかけて1/100mmあたりまでじっくり合わせていきます。位置決めをして固定したら動バランス調整を行い測定限界近くまで追い込んで完了としました。今回は今まではなかった等速ジョイントの組み上げもあり、等速ジョイントは構造がとても難しく組み上げは難易度高かったですが慎重に構成部品を元に戻しカシメなおして完成シャフトとなりました。
完了のご連絡をして電車で引き取りに来られました。
試運転をして確認いただく緊張の瞬間が訪れました。一緒に乗らせてもらい印象をお聞きできましたが、「ジョイント不良が解消したのはもちろんだが、走りがとても滑らかに感じる」ととても嬉しいお言葉をいただきました。私は基本的にシャフトが送られてきてオーバーホール作業を行い返送するという流れがほとんどなので実車に接することが滅多になく、自分の作業したシャフトを装着した車で試乗の機会をいただけたのはとても貴重な体験でした。
Posted at 2025/01/12 20:36:03 | |
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