大変珍しいご依頼をいただきました。
BMW用のワンピースシャフトだそうですが、素材がアルミで、もともとは2ピースだったものをワンピースとした社外品だそうです。
アルミシャフトをじっくり見るのは初めてのことでした。
両端のフランジのみスチール素材で、軸部はすべてアルミでした。100kmH超で振動が出るということで、回転バランス修正を考えられたそうです。パイプ部にはウエイトがついてませんでしたが、製作時に良好だろうと判断されたのかもしれません。
両端にはアルミ素材の変換アダプタがついていました。
できればこうしたものもすべてつけた状態で回転バランスを修正したかったのですが、勘合部にガタがありました。
それでフランジ凸部とアダプタ側のガタを修正しました。
まずアダプタの内径より大きいリングを製作します。
プレスで圧入して旋盤にくわえ、フランジ凸部より0.03mm程度大きく削りまして、もともとあったガタはなくなりました。
この状態でマーキングをして作業時の位置に戻せるようにし、バランス修正作業を行って完成としました。
アルミのウエイトを溶接して接合しようとしましたが、大変難しいものでした。
スチールはピンポイントで溶接ができますが、アルミは溶けはじめると母材より先に面積の小さなところから一気に全体が溶けはじめてしまい、微調整でつけたかった細かいウエイトは断念するしかありませんでした。
アルミ素材を手がけることはほぼないこともあり、感覚が分かりづらかったのも大変悔しいところでした。それでもバランスのレベルは良好にできたので、振動問題は解決しただろうと思っています。
どんな走り心地になったのか感想を待ちたいと思います。
今回アルミシャフトに触れた印象としては、アルミは精密な振れ精度を実現するのには向かないような印象でした。スチールは薄肉パイプを使えるので意外と軽量にも仕上がりますし、溶接もアルミより大幅に容易で高精度なものとすることができます。ウエイトもかなり小さいものもピンポイントで接合できるので、高精度バランスの実現もしやすいと感じました。
素材ごとに得手不得手なものがあるようだと実感しました。
追伸 :
ご依頼主様から試走路で走られたご感想をいただけました。
120km/hあたりで大きく感じられていた振動は180km/h超でわずかに聞こえる程度に軽減したそうで、ここまでの速度になるとなにがノイズ元になっているか正直わからず、デフやサブフレームのマウントも硬質ゴムで強化しているので伝わりやすいのかもしれないと分析されていました。
240km/hくらいの速度までの中では運転が怖くなるような振動は感じられなかったということで、今回のバランス修正作業は成功と判断できそうです。
もしスチール材で製作できるなら選択肢として持っておきたいということで、将来製作されるかもしれないとのことでした。
たぶんアルミよりスチール材のほうが軽量かつ高強度、また回転バランスも追い込みやすいので低振動軸に仕上がるだろうと思っています。
Posted at 2022/12/18 21:28:22 | |
トラックバック(0) |
自動車部品 | クルマ