東北方面のショップ様から、100km/hちょいあたりから振動が始まるBCNR33型が修理で入庫したので相談をしたいというご連絡がありました。
内容を聞いてみると、等速ジョイント部を覆うカップブーツに大変変わったヘコミがあり、どのようにぶつかったらこのようなヘコミがつくのかとても不思議だということでした。プロペラシャフトの新品が出ないので、当方オリジナルのワンピースプロペラシャフトを最初考えられたそうですが、32~34の純正プロペラシャフトのオーバーホール作業の経験があることを伝えるとユーザー様は純正シャフトでいきたいという希望となったようなので、ワンピースシャフトから方向転換して純正シャフトのオーバーホール作業に変更しました。
実物が送られてきたので外観を確認していきます。
見た目はあまり大きな問題はないように見えました。
カップブーツはとても目立つヘコミがついており、へこんだケースが内側に入り込んで軸部にぶつかっているようでしたので、これが振動の原因になっていたのかもしれません。
可動部はすべてオーバーホールすることになっていましたので、等速ジョイントはすべて外して確認していきます。等速ジョイント内部には使い込んだ古グリスがべっとりついていましたが、駆動伝達用のボールのところにはグリスが足りなくなっているようで、流れやすくなってしまっているのかもしれません。
等速ジョイントはすべてばらして徹底洗浄します。ボールやケージまでばらして洗浄しますが、組み上げる時には知恵の輪みたいで組み上げに苦労します。
破損したカップブーツは新品を用意してありますので交換します。
洗浄中に時間を待つ間、カップブーツに押されていたので曲がりがないか確認をしました。旋盤にセットしてダイヤルゲージをあてて振れを確認したところ、0.3mm振れていましたので、0.05mmまで追い込んで修正しました。(旋盤で軸部を削ったわけではありません。細くなってしまいますので)
ユニバーサルジョイントのスパイダーも非分解カシメ方式ですが、外してオーバーホールしていきます。数か所にコクンという引っかかりがあり、内部のグリスは劣化していそうなことが伺えます。数百本のニードルベアリングもすべて洗浄して古グリスを落とし、一本ずつ戻して耐水・耐熱・高荷重時の潤滑に優れた高性能グリスをあふれるように充填して詰め直しをし、回転中心を0.05mm以内まで詰めて位置決め固定します。首振りはまったく引っかかりがなくなり、感動的な軽さに戻せました。
最後に両軸とも回転バランス修正をこれ以上詰めらないというところまできっちり行って、今回のオーバーホール作業は完成です。
GT-Rは32~34まで異音や振動が出やすい印象がありますので、部品の劣化とともに振動・異音など気になっている方はオーバーホールのご相談を受け付けしています。
追伸:
発送して数日後に続報が入りまして、装着と試走をされたところ懸案の速度での振動は綺麗さっぱり消えてくれて嬉しさのあまりすぐユーザーさんに電話してしまったという大変気分のはずむご報告をいただきました。
Posted at 2023/07/27 21:08:13 | |
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