ローレルHC33型が振動が起きるということで整備工場に入庫したようで、振動の悩みに加えて長年の使用による劣化も懸念されたユーザー様のご意向でリビルド作業の依頼がありました。
まず外観確認からしていきます。
外観に異常は感じられませんでしたが、ジョイントの動きは中央付近での引っかかりや渋い感触があり、潤滑性能が劣化してきていることを感じさせました。
気になる点としては、ミッション直後のユニバーサルジョイントの向きと中央部フランジの向きがずれていて一直線に並ばないことがわかりました。
ご依頼主が修理工場なのでお知らせするだけにするか修正したほうがいいか悩みましたが修正作業を行うことにしました。
中央部の大きなナットを緩めて引き抜くのに大きな力が必要だったスプラインをプーラーで抜きましてコマをずらして一直線に並ぶ位置にはめかえをしましたので、一安心となりました。
ここからスパイダーのオーバーホールへと進んでいきます。
非分解方式のカシメ固定でした。破損部分があると大変なことになるので寸法を慎重に確認し、磨滅などがないことをよく確認してから外し作業に入っていきます。非分解方式は外し作業を想定されていないので抜ける隙間がないことが多く、破損しないように抜き取るのは工夫を重ねて何種類も製作した抜き治具と経験を重ねたテクニック、知恵の輪を解くような根気を駆使する必要があります。
サビに似た色になっている軸部が見つかり、オーバーホール時期であったことがうかがえます。
すべてバラせたのでニードルベアリングをなくさないようにしっかり注意をしながら古グリスを残さないように徹底洗浄していきます。
耐熱・耐水・極圧環境での潤滑に優れた高性能グリスを潤沢に用いて再組立てしていきます。
純正状態と比較すると驚くような首振りの軽さと中立点に引っかかりが皆無となった、とても上質で感動的な動きが戻りました。
ちなみに、新品スパイダーになぜ交換しないのかという疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、非分解方式のジョイントは純正部品の設定がないことがほとんどで、同寸法の社外スパイダーも見つからないことが多々ありますので、装着されていたスパイダーを慎重に抜き取って再使用したり、加工で入ってきて不要部位になったスパイダーを地道に採取して保存したりしています。
回転中心出しとスパイダーの位置決めは0.01mmあたりまで詰めるのはかなりの時間がかかりますがそれは適当に済ませることはできません。回転中心をしっかり詰めたらスパイダーの固定をし、回転バランス修正加工を両軸ともおこなって超低振動軸へと仕上げて完成させました。
ちなみに純正のウエイトはすべて外してまっさらな状態で回転バランス作業を行います。
ユーザー様だけでなく整備工場のプロの厳しい目にもさらされるので緊張感高いですが、どのような感想をいただけるか楽しみです。
Posted at 2023/08/20 00:11:48 | |
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