• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

ベルメーゼのブログ一覧

2023年10月10日 イイね!

THS II の仕組みと計算方法(番外編:マルチステージハイブリッド その2)

THS II の仕組みと計算方法(番外編:マルチステージハイブリッド その2)前回の番外編でも軽く触れましたが、ジェネレーターが大きすぎる気がするのでマルチステージハイブリッド向けに再計算してみようと思います。

おことわり
これらの内容には非公開情報を仮定して求めている箇所がいくつもあります。
実際には異なる可能性があるためご注意ください。

計算式も忘れないように書いておきます。
プラネタリーギア比 ρ = 0.3846
トルクの分配は

Tg = (ρ / (1 + ρ)) * Te = 0.2778 * Te
Tr = (1 / (1 + ρ)) * Te = 0.7222 * Te

回転数の関係式は

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne

ジェネレーター回転数

alt

マルチステージハイブリッドの説明会で話されてた、従来のトランスミッションは最高出力を 120km/h 以上でしか出せなかったが今回は 60km/h で出せるようになった。というセリフから紐解いてみます。
その時 LC500h でしたので諸元表は以下のとおりです。

エンジン出力: 220kW / 6,600rpm
エンジントルク: 356N・m / 5,100rpm
モーター出力: 132kW / 4,202rpm以上
モータートルク: 300N・m / 0-4,202rpm
減速比: 3.357
ギア比: 3.538 / 1.888 / 1.000 / 0.650
タイヤサイズ: 275/35R21 (外周は 2.280m)

まず時速 60km/h のときトランスミッションの回転数は 60 * 1000 / 60 / 2.280 * 3.357 = 1,472rpm です。
このときギアは1速ですので、リングギアは 1472 * 3.538 = 5208rpm です。
エンジンは最高出力の 6,600rpm で回っているので、回転数の関係式を用いると

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne より
0.3846 * ng + 5208 = 1.3846 * 6600
0.3846 * ng = 3930
ng = 10,219rpm となります。

つまり、マルチステージハイブリッドのジェネレーターの最大回転数は概ね 10,000rpm であることがわかります。

マルチステージハイブリッドのシステムトルクとその速度

ジェネレーターの最大回転数が分かったところで、システムトルクの出る速度はいくつなんでしょうか。計算してみましょう。
ここから22クラウン 3.5L モデルを参考に考えてみます。
なお、22クラウンは LC500h と比べても減速比までは全く同じでした。唯一タイヤサイズが小さくなっているだけです。タイヤサイズだけ小さいということは、LC500h よりも加速寄りの調整になっているということです。(車体も軽いし加速寄り、そりゃ LC500h よりも22クラウンの方が早いわけです💦)

まずトルク配分です。
エンジンから最大トルクが出力されているとすると以下の配分になります。

Tg = 0.2778 * Te = 98.9N・m
Tr = 0.7222 * Te = 257.1N・m

つまりジェネレーターに 98.9N・m が分配され、回転数は 10,000rpm ですので発電量は 104kW となります。
マルチステージハイブリッドのシステム出力は 264kW ですので、バッテリー供給は最大 44kW と推測できます。発電量とバッテリー供給を合わせると 132kW のモーターはフル稼働できています。

ちなみに22クラウンのタイヤサイズは 225/45R18 です。(外周は 2.073m)
トランスミッションの回転数を速度に変換する式は...

速度km/h = 回転数 / 3.357 * 2.073 * 60 / 1000 = 0.03705 * 回転数
となります。

さて、最大トルクが出る 5,100rpm でエンジンが回り、ジェネレーターは 10,000rpm で回ってるとします。回転数の関係式を用いると...

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne より
0.3846 *10000 + nr = 1.3846 * 5100
nr = 3215rpm となります。モーターの最大トルク発生回転数は諸元表より 4,202rpm 以下ですので、モーターも最大トルクを出すことができています。

これを各ギアで求めると以下の速度になります。
1速のとき、3215 / 3.538 * 0.03705 = 34km/h
2速のとき、3215 / 1.888 * 0.03705 = 63km/h
3速のとき、3215 / 1.000 * 0.03705 = 119km/h
4速のとき、3215 / 0.650 * 0.03705 = 183km/h

トルクは発進時に一番出したいので、34km/h あたりが一番分かりやすいかもしれません。その時のシステムトルクは、分割された 257.1N・m とモーターを組み合わせると約 557N・m 相当になります。

マルチステージハイブリッドの出力特性

alt

さて次に出力について考えてみます。
LC500h だと 60km/h で最高出力でしたが、22クラウンではいくつでしょうか?計算してみましょう。

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne より
0.3846 * 10000 + nr = 1.3846 * 6600
nr = 5292rpm となりますので...
1速のとき、5292 / 3.538 * 0.03705 = 55km/h となります。つまり 55km/h 以上で最高出力を出すことができます。

次にトランスミッションの理論上効率100%になる速度を求めてみます。
alt

マルチステージハイブリッドに1年半乗った感覚としては、高速道路は常に1,000rpmちょっとで巡航できていますので、1,100rpm として試算してみます。

回転数の関係式 ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne より、ジェネレーターが 0rpm になる速度を求めると
nr = 1.3846 * 1100 = 1523rpm になります。

これを各ギアで求めると以下の速度になります。
1速のとき、1523 / 3.538 * 0.03705 = 16km/h
2速のとき、1523 / 1.888 * 0.03705 = 30km/h
3速のとき、1523 / 1.000 * 0.03705 = 56km/h
4速のとき、1523 / 0.650 * 0.03705 = 87km/h

これを見ると、メーター読みで概ね 60km/h や 95km/h 付近で走行するのが最も効率のいい速度域のようです。22クラウンのセッティング、完全に日本に合わせていますね!

ちなみに LC500h / LS500h のタイヤサイズは 245/50R19 や 275/35R21 ですので、外周は 2.280 になります。
トランスミッションの出力回転数を速度に変換するのは
速度 km/h = 回転数 / 3.357 * 2.280 * 60 / 1000 = 0.04075 になります。

22クラウンと同じように各ギアで求めると以下の速度になります。
1速のとき、1523 / 3.538 * 0.04075 = 18km/h
2速のとき、1523 / 1.888 * 0.04075 = 33km/h
3速のとき、1523 / 1.000 * 0.04075 = 62km/h
4速のとき、1523 / 0.650 * 0.04075 = 95km/h

まとめ

alt

マルチステージハイブリッドでは低速時のトルクが 1.5 倍になっている以外にも、トランスミッションの効率が理論上100%になる点が4箇所に増えることで、全域に渡って燃費向上を図っているのも特徴です。特にオーバードライブのギア(4速、0.650)を追加することで、THS II が弱い高速域の燃費向上を目指したみたいですね。

THS II と比べて低速時の加速が上昇したのに、トランスミッション効率が上がって燃費も向上しているのは嬉しいなと思っています(だからマルチステージハイブリッドが気になって乗ってる)。
Posted at 2023/10/10 16:39:17 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ
2023年10月09日 イイね!

THS II の仕組みと計算方法(番外編:マルチステージハイブリッド)

番外編作っちゃいました。
THS II の仕組みを説明した上で、マルチステージハイブリッドの魅力を伝えたくて💦

さて、少し戻って「その2」で話した内容のおさらいです。

15代目クラウン(AZSH20)のトルクについてです。
モーターが 300N・m でエンジンが 221N・m なのに、低速時のトルクは 341N・m 相当しかないんです。これが THS II の欠点で、どれだけ大きいエンジンを積もうがモーターが弱いと発進がもっさりするんです。

これを解消するためにできたのがマルチステージハイブリッドなんです。

マルチステージハイブリッドとは

alt

まず、従来の THS II をおさらいしましょう。
エンジン、プラネタリーギア、ジェネレーターがあって。モーターにリダクションギアが備わっています。
実は、このリダクションギアの場所がモーターにしかないので、極端な話をするとエンジンは常にトップギア!みたいな漢(おとこ)仕様になっています笑
そりゃ低速時に弱いですよ。。。

alt

じゃあマルチステージハイブリッドの構造です。
リダクションギアが4速に進化し、エンジンとモーターをあわせた後に設置されています。これならエンジンにも変速が付いて加速が良くなりそうです。

低速トルクはどれだけ変わるの?

もう速度を出すのが面倒なので、トルクだけ求めちゃいます。
自分が乗っている15代目クラウン 3.5L モデルがもし THS II のままだったら?という条件です。

エンジン出力: 220kW / 6,600rpm
エンジントルク: 356N・m / 5,100rpm
モーター出力: 132kW
モータートルク: 300N・m

トルク配分は

Tg = (ρ / (1 + ρ)) * Te = 0.2778 * Te
Tr = (1 / (1 + ρ)) * Te = 0.7222 * Te

でしたね。思い出しました。。。
ジェネレーターには 99N・m 配分され、出力には 257N・m が配分されます。
このときジェネレーターが 13,500rpm だとすると 140kW 発電してることになります?本当?140kW のモーターは大きすぎる気がするので、3.5L モデルのジェネレーターはもっと回転数低いかもです。(多分)

ジェネレーターの回転数はさておき、モーターはバッテリー供給を使って 100% 出せると仮定すると、300N・m 出てるはずです。
モーターの変速比は 3.9 と仮定するとモーターからは 1,170N・m が出力されます。つまり、トランスミッションからは 1,170 + 257 = 1,427N・m 出ていることになります。
1速の変速比をリダクションギアと同じ 3.9 と仮定すると、1,427 / 3.9 = 366N・m になりますので、低速時に 1,427N・m、366N・m 相当のトルクになります。

じゃあ次、マルチステージハイブリッドの場合です。
計算式は同じでモーターのリダクションギアがなくなったので、モーター+動力分割機構から出力されるトルクは 557N・m になります。
マルチステージハイブリッドの1速の変速比は 3.538 ですので、低速時に 1971N・m、557N・m 相当のトルクになります。

つまり同じエンジンとモーターでも、3.5L NA から 3.5L ターボになったとか、5.0L NA になったようなトルクアップを感じることができるんです(低速時)。
だから LC500h は 5.0L NA のような低回転トルクが出るので(実際の出力は4500cc程度しかないけど)、500h って名前にしたという話を聞いたことがあります。
alt
(Previous transmission が 1,300Nm くらいまでしか無いの、旧システムのモーターが 275Nm だからですね)

実は最高出力が使える速度も変わる

alt

変速が入ることで低速トルクが増えるんですが、実は最高出力が使える最高速も下がることで使える領域も増えてるんです。計算してみましょう。
22クラウンの 3.5L モデルで計算してみます。

タイヤサイズは 225/45R18(外周 2.073m)、減速比は 3.357 です。
トランスミッションの回転数を車速に変換する式は。。。
車速km/h = nr / 3.357 * 2.073 * 60 / 1000 = nr * 0.03705

最高出力は 6,600rpm、ジェネレーターは 13,500rpm ですので、回転数の回転式より...
ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne
0.3846 * 13500 + nr = 1.3846 * 6600
nr = 3946rpm

これに変速機が付きます。変速機のギア比は 3.538、1.888、1.000、0.650 となります。
3.538 のとき最大出力の出せる速度は...

3946 / 3.538 * 0.03705 = 41km/h となります。

※マルチステージハイブリッドの発表会では 60km/h から使えるとの説明だったので、LC500h 基準で逆算するとジェネレーターの最高回転数は 8,000rpm 程度かもしれません。。。
とはいえ従来の THS II と同じだった場合は、この計算式だと 146km/h になるので、それより低く(1 / 3.538)なるのはおわかりいただけると思います。

まとめ

従来の THS II と違って低速時のトルクがかなり上がっているので、加速感がかなり向上するんじゃない?と期待してマルチステージハイブリッドを購入しました。
実際クラウンアスリートハイブリッドと比べてもだいぶ印象が変わりましたね。
ほんと買ってよかったと思っています(*´∀`*)
Posted at 2023/10/09 20:35:53 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ
2023年10月09日 イイね!

THS II の仕組みと計算方法(その3〘最終回〙)

THS II の仕組みと計算方法(その3〘最終回〙)
THS II の仕組みと計算方法、その3です。まずは「その1」「その2」を先にご覧くださいませ。

ジェネレーターの役割について

ジェネレーターって結構重要ですよね。車速とジェネレーターの回転数によってエンジンの回転数が決まるわけですから。
では、具体例を挙げてジェネレーターがどういう働きをしているか説明していきます。

発進時、加速時の動き

alt
発進時はタイヤが動いてませんよね、ということはトルクは均等に配分されたとしてもジェネレーターの方が多く回ることになります。つまりモーターがほとんど頑張ってることになるので、モーター出力が低かったりジェネレーターの発電量が少なかったりすると、エンジン回転数だけが上がって加速が追いついてこない「ラバーバンドフィール」になりがちです。最近の THS II ではモーター出力が上がったり上手く制御したりと、だいぶん解消されてきたという話を聞きます。

で、話をもとに戻すと。。。
ジェネレーターはエンジンの狙った回転数まで発電を控えめにし(トルクがかからないので、エンジンの回転数が勝手に上がっていく)、狙った回転数で発電を行います
このとき、動力分割機構で配分されたトルクとジェネレーターの発電トルクが一致すると、エンジン回転数がそこでキープできます。(厳密には車速が上がっていくので、トランスミッション出力側の回転数も見ないといけない)。

つまり、雑な言い方をするとジェネレーターの発電量でエンジン回転数の制御を行っているわけです。
マニュアルモードでギアアップしたときなんか、ジェネレーターの発電量を一時的に増やすことでエンジン回転数を落としてますから(トルクが急にかかるのでエンジン回転数が下がる)。

回生ブレーキ、EV での加速の動き

alt

次に減速時の動きです。エンジンは止まって回生ブレーキが行われる状況とします。
回転数の関係式を見てみましょう。

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne

エンジンが停止しているため、関係式は以下のようになります。

ng = -nr / ρ

つまりジェネレーターは逆回転してることになります。
ここでジェネレーターが発電し始めるとエンジンが回ってしまうので、空転しているだけになります。
なので、回生ブレーキはエンジンを停止、ジェネレーターは空転しつつ、モーターが発電しています。これは回生ブレーキにとどまらず、EV での加速も同じ状態です。

エンジン直結モード

THS II の構造を眺めてると必ずジェネレーターが挟まるから、高速走行時の効率が悪くなりそうと思われるかもしれません。実は速度によっては話が変わってくることもあります。
では、再び回転数の関係式を眺めてみましょう。

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne

この式を見るとジェネレーターの回転数が0になるタイミングがありそうです。
そう、つまりジェネレーターが回らないということは、エンジンがそのままタイヤに動力を伝えてる、理論上効率100%になる場所があるんです。
alt

※この図はマルチステージハイブリッドなので、理論上100%になる場所が4点あります

では、その点がどこにあるか計算してみましょう。
お得意の22クラウンです。

タイヤサイズや減速比を考えると、トランスミッションの回転数を車速に変換する式は以下のようになります。

車速km/h = nr / 2.937 * 2.073 * 60 / 1000 = nr * 0.04235

これをエンジン回転数に置き換えると…

nr = (1 + ρ) * ne なので
車速km/h = ne * 0.05864

じゃあ、高速道路を 1,300rpm くらいで巡航してるときの効率のいい速度はというと
1300 * 0.05864 = 76km/h
になるわけです。

メーター誤差も含めると、大体 80km/h 付近で走ってるのが THS II の一番効率のいい場所ってことになります。
みたいですよ!22クラウン乗りの方(*´艸`*)

番外編、エンジンブレーキ

回生ブレーキでバッテリーが満タンになってしまったらどうでしょうか?ブレーキが弱くなる?
実は THS II ではバッテリーが満タンになってしまうとエンジンが動き出して、エンジンブレーキに切り替わります。そうじゃないと長い下り坂ではブレーキが焼けてしまいますもんね。。。

先程ちらっと答えを言いましたが。そう、ジェネレーターが発電するとエンジンが回転し始めるんです。え、バッテリーが充電できないのに発電できる?そう、そこがポイントです。

実は、回生ブレーキと同じようにモーターで発電しています。で、その電力はバッテリーに入らないのでジェネレーターに渡します。ジェネレーターは受け取った電力で逆回転を抑える方向のトルクを発生させ、エンジンを空回転させるんです。(充電じゃなく放電して回転数を抑える無駄な動き💦)
これがエンジン車と全く同じエンジンブレーキです。もちろんエンジンを回すのはジェネレーターの電力などですから、ガソリンを消費することもありません。

まとめ

ジェネレーター(とモーター)って結構重要です。
基本的に使われているモーターは同期モーターですので、今の回転数が明確にわかります。ということは、発電してみるとモーターに掛かっているトルクや出力まで分かることになります。
動力分割機構は均等にトルクを配分しているので、ジェネレーターはエンジン回転制御のみでなく、エンジントルクの計測にも使えるんです。アクセルを一定に踏んだときエンジントルクが一定になるように、ジェネレーターが計測したトルクから制御することでスムーズな加速に寄与しています。

また、エンジンブレーキの項目でも軽く触れましたが、車速が分かっている(モーターが計測)のでどれくらいジェネレーターを回せばエンジンがどの回転数で回るかは計算することができます。
ハイブリッド車のエンジン始動がガソリン車と違って静かなのは、このジェネレーターの制御によるものが大きいと思います。

〜おわり〜

追記
マルチステージハイブリッドの魅力を伝えたくて番外編作っちゃいました(*´艸`*)
Posted at 2023/10/09 12:49:14 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ
2023年10月08日 イイね!

THS II の仕組みと計算方法(その2)

THS II の仕組みと計算方法、その2です。その1がまだの方は「こちら」を先にご覧くださいませ。

おことわり
これらの内容には非公開情報を仮定して求めている箇所がいくつもあります。
実際には異なる可能性があるためご注意ください。


前回のおさらいです

ρ = プラネタリーギア比
Te = エンジントルク
ne = エンジン回転数
Tg = ジェネレータートルク
ng = ジェネレーター回転数
Tr = 出力トルク
nr = 出力回転数

と置き換えて、プラネタリーギア比 ρ = 0.3846 でしたね。
トルクの分配は

Tg = (ρ / (1 + ρ)) * Te = 0.2778 * Te
Tr = (1 / (1 + ρ)) * Te = 0.7222 * Te

回転数の関係式は

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne

となります。
ではその2開始です。

ジェネレーターの最大回転数

回転数がエンジン・車速・ジェネレーターの3つで関係してくるため、ジェネレーターの最大回転数がどれくらいなのかを求める必要があります。
最近の諸元表には載っておらず非公開のままです。ちなみに初代プリウスでは 9,500rpm と公開されていましたが、はたして今はいくつなんでしょうか。トヨタの発言から計算で紐解いてみます。。。

まずキーとなるのが、マルチステージハイブリッドの発表会で伝えられた「従来のシステムでは、エンジンの最高出力を使用できるのは車速が約120km/h以上の領域に限られていた」という言葉です。
計算してみましょう。
alt


まず「従来のシステム」とは、従来の V6 ハイブリッドですので、GS450h を基準に考えてみます。

エンジン出力: 217kW / 6,000rpm
タイヤサイズ: 235/45R18
減速比: 3.266

ではまず、120km/h のときトランスミッションはどれくらいの速度で回転しているか。

タイヤの外周(mm) = (235 * 0.45 * 2 + 18 * 25.4) * π = 2100mm = 2.10m
120km/h のときのタイヤ回転数(rpm) = 120 * 1000 / 60 / 2.10 = 952.4rpm
その時のトランスミッション回転数(rpm) = 952.4 * 3.266 = 3111rpm

この回転数のとき、エンジンは最大出力の 217kW を使えてるはずなので 6,000rpm で回ってることになります。
これを回転数の式に代入します。

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne より
0.3846 * ng + 3111 = (1 + 0.3846) * 6000
0.3846 * ng = 5196.6
ng = 13,512rpm

つまり 120km/h でエンジンが最大出力出しているとき、ジェネレーターは 13,512rpm で回っていることになりますので、これが最大回転数となります。まぁ誤差もあるので概ね 13,500rpm にしておきましょう。(*´ω`*)

THS II のシステムトルク計算

THS II ってシステム出力は記載されてますが(システム出力 = エンジン + バッテリー供給)、システムトルクって記載されてませんよね。
そりゃそのはずです、だってトランスミッションが出力するトルク(変速後のトルク)しか出せないからです。でもそれでは面白くないので、変速前に無理やり換算して「相当」という表現で計算してみようと思います。

15代目クラウン(2.5L モデルのケース) (AZSH20)

何かを計算するには、まずモデルを仮設定しないといけません。
自分が乗っているクラウンとグレード違いの、いわゆる22クラウンについて考えてみたいと思います。(写真はマルチステージハイブリッドですが、そっちじゃない方)
alt


エンジン出力: 135kW / 6,000rpm
エンジントルク: 221N・m / 3,800-5,400rpm
モーター出力: 105kW / 3,342rpm 以上
モータートルク: 300Nm / 0-3,342rpm
システム出力: 166kW
タイヤサイズ: 225/45R18
減速比: 2.937

※諸元表にモーターの回転数表記はありませんが、定出力特性があるモーターとすればトルクと出力から求めることができます
※システム出力からバッテリー供給は 31kW と求めることができます。
※リダクションギアが備わってますので、モーターには変速比 3.9 / 1.9 を介します(マルチステージハイブリッドの資料より)

では計算していきます。まずトルク配分です。

Tg = (ρ / (1 + ρ)) * Te = 0.2778 * Te
Tr = (1 / (1 + ρ)) * Te = 0.7222 * Te

この式より、エンジンの最大トルク 221N・m は、ジェネレーターに 61N・m、出力に 160N・m 配分されます。回転数の関係式よりジェネレーターがたくさん回る方が車速が低いので、ジェネレーターは 13,500rpm と仮定します。
では、その時の車速は?トランスミッションの回転数は、回転数の関係式より以下になります。

エンジンが 3,800rpm のとき

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne より
0.3846 * 13500 + nr = (1 + 0.3846) * 3800
nr = 69.38rpm

同様にエンジンが 5,400rpm のとき 2,285rpm です。
ただし、モーターは変速比が 3.9 のリダクションギアを介しますので、最大トルクが出せる回転数は 3,342rpm / 3.9 = 856.9rpm までです。
つまり、トランスミッションの出力が 69.38〜856.9rpm のときに最大トルクを出せることができます。これを車速に置き換えると。。。
※タイヤサイズは 225/45R18 なので、外周は 2.073m です

69.38rpm のとき車速は...
タイヤの回転数 = 69.38 / 2.937 = 23.62rpm
その時の時速 = 23.62 * 2.073 * 60 / 1000 = 3km/h

856.9rpm のとき車速は...
タイヤの回転数 = 856.9 / 2.937 = 291.8rpm
その時の時速 = 291.8 * 2.073 * 60 / 1000 = 36km/h

ちなみにその時のトランスミッションが出力するトルクは、エンジンから160N・mとモーターから300N・m * 3.9 = 1170N・m を加算した、計1,330N・mです。

なので、時速3〜36km/h のとき、最大トルクが 1,330N・m となります。
これを従来のエンジントルク相当に置き換えます。リダクションギアと同様に1速の変速比を 3.9 と代用すると 1,330N・m / 3.9 = 341N・m になります。

つまり...
時速3〜36km/h のとき、最大トルクは 341N・m 相当になる。ということです。
要するに低速時はほとんどモーターが頑張ってて、エンジンは41N・m相当しか出してないということです。

エンジン「発進頑張ります!」
モーター「おう、もっと頑張れよ」
エンジン「サーセン!!」

みたいな感じです。

ここまで説明してきて、ジェネレーターって重要だと思いません?
次はジェネレーターの役割について説明してみます。(長すぎてその3になっちゃった...)

追記
その3公開しましたー!
Posted at 2023/10/08 11:57:38 | コメント(2) | トラックバック(0) | クルマ
2023年10月07日 イイね!

THS II の仕組みと計算方法(その1)

THS II の仕組みと計算方法(その1)こんにちは、機械オタクのベルメーゼです。
実は THS II は結構興味があって、とことん調べつくした結果マルチステージハイブリッドに興味を持って、わざわざ3.5Lの22クラウンを購入したわけなんですが。もしかしたら THS II の調べた内容、需要あるんじゃないかと思ってチマチマ書いていこうと思います。。。
もし誰かの疑問が解決出来たらいいなぁと思ったり、思わなかったり。。。

THS II の仕組み

THS II っていわゆるシリーズ・パラレルハイブリッドと呼ばれる仕組みで、e-POWER のようにモーターのみでも走行できるし(シリーズ式)、エンジンを主体としてアシストもできるし(パラレル式)、両方の特性を備えているのが特徴です。
他の仕組みと呼び分けるためにスプリット式と呼ばれることもありますね。

THS II は、エンジンと2個のモーター(ジェネレーターとモーター)、そして動力分割機構(プラネタリーギア)を備えているのが特徴です(図のリダクションギアが無いモデルもあります)。
alt

簡単に流れを説明すると、エンジンが出した力を動力分割機構がジェネレーターとタイヤに振り分けます。ジェネレーターが発電した力をバッテリーに充電するなり、モーターに流すなりして、モーターはタイヤへの力をアシストするという流れです。
alt

実はこの動力分割機構が面白い働きをしていて、エンジン・ジェネレーター・タイヤの回転数が常に影響しあっているので、CVT のような働きをするんです。
タイヤの回転(=車速)が一定であれば、エンジンの回転数を上げるとジェネレーターの回転数も上がるし、エンジンの回転数が一定であれば、車速が上がるとジェネレーターの回転数が下がるという感じです。
じゃあなんでそんなことになるの?っていうのをまとめてみます。

プラネタリーギアの仕組み

プラネタリーギアはギアの歯数に応じてトルクを分割する機能があります。それと同時に回転数を変える仕組みも持っています。これはつまり出力は一定なのでトルクを上げる代わりに回転数を下げたり、逆にトルクを下げる代わりに回転数を上げることもできるということです。この特性のおかげで、今のステップATには欠かせないものとなっていますよね。(具体的な機構に関しては、調べるとたくさん資料が出てくると思うのでそちらを参考に...)

alt

では、THS II の場合はどうなってるか。
エンジンはキャリア(プラネタリーキャリア)に、ジェネレーターはサンギアに、出力はリングギアにつながっています。
プラネタリーギア比は「サンギア歯数 / リングギア歯数」で求めることができます。

で、THS II には肝心のプラネタリーギア比が公開されていません。というわけで皆さん分解して歯数を数えてみましょう!
ってのは冗談で、2代目プリウスを分解した際に歯数が分かっていて、サンギアが30枚、リングギアが78枚、プラネタリーギアが23枚だそうです。多分今も変わってない可能性は高いと思います(制御が変わると思うので...)

となるとプラネタリーギア比は 0.3846 になります。
で、以降日本語は面倒なのでアルファベットに置き換えてもいいでしょうか。。。ここから数学です。。。

ρ = プラネタリーギア比
Te = エンジントルク
ne = エンジン回転数
Tg = ジェネレータートルク
ng = ジェネレーター回転数
Tr = 出力トルク
nr = 出力回転数

この時キャリアに入力されるエンジントルクは以下のように分割されます

Tg = (ρ / (1 + ρ)) * Te = 0.2778 * Te
Tr = (1 / (1 + ρ)) * Te = 0.7222 * Te

大体ジェネレーターに 28%、出力に 72% くらいですね。
また、回転数の関係式も書いておきます。。。

ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne

これがプラネタリーギアの特性です。じゃあこれが何の役に立てるの!?ってめちゃくちゃヤジが飛んできそうですが、ちょっと長くなりましたので次の回を用意します💦

追記
その2公開しました!
Posted at 2023/10/07 10:59:18 | コメント(3) | トラックバック(0) | クルマ

プロフィール

「走るほど楽しいトランスミッションとV6エンジン http://cvw.jp/b/2785274/46939546/
何シテル?   05/07 07:27
ベルメーゼです。よろしくお願いします。 メーカー問わず、回転数を上げずに余力ある走りが好きです! 無言フォロー失礼します 最近クラウン乗り換えました ...

ハイタッチ!drive

みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2023/10 >>

123456 7
8 9 1011121314
15161718192021
22232425262728
293031    

リンク・クリップ

洗車記録 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2024/11/09 21:03:38
【ほぼポン付け】LS500F用アシストグリップ流用 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2022/12/02 19:18:35
ロードノイズを科学的に分析してみる 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2022/09/01 09:33:21

愛車一覧

トヨタ クラウンハイブリッド トヨタ クラウンハイブリッド
レクサス車にも採用されているマルチステージハイブリッド、絶滅危惧種であるV6エンジンに魅 ...
トヨタ タンクカスタム トヨタ タンクカスタム
スマートアシストIIIになるのを知ってたので、それに合わせて購入 奥さんの車で、坂道が多 ...
ホンダ VTR250 ホンダ VTR250
出力は小さいけど、軽くて乗りやすいバイクでした 背が高いのでちょっと窮屈、高速道路はしん ...
トヨタ クラウンアスリート ハイブリッド トヨタ クラウンアスリート ハイブリッド
大きいのに凄く小回りが効いて、意外と運転しやすいです 基本的にノーマルです、カスタムした ...

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2024年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2021年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation