THS II の仕組みと計算方法、その3です。まずは「
その1」「
その2」を先にご覧くださいませ。
ジェネレーターの役割について
ジェネレーターって結構重要ですよね。車速とジェネレーターの回転数によってエンジンの回転数が決まるわけですから。
では、具体例を挙げてジェネレーターがどういう働きをしているか説明していきます。
発進時、加速時の動き
発進時はタイヤが動いてませんよね、ということはトルクは均等に配分されたとしてもジェネレーターの方が多く回ることになります。つまりモーターがほとんど頑張ってることになるので、モーター出力が低かったりジェネレーターの発電量が少なかったりすると、エンジン回転数だけが上がって加速が追いついてこない「ラバーバンドフィール」になりがちです。最近の THS II ではモーター出力が上がったり上手く制御したりと、だいぶん解消されてきたという話を聞きます。
で、話をもとに戻すと。。。
ジェネレーターはエンジンの狙った回転数まで発電を控えめにし(トルクがかからないので、エンジンの回転数が勝手に上がっていく)、狙った回転数で発電を行います。
このとき、動力分割機構で配分されたトルクとジェネレーターの発電トルクが一致すると、エンジン回転数がそこでキープできます。(厳密には車速が上がっていくので、トランスミッション出力側の回転数も見ないといけない)。
つまり、雑な言い方をするとジェネレーターの発電量でエンジン回転数の制御を行っているわけです。
マニュアルモードでギアアップしたときなんか、ジェネレーターの発電量を一時的に増やすことでエンジン回転数を落としてますから(トルクが急にかかるのでエンジン回転数が下がる)。
回生ブレーキ、EV での加速の動き
次に減速時の動きです。エンジンは止まって回生ブレーキが行われる状況とします。
回転数の関係式を見てみましょう。
ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne
エンジンが停止しているため、関係式は以下のようになります。
ng = -nr / ρ
つまりジェネレーターは逆回転してることになります。
ここでジェネレーターが発電し始めるとエンジンが回ってしまうので、空転しているだけになります。
なので、回生ブレーキはエンジンを停止、ジェネレーターは空転しつつ、モーターが発電しています。これは回生ブレーキにとどまらず、EV での加速も同じ状態です。
エンジン直結モード
THS II の構造を眺めてると必ずジェネレーターが挟まるから、高速走行時の効率が悪くなりそうと思われるかもしれません。実は速度によっては話が変わってくることもあります。
では、再び回転数の関係式を眺めてみましょう。
ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne
この式を見るとジェネレーターの回転数が0になるタイミングがありそうです。
そう、つまりジェネレーターが回らないということは、エンジンがそのままタイヤに動力を伝えてる、理論上効率100%になる場所があるんです。
※この図はマルチステージハイブリッドなので、理論上100%になる場所が4点あります
では、その点がどこにあるか計算してみましょう。
お得意の22クラウンです。
タイヤサイズや減速比を考えると、トランスミッションの回転数を車速に変換する式は以下のようになります。
車速km/h = nr / 2.937 * 2.073 * 60 / 1000 = nr * 0.04235
これをエンジン回転数に置き換えると…
nr = (1 + ρ) * ne なので
車速km/h = ne * 0.05864
じゃあ、高速道路を 1,300rpm くらいで巡航してるときの効率のいい速度はというと
1300 * 0.05864 = 76km/h
になるわけです。
メーター誤差も含めると、大体 80km/h 付近で走ってるのが THS II の一番効率のいい場所ってことになります。
みたいですよ!22クラウン乗りの方(*´艸`*)
番外編、エンジンブレーキ
回生ブレーキでバッテリーが満タンになってしまったらどうでしょうか?ブレーキが弱くなる?
実は THS II ではバッテリーが満タンになってしまうとエンジンが動き出して、エンジンブレーキに切り替わります。そうじゃないと長い下り坂ではブレーキが焼けてしまいますもんね。。。
先程ちらっと答えを言いましたが。そう、ジェネレーターが発電するとエンジンが回転し始めるんです。え、バッテリーが充電できないのに発電できる?そう、そこがポイントです。
実は、回生ブレーキと同じようにモーターで発電しています。で、その電力はバッテリーに入らないのでジェネレーターに渡します。ジェネレーターは受け取った電力で逆回転を抑える方向のトルクを発生させ、エンジンを空回転させるんです。(充電じゃなく放電して回転数を抑える無駄な動き💦)
これがエンジン車と全く同じエンジンブレーキです。もちろんエンジンを回すのはジェネレーターの電力などですから、ガソリンを消費することもありません。
まとめ
ジェネレーター(とモーター)って結構重要です。
基本的に使われているモーターは同期モーターですので、今の回転数が明確にわかります。ということは、発電してみるとモーターに掛かっているトルクや出力まで分かることになります。
動力分割機構は均等にトルクを配分しているので、ジェネレーターはエンジン回転制御のみでなく、エンジントルクの計測にも使えるんです。アクセルを一定に踏んだときエンジントルクが一定になるように、ジェネレーターが計測したトルクから制御することでスムーズな加速に寄与しています。
また、エンジンブレーキの項目でも軽く触れましたが、車速が分かっている(モーターが計測)のでどれくらいジェネレーターを回せばエンジンがどの回転数で回るかは計算することができます。
ハイブリッド車のエンジン始動がガソリン車と違って静かなのは、このジェネレーターの制御によるものが大きいと思います。
〜おわり〜
追記
マルチステージハイブリッドの魅力を伝えたくて
番外編作っちゃいました(*´艸`*)
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2023/10/09 12:49:14