
以前、ナカミチのアンプを落札したのですが、数分で電源が入らなくなりました。
機種はPA302S でかなり以前の物です。このアンプはパワーアンプ部はディスクリート形式で家庭用オーディオのような贅沢な設計です。大抵はドライバー部はパワーICが使われています。アルパインも例外ではありません。
仕方ないので少しずつ調査・修理していこうと思い経過をメモ。
到着後にすぐに動作確認し動作はしましたが数分したら音が出なくなりました。そして電流計も低く電源が切れてしまっているようでした。
症状としては「電源が入らない」という事になります。
ヒューズも切れていません。
裏蓋を開けてみましたら、基板の裏が見えます。厄介ですねー
全てばらさないと基板のパーツ類が見えないのです。
基板を筐体から外していきます。
これは、修理中の画像ですが、電源部とアンプ部が分かれています。
放熱グリスなど全て拭き取る必要があります。
実はこのアンプはコンデンサー等が交換されているのです。一度は人の手が入ったものは経験的に厄介です。民間の修理屋さんでもミスはあるし、メーカーの組み立てでも些細なミスもあったし。
とりあえず、アンプ部は壊れていないと判断。
アンプ部へのケーブルを外して回路を調査してみます。
電源部です。ちよっと複雑ですね。回路図等は無いので基板のパターンからある程度調査が必要です。毎日少しずつ解析していきます。
・バッテリーからの電源は、チョークコイル~一時側コンデンサーは常時通電しています (一時側は4700μF/16Vを2個並列)
・パワーTrが8個並んでいます。スイッチング回路です。これも常時印加されています。
・リモート回路はTrに電圧が掛かることでPWMのICでパルスを発生させます
・パルスによりTrのスイッチングでAC発生し高周波トランスで昇圧~整流ダイオード~平滑コンデンサーで高電圧DC化
・高周波トランスはタップがあり電源は二つとなってます。
・1つはサンケンのダイオードで大電流を整流し約±35Vの電圧を発生。これがパワー部でしょう。ダイオードは放熱板に付けられています。
・もう一つはドライバー段だと思われます。小電流でブリッジダイオードで整流しています。電圧は±40V付近です。定電圧回路はツェナーとTrです。
・パワー側の電圧調整と思われる半固定抵抗があります。
・パワー側はチョークコイルが±それぞれあります。
・パワー側の平滑コンデンサーは220μF/63Vがオリジナルと思われます
◆画像での説明
・右上のIC はPWMコントローラーICでNEC製です。
・上の放熱板接続アルミ板には4個ずつ計8個のTrが並んでいます。
・左上のコンデンサーは、バッテリーに接続したら常時電圧が掛かっているスイッチング一次側のコンデンサー。これは電源用で長寿命品が必要と思われます。
・左側のトランスはチョークです。
・右側は高周波トランスで一次側センタータップあり、二次側センタータップと2回路分のタップがあります
・右横のTrは40V位の平滑回路、ブリッジとコンデンサーと定電圧回路のTrとツェナーです。
・右下はパワー側電圧調整用の半固定抵抗です
・中央下のコンデンサーはパワー用です。プラス側マイナス側それぞれ220μF/63V
・右下コイルはパワー側フィルター用コイルと、放熱板に接続された平滑用ダイオードです。
・左下がサーミスターとリモートからの電源ON制御と保護回路類?です。
◆テスターにて調査
・一次側の不具合〇
一次側の平滑回路は14Vで正常に動作しています。リップルも2mV位です。
Trにパルスが来ていないようです。
高周波トランスにもACは流れてません。ですからスイッチング回路が怪しい。
・リモート回路の不具合△
まずはリモートの経路は4個並んだTrに接続されています。そしてPWMコントローラーのICのVCCに接続されていますのでまずはそれを測定。ICへの電圧が6V位しかありません。動作しないはずです。
通常は12V以上で動作し始める筈です。
どうも4個のTr付近があやしいです。
大体の目星をつけて部品類を発注していきます。
・NECのTrは偽物らしきものがヒット。東芝製の2sc1815が代用できそうです。
PNPは2sa1015でしょうか。2sc1815はアルパインを整備した時で購入したので交換しましたが治らず。どうせならオリジナルのNEC製を発注。
・コンデンサーは交換されていますが、型名で調査しましたら標準類か2000時間程度の寿命品ですから、この際、電源系は105°Cで長寿命品に変えることにしました。低ESRタイプでかつ長寿命とし、いくつかの通販サイトで発注。
5000時間から10000時間の物はなかなか手に入りません。
オーディオ用は大抵は2000時間以下で83°Cです。オーディオ用でゴールドとかありますが寿命は短いです。SW電源部に使用しても意味ありません。コンデンサーの価格もオペアンプの良いものと標準品のような凄い価格差ではないので、コンデンサーは奮発し良いものを選択します。消耗品ですからね。
制御系のコンデンサーも105°Cで良いものを。価格も数十円~ですがまとめて購入しますので、他のアンプの修理にも使えます。交換されていたコンデンサーの容量がアップされていましたが、あまりにも大きいと電源ONでかなりの突入電流が流れますから容量アップの程度を考えないと駄目ですね。何でも高容量が良いとは限りません。
パーツが揃ったら一つずつ交換~測定で壊さないようにしないと駄目ですね。
むやみに交換したら訳が分からなくなります。
◆コンデンサー交換
一次側は3300μF/16Vに交換 2個
二次側は220μF/63Vに交換 それぞれ計4個
その他のコンデンサーも全て交換(コンデンサーは消耗品です)
左のゴールドの物も83°Cでしたので、取り外し105°C長寿命品に交換
◆トランジスター交換
左下の5個(多分1つが不良)交換(全てオリジナルのNEC製に)
右下の半固定抵抗器も後々交換しました。調整していたらガリで電圧がバラツキました。
◆確認作業
・リモート電圧印加しTrが動作するのを確認
・PWMコントローラーICへの電圧印加13.1V確認
・高周波トランスへのAC印加状態OK
テスターの周波数は約50KHzでした。
・二次側トランス電圧20v以上ありOK
・二次側パワー用電源電圧約+33V-33VでOK
リップルは約2mV(テスターにて)
・ドライバー段用電源電圧約+39.8V-39.8VでOK
放電用の抵抗は無いのでショートしないように(コンデンサは痛みます)
テスターに数100オームの抵抗を付けて放電
・半固定抵抗にて二次側パワー用の電圧変化OK(33Vに一応調整)
電源電圧としては問題ないようです。回路図が無いので何とも言えませんが・・・
これでアンプ部の整備をしてケーブル類を取り付けて再確認となります。
半田状態も確認して丸く山状になっていたのは吸い取りして再半田。
半田付けも個人により特徴があるみたいです。多く付ければ良いとは限りません。
追加されていたパスコン類は全て取り外し。オリジナル状態としました。
動作確認が完了してからの調整で必要となったら追加します。
ナカミチのこの時代の基板はパターンが剥がれやすいようです。基板側に押さないように注意です。スルーホールではないので。
これだけでも一週間以上かかっています。回路解析と部品が複数のお店に発注ですからね。いまだに一部の部品は届いていません。壊れてませんでしたから良かったですけどね。
動いているパワーアンプ(壊れていない)の消耗品(コンデンサー)交換は誰でも出来ると思いますから、是非挑戦してほしいですね。でも一度手にかかったもの(改造等)はメーカーは修理してくれませんから注意です。