
故障が発覚した"TC ELECTRONIC M-ONE"をばらして調査していきます。
修理可能なら部品を発注し、可能なら修理していきます。
タイトル画像は無事修理完了したものです。
症状として、6年程放置して使おうと思い電源を入れたらおかしな表示の為、
リセット(ENTERボタンを押しながら電源を入れる)操作をしましたが、リセット後も表示は正常にならずもちろん動作しないというものです。
内部の回路構成がどうなっているのか調べる為、分解していきます。
※今回は自動車関係以外の方で音響関係の方も見られると思いますのでいつもより詳しく書きます。
・ラックの耳をトルックスレンチで外す
・フロントパネルをスライドして筐体から取り外す
・リアパネルのTRSの入出力ジャックの留め具を小型モンキーで取り外す
・デジタルIOとその他の取り付けネジを外す
・上側の特殊+ネジを舐めないように標準より一つ小さい+ドライバーで外す
すると画像のように上とリアパネルが外せます。
内部の構成ですが、左側の基板はスイッチング電源です。
右側の基板はマルチエフェクター処理とAD-DA変換、そしてアナログIOとなっています。
電源からの配線は基板の左側はデジタル処理回路ですので赤が+5V、黒がGND、緑が+3.3Vとなります。
右側はオペアンプとフロントの表示回路の為の正負電源です。黄色が-15V、青がGND、オレンジが+15Vです。
最も考えられるのがスイッチング電源故障です。
消耗品の電解コンデンサーが最も怪しいです。
調査として各電圧をテスターで測定します。
測定しましたが一応各電圧はあったのです。5Vラインで+4.8V程度で若干低いのですが不良の確信は持てません。アナログ回路の方の±15Vもありました。
次にテスターをAC測定に切り替えます。これでDC部分にACのリップルが乗っていないか調べることが出来ます。
すると通常は100mV以下のはずが数Vもあるのです。
多分電源部分が壊れかけていて完全じゃないので、動作が中途半端(リセットから動かない)になるのだと考えられます。
とりあえず、基板を外して電源部分だけにして詳しく調べます。
電源とコントロール部のケーブルの半田を上手く取らないと両面配線のスルーホール基板ですから、熱で基板を壊さないように注意が必要です。
調査中に気づいたのですが、電源スイッチは回路が働くだけのスイッチで、
電源部分はコンセントを入れていたら常時通電していますので、分解するときは必ず
コンセントを抜かないと感電やショートします。
スタジオではACパワーサプライで、一括で電源のON/OFFをやっていると思いますから大丈夫だと思いますが、常にコンセントをAC100Vに入れておくとあっという間にコンデンサの寿命を迎えますので注意です。電源を入れてなくても経年で劣化するそうです。まぁ自動車のオイルみたいなものですね。走らなくても交換です。
スイッチング電源単体でテスターで調査しましたが、半導体パーツは正常に働いていました。一つ派手にコンデンサーが膨らんでましたので、この時点で電解コンデンサー10個を発注かけました。
画像は全てのコンデンサーを交換していますが、電源以外が壊れていたら交換したパーツは無駄になりますので、
初めにスイッチングの一次側22μF/400V(100μ/200Vに変更)と二次側デジタルラインの電源の平滑用1000μF/6.3V(1000μF/10V)と+5V出力部分の470μF/10V、3.3V出力部の470μF/10Vのみ交換して、6本の電源ケーブルを基板に半田付けして電源入れ確認しました。+5Vと+3.3Vはテスターで正常です。ACリップルもなし。
これでリセット操作とリセット後の動作を確認しましたら動作OKでしたので、電源部分の残りのコンデンサを交換しました。
上から多分電解液を吹いたものと考えられます。
軽くプリセットプログラムの確認や、システム設定、IO設定などを確認したら組み立てです。
使用した工具類
フロントパネルは横からスライドで
リアパネルも元に戻します。
ちょっとプリセットしてユーザーエリアに保存しました。
とりあえずデジタルインだけ確認しました。
アナログ回路のコンデンサーは交換していませんが、様子を見て必要なら交換します。ちなみにオペアンプは"NE5532A"でした。まだマシですし色付けがあまりないスタジオの定番オペアンプですね。JRCのNJM5532とほとんど同じです。
無事修理出来て良かったです。これはほとんど使っていないですしね。イベントライブ用
位でしょうか? サブアウトボードの位置付けでした。
SONYのDPS-V77も久しぶり電源入れたらキーを受け付けなくなってました。
こちらは電池交換でいけると思います。
コンデンサーでも色々あるのですよ。日本製は寿命も長いのですが海外製のコンデンサは酷いです。電解コンデンサに関しては、日本製にしても標準で1000時間、長寿命で10000時間があります。許容温度係数もありますが今回は、105°Cで電源用で寿命は3000~5000時間の物に交換しましたのでしばらくはいけるでしょう。どちらにしても電解コンデンサーは消耗品です。
古いものは定期的なメンテナンスが必要です。そしてこれはチューニングではなく必要不可欠なものです。もしアナログ回路のオペアンプを最新の高いものに交換したりコンデンサをオーディオ用に交換したらチューニングと言えるかもしれませんね。
こういう業務用で音づくりに関するものはユニット自体の音や個性を求めることになります。どんなオペアンプが入っていてもこのメーカーのこの機種の音というものが存在します。ですから部品を良いものに単に交換して高く売るという概念はあまりないです。
それが再生する側と制作側の違いという面があるのかも知れません。
改造しているミュージシャンもいますけどね。まぁお遊びです。
とりあえず修理出来ましたので、これにデジタル接続してイコライザのプリセットをEDITしてみます。
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Posted at
2020/08/01 22:49:31