
最近、トヨタのサブスクリプション(定額利用)サービス、KINTOのテレビCMが目立ってきました。KINTOは、2019年2月に東京で開始後、7月に全国展開を開始しました。2019年11月までの申込件数は、951件ということです。内容としては、申込み割合が店頭が35件、ウェブ経由が646件で、特に20~30代の8割がウェブ経由で、特に午後8時以降に行われているということです。(自動車新聞2020年1月15日の記事より)
951件というのは、決して大きい数字とは思えませんが、取り扱い車種の少なさ、さらに契約期間も3年のみ(KINTO ONE)で、マイカーリースにある5~7年がないことが理由の一つかと思います。
しかしながら、このサブスクですが、利用者が本当にお得なのかどうか良く理解できないという点が最大の理由ではないかと考えています。日本では、マイカーリースは、法人を除けば、ほとんど浸透していません。ディーラーのセールスマンに聞いてもリースは良く分かないという答えが返ってきましたし、特別な専門的な教育も受けていない様です。
クレジット(残価ローンも含む)は、割賦販売法に準拠して債務者の保護が図られていますが、リースは、日本において、法律的な位置づけが明確でなく、特別な業法で規制されている訳ではないため、消費者の保護が充分ではない可能性もあり、契約に際しては、事前に契約書を読み込み(特に中途解約)理解した上で、契約を締結すべきです。
サブスクもまた法律的な位置付けが明確でなく、リース取引の一部としてサービスが提供されているものと察します。(変形リース?)
前置きが長くなりましたが、今回は、KINTOのサブスクが本当にお得かどうか、検証してみたいと思います。以下が、KINTOのウェブサイトから抽出した情報(ヤリス、X、GAS、2WD)です。まず、最も着目すべき点としては、サブスクは、月々の支払額が、一定であるということが挙げられます。
車を現金で一括購入した場合、またはローンを活用して購入した場合には、所有者(または利用者)が自らの名義で任意保険に加入しますのが、所有者等の年齢・運転歴等の属性によって保険料が大きく異なります。
この異なる保険料を一律にして、KINTOは、年令に関わらず一律の月次支払いを設定した結果、KINTOでは、利用者の年令・運転歴等によって勝ち負けが生じてきます。
例えば、35才以上の利用者は、KINTOより現金一括購入した方がお得という事になります。(以下、表参照)ただし、現金一括払いの購入者は、自ら任意保険の加入、自動車税の支払い等行うという煩わしさは残ります。
一方、21才未満の利用者の場合は、圧倒的にKINTOがお得ということになります。
上記は、KINTOのウェブサイトから抽出した数値(2020年4月25日現在)ですが、果たして、購入者が現金一括払い、または残価設定ローンを活用して車を購入した場合、本当にKINTOがお得なのかどうか検証してみたいと思います。
以下は、35才以上という限定で、トヨタのメンテナンスパックを利用し、任意保険を自ら加入した場合のケースです。現金一括購入または残価設定ローンの方が、KINTOよりお得という事になります。
結論として、KINTOのサブスクは、毎月定額という簡便さがある中で、若い方にはメリットが大きいと言えそうですが、任意保険における等級が高い方(~20等級、20等級が最大で保険料が最も安い)には、中々その経済的なメリットを見出すのが難しいかも知れません。
サブスクと残価設定ローンとは、月次の支払額(39,930円 vs 39,596円)が然程変わらないという事も言えますが、上記の試算では、残価設定ローンの金利を6%という高い水準に設定していますし、3年後の下取り価格(737,044円)も実際はもっと高くなると期待できることを考慮しますと、残価設定ローンの月次支払額は低下する筈です。
さらに、残価設定ローンは、クレジットの利用者には馴染みのある割賦販売法で、消費者が保護されていますが、サブスクは、まだ馴染みのないリース契約でリスクの所在が良く分かりません。
従いましては、総合的に鑑みてサブスクよりは残価設定ローンに軍配が上げたいと思います。
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Posted at 2020/04/25 17:40:35 | |
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