
(2) 残価設定ローンの基本的構造
① 残価設定ローンとスタンダード・ローン
残価設定ローンには、借入期間の満了時に提示した下取り価格を保証(ただし、走行距離、修復履歴等の一定の条件をクリアしなければならない。)するクローズ型(・エンド)と保証せず、下取り時にその時の市場の時価とで清算するオープン型(・エンド)がありますが、ここではクローズ型に絞って説明させて頂きます。なお、オープン型は、余程のこと金利が低くない限り、全くメリットの無いローンと考えられ、検討する余地すらないというのが筆者の見解です。
まずは、一般的なスタンダード・ローンと残価設定ローンでどちらがお得かを検証してみましょう(表2)。以下は、日産の販売店でノートを5年間の残価設定ローンとスタンダード・ローンをそれぞれ活用し購入する場合の支払金額の比較となります。
上記表2で分かる通り、残価設定ローンの方がスタンダード・ローンより月々の支払金額が少ないものの、5年間の支払総額が7万円ほど高いことになります。ただし、残価設定ローンの最終回の支払いは、車を返却(代物弁済)することで足りますので、キャッシュアウト(現金支払総額)でみれば、残価設定ローンの方が57万円ほど低いことになります。
要するに、スタンドローンを活用した方が、5年後に車を売却する場合に、58万円以上で売却できればスタンダード・ローンを活用した方がお得、58万円未満でしか売却できなければ、残価設定ローンを活用した方がお得という結果となります。
既にお気づきかと思いますが、残価設定ローンがお得か、スタンダード・ローンがお得か?は、「金利」と「残価」の相関関係(「金利」∞「残価」)により決まります。
スタンダード・ローンを活用した場合におけるローン契約終了時の残価は、ローン契約の締結時には分かりませんので、契約時に契約終了時の残価を推定しなければならないという面倒臭さがあります。しかしながら、最近では、多くの中古車買取業者がウェブサイトを通じて充分な情報を公表していますし、トヨタのウェブサイトでは、国産車ならほとんどのモデルの下取り価格を検索することも可能です。
繰り返しになりますが、残価設定ローンがスタンダード・ローンより有利かどうかは、以下の2要素が重要となります。
1)金利がスタンダード・ローンの金利より低いこと
仮に、残価設定ローンの残価とスタンダード・ローンの契約終了時の想定残価が同一とした場合、残価設定ローンの金利支払総額がスタンダード・ローンより低くないけません。最近では、ウェブサイトで、残価設定ローンにせよ、スタンダード・ローンにせよ金利計算ツールを利用し、簡単に支払金額や金利支払総額を計算することができます。
(例、https://keisan.casio.jp/exec/user)
具体的に、上記のニッサンのノートのケースで、スタンダード・ローンの金利が4.9%としたら、残価設定ローンの金利が3.8%以下となれば、金利支払総額は残価設定ローンの方がお得ということになります。(以下、表3)
2)残価設定ローンの残価が予想される市場価格以上であること
残価設定ローンの残価は、契約時に決まりますが、スタンダード・ローンは契約の締結時に自ら予想するしかありません。しかしながら、契約の締結後、借入の返済が始まりますが、残価設定ローンの残価がスタンダード・ローンの想定残価(すなわち、その時に市場価格)を下回ると予想できたら、中古車市場で最も高く買ってくれる買取業者に売却すれば良いことになります。この方法により、少なくても残価設定ローンの残価を担保できます。(最悪、残価設定ローンの残価で下取りが可能、市場価格がそれ以上であれば、市場で売却すれば良い。)
例えば、マツダ車のデミオなどは、3年間の残価設定ローンの場合、55%という大変高い残価率が設定されています。デミオの中古車市場では、3年後の買取価格はせいぜい50%程度と想定(筆者調べ)されますので、マツダの残価率は、市場価格より5%(=55%-50%)も高いことになります。デミオXDツーリングの新車価格が180万円(消費税抜き)としますと、残価設定ローンを活用した場合、この5%というっ筋は、3年後の下取り価格が9万円ほど高くなることを意味します。この9万円という差額がスタンダード・ローンと残価設定ローンの金利支払総額の差額より高い場合には、残価設定ローンを選択する方がお得だということになります。
(次回に続く)
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Posted at 2019/05/09 20:44:05 | |
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