冬期の電費悪化(EV航続距離低下)の要因はいろいろありますが、それらの内訳・寄与を試算しようと思います。
・試算条件は、春のベストコンディション条件として外気25℃・空調オフ条件、冬は暖房我慢条件として外気5℃・空調オフ条件と、そこそこ快適条件として外気5℃・最小限の暖房実施条件の3種類とします。
乗車2人、速度は街乗りとして平均30km/hとしました。タイヤはADVANdBV552。(その他のタイヤでも数値の傾向は類似と思います。)
まずは計算式ですが、以前紹介したエクセルツールで計算しました。
・転がり抵抗損失Prですが、先週、気温と転がり抵抗の関係のグラフを作ったので、これから読み取ります。
外気5℃では、25℃時の1.2倍となります。
・補機・空調消費Pauxですが、春のベストコンディション時は、基礎代謝のみで、220W(実測ベース)としました。
冬のそこそこ快適条件時は、運用実績から、600Wとしました。
基礎代謝220W+シートヒータ2席(強:120W)+ヒートポンプ微弱運転想定です。
・電池損失Plossbatですが、Plossbat=Ibat^2×Rdcで計算します。
直流内部抵抗Rdcは先日算出したグラフから読み取ります。外気25℃時0.11Ω、外気5℃時0.21Ωです。
電池電流Ibatですが、RMS値が必要なので実測しました。
HybridAssistantで街乗り走行時の電池電流瞬時値を計測し、2乗平均平方根でRMS値を算出。
測定結果は、平均速度29km/h、Ibat(RMS)=32Aでしたので、この数値を使います。
電池損失は以下となりました。
外気25℃時:Plossbat=Ibat^2×Rdc=32^2×0.11=113W
外気5℃時:Plossbat=Ibat^2×Rdc=32^2×0.21=215W
(※温度は外気温です。電池温度ではありません。朝一起動時の電池温度は外気+5℃程度です。運転中は徐々に上昇しますがこれは計算には入っていません)
電池損失は、冬は春の2倍くらいになります。大きさ的にはシートヒータ(強)2席分くらい、損失が増えます。
この損失で電池が暖まって性能がでてくるので痛し痒しです。
・上記を使って各条件の損失分布を計算した結果が以下です。
左から、春のベストコンディション条件として外気25℃・空調オフ条件、冬は暖房我慢条件として外気5℃・空調オフ条件と、そこそこ快適条件として外気5℃・最小限の暖房実施条件の3種類です。
各要素の損失がどれだけ変動しているか、分析します。
冬の暖房我慢条件では、春と比べて、転がり抵抗損失1.2倍、電池損失1.9倍となり、電費・航続距離は春から16%悪化します。
冬のそこそこ快適条件では、暖房我慢時と比べて、暖房のため補機消費が2.7倍となり、電費・航続距離は春から28%悪化します。
EV/PHVは全体のエネルギー効率が良いので、暖房消費は意外に目立ちます。転がり抵抗損失も同じ構図です。
次に、春のベストコンディションを基準に、冬のそこそこ快適条件での要因別の損失増加分を算出し、全体増加分に占める寄与率を算出します。
寄与率の高いものから、以下となりました。
1位:暖房消費 52%
2位:タイヤ転がり悪化 30%
3位:電池損失 14%
やはり暖房は課題です。最も省エネと思われるシートヒータとヒートポンプの組み合わせでもこれですから、なかなか厳しいです。
タイヤの転がり抵抗損もやはり大きいです。ウエットグリップ性能を確保しようとすると、低温時の転がりは悪化するようで、悩ましいところ。
電池損失の寄与率ではさほどではありませんでした。
EV/PHVは冬に弱いといわれますが、確かに電池の損失増加はありますが、全体に占める割合は14%程度です。残り8割強は、EV/PHVのコアコンポーネント以外の影響です。冬に弱いというのは語弊がある気がします。
もとのエネルギー効率が良いので、これまでエンジン損失に埋もれていて目立たなかった暖房消費やタイヤの転がり抵抗損失の悪化の影響が大きく現れるということのようです。
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2019/11/03 23:27:09