カーオーディオにFIR追加で位相補正を試みる
目的 |
チューニング・カスタム |
作業 |
DIY |
難易度 |
初級 |
作業時間 |
1時間以内 |
1
カーオーディオの調整にREWを使うようになってから、位相特性が気になるようになってきました。
自分の場合は「位相が」というよりは「周波数ごとの時間遅延が」気になるのだと思います。
低域は遅れがち。
それがなるべく遅れずに全帯域がなるべく同時に鳴るようにしたいと思い、クロスオーバー設定やEQの使い方やタイムアライメントで試行錯誤を重ねてきました。
FIRが使えれば位相補正で理想に近づけるんじゃないのかな…とぼんやりと考え、秋くらいから2機種入手しました。
miniDSP社のOpenDRC-DIと2x4HDです。
OpenDRC-DI
2in2out、48kHz動作、タップ数6144。
電源5V。
2x4HD
2in4out、96kHz動作、2in2outでの最大タップ数2042。
電源12V。
効果の程と、機器の選定のために、OpenDRC-DIを追加して測定と試聴をしてみました。
DDCとC-DSPをつなぐ同軸のあいだに割り込む形で追加できます。
電源はケーブルだけ作成して、とりあえずモバイルバッテリーで駆動しました(シガーソケットに挿すタイプのUSB充電器で使えるものなのか未確認)。
2
クルマに乗り込む前に設定は自宅でできます。
クロスポイントは60Hzと300Hz。
一番上がFIR追加前、2週間前に測定した特性。
クロスはきれいにつながっているけど、全体的に眺めてみると線形位相でないことは明確。
REWでMinimumPhaseというのを生成すると2段めの特性が現れる。
測定した振幅特性に対して、各周波数の位相のズレが最小になるような特性…ということだと思います(たぶんそういうことかなという現時点での自分の認識)。
位相補正してこの特性になることを目指したい。
3段目がExcessPhaseで、最小位相と実測の位相の差分です。
FIRフィルターを作るためのアプリrePhaseに読み込ませるために、このExcessPhaseを使います。
3
rePhaseにExcessPhaseを読み込み、特性が平ら(0°)になるようにPhaseEQで調整します。
高域は補正しきれず諦めましたが、グラフを信じるなら低域はすごく改善されそうです。
この結果をFIR係数として書き出します。
OpenDRC-DIの最大タップ数6144の係数と、2x4HDシミュレート用の1021タップの係数と2種類作ります。
(2x4HDは96kHz動作での2042タップ、48kHz動作で同等のタップ数で効果を見たいので半分の1021タップ)
OpenDRCのコンフィグにそれぞれの係数を入力。
コンフィグ3種類できました(スルー、6144タップ、1021タップ)。
4
実際に音出しして測定した結果です。
位相特性。
1021タップで100-1000Hzあたりは位相特性がきれいに揃いましたが、100Hz以下は補正できていません(タップ数が足りないため)。
6144タップの注目すべきは100Hz以下の低域の位相が補正できている点だと思います。低域から中域はきれいに補正できているように見えます。
※rePhaseで位相補正だけしたので当然と言えば当然なのですが、実際に振幅特性が変わっていないのを目の当たりにすると、ちょっと感動。
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ステップ応答。
FIRなしの応答を見ると、高域成分と低域成分のタイミングが一致してない感じに見えます(t=0のところ)。
1021と6144の比較はよくわかりません。違ってるということはわかりますが、どっちがベターなのか、理想がどんななのかが、自分にはまだよくわかっていません。
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Spectrogram。
やはり自分的にはこれが一番わかりやすい(GroupDelayのスクショも取りましたが、パッと見でわかりづらいので省略)。
クロスの300Hzと60Hzのところにどれくらい遅延があるのか水色の線を入れてあります。
FIRなしだと、両方のクロスポイントで遅れが見てとれます(ユニットの元々の特性+クロスオーバーフィルターをかけたことによる遅延)。
1021タップだと300Hzの遅延がきれいになくなりましたが、60Hzについては残っています。
6144タップではクロスポイントの遅延は劇的に減っています。
気になるところといえば、中高域の反射による乱れと20-30Hzあたりの遅延くらいでしょうか。
7
で、音楽を聴いてみた印象です。
最初は、「あれ、やっぱり違いがわからないかも。位相補正不要かも」と思いました。
もう少し注意深く聴いてみると、FIRのタップ数が多いほど音像がシャープ(くっきり)な印象です。
タイムアライメントが決まると音がギュッとまとまった感じが出ると思いますが、その精度をさらに一桁高めたような感じ。
FIRなしだと、TAかなり頑張って合わせたのに、それでもなお、ダッシュボードのワイドレンジ、ドア足元のウーファー、ラゲッジのサブウーファーとばらばらな配置による「広がり感」があります(これはこれで心地よい。包まれ感あるし、前後の奥行きもあるから)。
6144タップで補正すると、ユニットの存在が消えるというか、3種ユニットが完全に一体化したような感覚(これは誇張して書いています。たぶん追求するともっと先があると思います)。
8
で、困りました…。
結局、FIR機能を追加するかどうかです。
性能的にはOpenDRC-DIのほうが良い。
難点はサイズ(置き場所)と電源が5Vという点。
2x4HDは小さいので、まだシート下になんとか追加して設置できそうですが、OpenDRC-DIの6144タップほどの効果がないのです。
このサイズでタップ数の多い機種が出てくれるとうれしいのですが。
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