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イイね!
2024年09月27日

境界層について色々考えてみる。

'24/09/29
走行インプレと燃費検証を実施しました。

先日のブログでボルテックスジェネレータを装着した話を書いて以降、自分の専攻してきた学問を活かして境界層を上手くデザインできないかと考えを巡らす日々を送っています。

改めてTTのボディを眺めてみると、どこで剥離しそうで、どこで境界層が再付着しそうか、綺麗なデザイン故に流れの線を想像しやすいです。さながらエイドリアン・ニューエイのように?(違う)

そんなわけで(?)今回は境界層に関連したお話です。


皆様ご存知の通り、8N型時代のTTはボディ後方の流れが剥離する上に、つるっとした曲面のテール故にマグヌス効果で下向き流となって再付着するため、高速域でのひどいリアリフトが問題になりました。

引用元: https://airshaper.com/blog/audi-tt-spoiler
図は8N型TTのリア周りの圧力分布で、ボディ左半分がスポイラなし、右半分がスポイラありです。
スポイラの装着後は強い正圧の領域が現れたことが端的に分かります。
前回のブログでも取り上げた通り、この問題は8J、8Sと世代が新しくなるにつれ、ボディワークやアクティブスポイラーなどで大幅に改善されました。
https://minkara.carview.co.jp/smart/userid/3142035/blog/47958704/
我がてて君もこのブログ以降いくつか空力を改良してきましたが、特に際立って成果が見込まれる「境界層吸い込み」の導入についてご紹介します。

境界層を吸い込む?!という、一聞では眉唾なお話ですが、一応航空力学の分野では割と古くから知られた境界層の制御方法になります。

上図の通り、翼面に微細な穴を開けてエンジンまで通すことで、
翼面上に生じた層流境界層を剥離前にエンジンの速い気流で吸い取って流し出してしまおうといった手法です。もともと発達していた境界層がまるッと消え、吸い込み点以降に速い気流が再付着して新たな境界層を作りますので、剥離までのリミットがリセットされます。
実際の航空機では、エンジンに害が無いよう無数の穴にフィルターなどでガードを施すわけですが、虫などで目詰まりして効果が減退することもままあります。
そんなわけで航空分野では「境界層吐き出し」やら、エンジン気流とコアンダ効果によるフラップ機能強化やらがよく使われます。
WikiのURLを貼っておきます。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/境界層制御
車関係で言うと、よく風洞の気流を綺麗にする意図で使われたりするようです。ムーンクラフトさんもブログにしています。
https://www.mooncraft.jp/blogstaff/aerodynamic/boundary-layer/


話がぐるりと唐突に変わりますが、今度はTTのリアハッチ周りのお話です。


一枚目の図の通り斜線部分はリアハッチで見えなくなりますが、外気には触れる領域です。洗車時も水が流れていきますよね。
二枚目の図は右側のテールレンズの付け根をリアハッチ下後方から撮った変態構図写真で、隙間があることが分かります。(中央のナットはリアスポイラ付け根を真下で支える支柱です)
当然、室内とはボディ側に装着されたラバーストリップで隔離されていますが、これらの図の通りリアハッチのサイド部分からリアのこちらの隙間まで、割と大きな一続きの空間があることが分かります。

……この隙間、境界層吸い込みに使えるのでは???
そんなわけで概念を説明します。


画像はTTのリア周りのポンチ絵に気流を書き加えたものです。
サイドウィンドウ周りを通過した速い気流が剥離しないうちに、リアハッチのサイドとボディの隙間で境界層を吸い込みます。それをリアハッチの後端の隙間まで導き、排出すると言った気流デザインです。
航空機ではエンジンの排気流を吸い込みのエネルギーとしていましたが、TTではボディの最後端の剥離渦領域と元の主流との圧力差を利用してやります。


どこの気流を吸い込むかですが、ルーフからの流れに近いハッチ上方付け根側領域とリアスポイラーに近いハッチ先端部は流れを乱したくないので、むしろ吸い込まないように塞ぎます(写真中斜線部分)。そして、前回のブログで効果てきめんだった、サイドのボルテックスジェネレータからの乱流境界層を吸い込みます。
これにより、リアウィンドウ上での流速をさらに稼ぎます。同時に、エネルギーの大きい流れを後方に排出して後方渦にエネルギーを与え、総合して後引き渦による負圧領域を削って圧力抵抗まで低減することを狙います。




今回はエーモン aodeaのリアハッチ用ウィンドシールドモールを活用しました。
まさかエーモンの開発者も気流の積極的取り込みのためにコレを使われるとは思わないでしょう(笑)
写真二,三枚目の通り、ハッチ上方と下方のニ領域を塞ぎました。また、写真にはないですがハッチ上端(ルーフアンテナ後方)も密閉度強化のため装着しました。



また、せっかくリア周りの気流の整流をするのならと、TT 8S後期型の中でも最も丸っこくて流れが剥離→再付着して渦化しそうなテールレンズ周りの流れを整えるべく、VGを3つずつ装着しています。

これでかなりの体積の後方渦が減り、高速時の安定性の向上が見込めると考えています。


効果検証ですが、ちょっと時間がなくて走行インプレをするまで走り込めてないので、ひとまずは境界層タフトによる検証を行いました。ちょうど穴の空いた領域に4本のミシン糸を5 cm程度の長さで等間隔設置しました。
ここで剥離していれば、糸は図内の右向きに垂れるし、左向きに垂れていれば吸い込みが起こらずリアハッチに境界層ごと気流が届けられることになります。
吸い込まれれば、糸はハッチとテールの隙間に入り込むことが予想されます。

※タフト試験に関しては、糸をなるべく軽く細くして、特定領域(境界層ないしは層流域)のみを観察できるようにするのが好ましいです。
スズランテープなど重さと幅、アスペクト比のあるものは、どこの流れを見ているか分かりにくい上、気流そのものにも影響するので、タフト材質はよく吟味することをおすすめします。



第三京浜を港北インターから都筑PAまでの区間80 km/hで走り、PAにて状況確認したところ、
予想通り見事に吸い込まれていました!!!


また、前回もお見せした雨滴法で流れの様子を観察した結果もシェアします。
上記区間を80 km/h走行したときのリアのドラレコのスクショです。
まず大きな違いは、リアウィンドウ全域にわたり黒点線で示した通りの澱みない流れが生まれていました。車速を考えると流れ方は遅いですが、乱流が剥離せずにテールまで届くようになったものと考えられます。
また、特徴的なのは青矢印で示したようなウィンドウに水平な方向の流れも生じたことです。これは境界層吸い込みを経て到達したサイドからの流れが、ボルテックスジェネレータのみの時よりも勢力を増して流入したものと推察されます。
全体を通して狙い通りの動きをしてくれたように思います。


次に燃費検証の結果です。
区間は上記の第三京浜港北インター〜都筑PAです。この区間は鶴見川に向かって下りの区間になるため、往復平均を取りました。
外気温22℃、エアコンは22℃でオート、走行モードはindividualでエンジンオート、クアトロダイナミックとしました。
走行速度は80 km/hとし、加速合流後に所定の速度に達したときに燃費計をリセットして計測開始、出口に入った瞬間に記録して区間平均としました。
結果、下り20.6 km/l、上り14.3 km/lで、平均17.5 km/lでした!
以前のボルテックスジェネレータ群の装着のみで計測した際は、外気温が26℃だったため厳密には同条件の測定になりませんが、下り18.5 km/l、上り12.8 km/lで平均15.7 km/lだった点から、明らかに抵抗が低減して燃費が向上したことが分かりました。
次回以降の空力改良時は気候も良くなると思うので、エアコンおよび空調なしでの設定で測定しようと思います。

続いて走行インプレです。
港北インターや大黒JCTのループを走ってみました。
元から良好な接地感のあるquattro+マグネティックライドで、前回のボルテックスジェネレータだけでもその質感の向上が確認できましたが、今回はさらにその上をいきました!
なんと言うか、quattroでリアを駆動している時の応答がさらに機敏になったと言うか、さながらRS3の8Yのごとく、踏むとグイグイ曲げられる余裕があると言うイメージです。かといって、機敏すぎて扱いにくいわけではなくて、ここで曲げ止めようと思えばピッタリ姿勢が止まってくれる感覚です。
こいつはすごい…

以下まとめです。
今回はこれまでのVGによる境界層制御からさらに一歩踏み込み、境界層吸い込みの活用を考えました。
結果、TTではリアハッチ周りの気流制御に活用できうることが示唆されました!
さらに、走行インプレで安定性や燃費に関しても大幅な改善が確認されました。
TTでは特に境界層の制御を軸にしたボディ後流の制御が走行性能向上に効果が大きいことが示唆されます。

引き続き、空力パーツはじめ、他のパーツも理屈に基づいて考えながらチューンしていきたいと思います。
今回も長々としてしまいましたが、皆さまにもご参考いただけると大変嬉しいです!
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Posted at 2024/09/29 05:12:40

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この記事へのコメント

2024年9月29日 9:03
mkmco様
おはようございます。
朝から眠気が吹き飛ぶブログを拝見し、大変勉強になりありがとうございます!
前回のブログもそうですが理論に基づいたチューニング、感服致しました💦素晴らしいです✨
個人的にはmaniacsさんと組んで商品化出来る、そんなレベルの話だと強く思います🤣
コメントへの返答
2024年9月29日 20:52
BB-NE2様
コメントありがとうございます!
(ブログにコメント付けられること知らずにおりました…)

拙筆にも関わらず有難いコメントを頂き恐縮です…
少しでもお役に立てたのなら嬉しいです!
本職の方々との間には歴然とした経験値の差があると思っておりますが、1人のユーザーとしてできる範囲のことは今後も続けてみる所存です。

プロフィール

「妻と妻のコスプレ仲間たちが、元愛車のTT coupé Final Editionと一緒にコスプレビデオグラフを制作しました!
とてもカッコよくTT最後の思い出を飾れました!
https://youtu.be/46NpteDUwMM?si=PhMw0-s1LHnujvgs
何シテル?   04/11 19:41
Audi大好きmkmcoです。 航空宇宙工学専攻を出て、今は企業の研究員です。 原理原則から考えがちな人間です。 専攻や本職から、空力と構造強度あたりをいつもウ...
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