
本日、閉店間際。
某バイクメーカー製の軽自動車に載ったお客様がいらっしゃいました。若い男女でした。
運転していたのは女性で、僕に話しかけてきたのもこちらの方でした。とても物腰の柔らかな女性でした。
お話を聞いてみると、タイヤを見て欲しいと。なにやらローテーションが必要らしいとのこと。
どうも話を聞いていても、こちらのお客様自身はローテーションという言葉が何の事かもよくご存知ない感じで、では一体なぜローテーションと言っているのか、そんな事誰に言われたのかと考えてみたんですが、答えはすぐに解りました。
車に言われてたんですね。
この車、設定した距離数を走ると、オイル交換時期だとかローテーション時期だとかをユーザーに知らせる機能をもっていたのでした。
おそらくリセットするまでずっと。
なんとな~く、ある種の予感を抱きながら、お車をPITに入れてタイヤチェックをすることにしました。
タイヤ4本をチェックしてみると、フロントの溝が約5mm。リアの溝が約3mmで、少なくとも、この車はすでにローテーションされていました。ただ、前後の銘柄はバラバラでフロントのタイヤの方が数年古かったので、前回4本同時交換はしていないようです。
僕はお客様の了解を得てから、グローブBOXを開けて車検証入れの中から説明書を取り出しました。其の時、ちらっと車検証に目をやると、使用者の名前は明らかに中華圏の方の名前でした。
女性の日本語の発音が、昔大学で講義を受けていた中国人の先生の発音にそっくりだったので、最初からそんな予感があったんですが、予感が確信に変わった瞬間でした。
以上の材料から、今回お客様がご来店された動機を考えてみます。
女性は中国の方。日本語は理解できるようですが、語学が堪能でも其の国の文化や風習にまで現地人並の理解があるわけじゃないし、ましてや一般的なドライバーが自動車の事がよく解らないというのは万国共通。
日本語は読めるので、「ローテーションをしてください」という警告文は読めるが、その意味が解らない。が、とにかく車両が何かおかしくなっていて、どうにかして直さないといけないという事は理解できる。とにかく、どこかのお店に車を持っていかないといけないが、いったい何処へ持っていけばいいだろう・・・?
それで、当店へご来店なさったというところでしょう。そこで何故車を購入した店ではなく、同じ通りにあるオートバックスさんやジェームスさんでもなく、タイヤしか置いてないうちに来たのかが謎でしたが、其の謎も後で解けました。
とにかく、お客様は車が警告を出してるのが不安でうちにきたという事は理解できたので、あとはそれを解消させてしまえばいいのです。
前途したようにローテーションは既に必要なかったので、警告をリセットして、タイヤの空気圧をチェックして、後はこの車の簡単な仕組みとローテーションの意味と、今回の顛末を解説して安心して帰ってもらおうと思いました。
余裕があればやっぱり後ろのタイヤだけでも新品に交換した方がいいのだけど、
きっと物価の高い日本で何かと苦労してるに違いないから、突然そんな出費を言われても困るだろうし、近いうちに変えてねという事を知らせておこうと。
そこで、このお客様はきっと今回の作業はいくらかかるかと聞いてくるだろうから、そこでキメ顔でこう言おうと思ってました。
「お代はいりません」(`・ω・´)+シャキーンと
まぁ、実際大した作業してないんで、こんな事でお金もらおうと思わないんですが、日中関係がアレな昨今ですから、ここで日本人は誠実で親切な民族なのだという事をアピールしようと思ったのです。(あざとい)
警告のリセットが終わり、エア点検も完了し、さぁどんなキメ顔決めようとかとワクワクしながらお客様の下へ向います。
そして、今回の顛末を簡単に話し、今のタイヤの状態を説明し、余裕があったら今年中に変えくださいと軽く伝えたあと、さぁいよいよキメ台詞を放つタイミングを見計らった其の時
お客様「じゃぁ今日タイヤ変えてください(・∀・)」
(^ω^;)・・・
その中国人の女性は、朗らかな笑顔を僕に向け、ちょっと癖があるけどはっきりとした日本語で、タイヤの交換をご注文なさったのでした。
変えたほうが良いのは後2本だけど、理想を言えば4本一気に変えたほうがいいというような事を控えめにお伝えすると、即決で4本ご注文となりました。
その時、僕の友人あたりがその場にいたら、後できっとこういわれたことでしょう。
「お前、笑顔ひきつってたぞ」と。
その後、作業は滞りなく終わり、20分ほどでお客様にお車をお渡しする事ができました。
最初から最後まで女性は礼儀正しく丁寧で、こちらの話をしっかりとよく聞き、笑顔でお帰り頂きました。
もうなんというか、昔うちに「自転車のパンク直してけれ」とやってきた女子高生軍団に他人への礼儀というものを教えてやってほしいくらいに、礼節のしっかりした方でした。
はっきりって、今の若者が抱く中国人へのイメージとは180度逆でした。
最初、僕は台湾の方なのかななどと思って、出身を聞いてみたところ中国から来たと言っていたので、間違いなく中華人民共和国の方で、中華民国の方ではありませんでした。
お買い上げ明細に、お名前ご住所等をご記入頂いたんですが、日本で生まれて28年も日本に住んでいる僕より圧倒的に綺麗な日本語が書かれておりました。スタッフKの日本人アイデンティティのライフはもう0です。(;´∀`)
親切な日本人を印象付けるつもりが、礼儀正しい中国人を印象付けられてしまいました。(笑)
異国の者同士、個々で付き合えば、こんなにも友好的に文化的に交流できるというのに、どうして集団同士、国同士となると、何とも上手くいかないんでしょうね。
昔の偉い人が
「個人には良心が宿るが、集団に良心は宿らない」と言いましたが、やはりあの女性も僕も、中国と日本という集団に所属し、意思や思想が最大公約数化されてしまうと、どうしたって利害関係でいがみ合ってしまうのでしょうか。
なんともむなしいものです。
ちなみに、こちらの女性、お会計時に僕に当店への来店動機を話してくださいました。曰く、会社の同僚にうちの店が良いよと紹介されたとのこと。
なるほど、通りで車内にGoogleマップが印刷されたA4用紙が置いてあったわけです。
何処の何方か存じませんが、素晴らしい異文化コミュニケーションを経験させて頂き誠にありがとうございました。m(_ _)m